ガスプロムが一部ルーブル決済へ

マクシム・ボゴドヴィド撮影/ロシア通信
 ロシアの国営天然ガス企業体「ガスプロム」が、ガス供給を一部ルーブル決済に移行させる計画だ。専門家らによれば、この決済オプションは、おそらく、中国へのガス輸出で見込まれているものだが、それを妨げるのが、ルーブルの不安定さ。昨年度を通じ、対ドル換算で半値に下落してしまった。

 ロシアの国営天然ガス企業体「ガスプロム」が、ガス供給を一部ルーブル決済に移行させる計画だ。同社はこの提案を、9月28日に行われる取締役会で検討するという。ロシアの経済紙「コメルサント」が伝えた。

 同紙によると、ガスプロムは、少なくともガス輸出の10%をルーブル決済にすることを提案する。ロシアの専門家らによれば、同国のエネルギー企業がルーブル建てで輸出するアイデアは、昨年、西側諸国により対露制裁が発動されてから活発に議論されるようになった。だが、この計画を多くの点で妨げているのが昨年下半期のルーブル安で、対ドルおよびユーロ換算で半値に下落してしまった。

 

主な理由

 「ガスプロムの契約の一部をルーブル決済に移行させるアイデアは、ずっと以前から提起されてきたが、これまでは、外国の取引先に支持されなかった。もっとも、多少の進展はあり、中国は、人民元での取引を提案している」

 こう説明するのはロシア経済・国家行政アカデミー・経済国家調整講座のイワン・カピトーノフ准教授だ。とくに昨春、ガスプロムのスポークスマンは、新パイプライン「シベリアの力」を経由しての中国向けガスは、ルーブルか人民元で決済するよう提案していると述べていたと、カピトーノフ氏は想起する。

 一方、ガスプロムの子会社「ガスプロム・ネフチ」は昨年、原油をルーブル決済で販売し始めたが、その正確な量と購買者は明らかにされていない。

 もっとも、投資会社「プレミエール」のアナリスト、セルゲイ・イリイン氏に言わせると、今のところガスプロムのイニシアチブは、どちらかといえばデモンストレーションで、何らかの分野で何がしかの進展があったことを示したいにすぎない。また、10月に開催される定例の「燃料エネルギー複合体委員会」を前に、政治的な忠誠度を見せたいのだろうという。プーチン大統領が出席して行われるこの会議では、ロシアの石油最大手「ロスネフチ」がガスプロムから海外へのガス輸出の独占権を奪おうとすると見られている。

 一方、ロシアの投資コンサルタント会社「Hedge.pro」のイリヤ・ブトゥルリン業務執行取締役の指摘によれば、これはむしろ“保険”をかけているように見えるという。つまり、対露制裁エスカーレーションで、ドル決済をブロックされた場合に備えての措置というわけだ。

 

不安定なルーブル 

 だが、ルーブル決済拡大を妨げる主な要因は、激しく変動するロシアの通貨ルーブルの不安定さだと市場関係者は口をそろえる。「ルーブルで十分な規模の取引を行うのは、ルーブルの激しい変動のせいで、今のところ難しい。だから、いずれにせよ、何か契約を結ぶ際には、ルーブルの大幅な下落、切り下げによるリスクを回避すべく、いずれかのより安定した通貨で行なうことになる」。ブトゥルリン氏はこう言う。しかも氏によると、ルーブル決済は、全体の10~30%を超えることはなく、それも対中国を含む新規契約に限られるだろうという。

 「制裁が強化されれば、このアイデアはまた切実なものになるかもしれないが、今のところ、その実現に必要なツールもないし、当然、買い手にも動機はない。事実上、ルーブル決済を行う際には、“金融の仲介者”の存在が前提となり、そのサービスに対し誰かが支払わねばならないことになる」。イリイン氏はこう言った。

 また同氏によると、ルーブル決済への移行というアイデア自体に議論の余地がある。なぜなら、レートを“強制的な”手段で支えねばならないからで、それはつまり、外貨収入の全額をルーブルに両替することを義務付けるといった措置と、類似したものとなる。もっとも、そうなれば、逆にルーブルの不安定さが、その“調整者”にとっては魅力になると、イリイン氏は指摘する。

 「このアイデアが実現できた場合でも、ルーブル決済は、相互計算において取引の当事者双方に有利になるように、全体の一部にとどめることができる」。カピトーノフ氏はより慎重にこう述べた。