ロシアのクラフトビールに危機?

スラバ・ペトラキナ撮影
 2015年10月1日から、ロシアの小さなビール、シードル、ポワレ、蜜酒の醸造所は、「統一国家自動化情報システム(EGAIS)」に加わらなくてはならなくなる。クラフトビール生産は今人気で、最近パブで販売が始まったばかりだが、専門家はシステム参加によるコスト増が影を落とす可能性もあると考える。

 年間生産量30万デカリットル以下の小さなビール醸造所は10月1日から、生産量会計システム(追跡システム)であるEGAISに加わらなくてはならなくなる。ロシアの経済紙「コメルサント」が政府関係筋の話として、これを伝えている。

 これによって、ビール醸造所の支出が年間200万ルーブル(約400万円)まで増えることから、回収率に不安が生じる。中小企業団体「ロシアの支柱」によると、国内にはクラフトビール醸造所が950ヶ所あるという。

 

生産から販売へ

 「ロシアではクラフトビールと普通のビールの違いは要するに風味。マーケティングや流通チャンネルの面ではかなり違ってくるし、正確な統計もないが」とビールの情報サイト「Profibeer.ru」のドミトリー・ドロブィシェフスキー編集長は話す。

 全国ビール・飲料生産者協同組合の統計では、中小企業はロシアのビール市場の7%をシェアしているが、クラフトビールの醸造所も普通の中小のビール醸造所もここに数えられている。

 「クラフトは生産量でこの7%の半分以下であることは確か。市場でのシェアは現在、1~3.5%ほどと試算できる。数年前にはシェアが0.1%台(0.1~0.9%)だったことを考えれば、これはさほど悪くない数字」とドロブィシェフスキー編集長。

 ロシアでは以前、クラフトビールを特別なオンラインストアでしか買うことができなかったが、今日は従来型のレストランやカフェのメニューにも加わっている。「当店はモスクワで初期にクラフトビールを提供し始めた」と、バー「みんなが君の友達」の共同所有者であるアレクサンドル・マレエフ氏は話す。ロシアの最初のクラフトバーが開店したのはサンクトペテルブルクで、その後モスクワでも店が登場するようになった。「モスクワ店では毎月クラフトビールが約2~3トン売れている」とマレエフ氏。

 

成長の見通し

 ドロブィシェフスキー編集長によると、国の過剰な干渉が成長市場にダメージを与える可能性があるという。「成長を厳しい国家政策が妨げる可能性がある。ビールのEGAISへの追加はすでに決まっているが、どんなに国を説得しようと、小さなビール醸造所も対象だ」。国からこの分野への圧力が増すようになると、大きな工場は経営を続けられるが、クラフトビールの醸造所は閉鎖に追い込まれる。とはいえ、ロシア連邦アルコール市場規制庁の関係筋によると、小さな醸造所は会計カウンターおよび情報をシステムに伝える伝送モジュールを設置しなくてもいいという。個別のコンピュータを介して、完成品の出荷を確定するだけで済む。

 「人々はまず、味の多様性を好む。これは首都に限ったことではない。モスクワやサンクトペテルブルク以外の他の都市でもクラフトバーは開店し始めている」とマレエフ氏。マレエフ氏の系列店は2月、サマーラ市(モスクワ南東1000キロに位置)にオープンしたが、すでに地元住民から関心が示されているという。

 

ロシアにおけるクラフトビールの定義

 年間生産量7億380万リットル以下の小さい醸造所でなければならない。独立系醸造所で、資本の75%以上が自己資本である。例えば、25%以上の株式を他の企業が保有していると、クラフトではなくなる。主な材料は麦芽で、添加されるものは味を良くするまたは複雑にするものであって、軽くするものであってはならない。水、麦芽、ホップ以外に使用できるのは、砂糖、花、スパイス、野菜、果物だが、原価を抑える目的で使ってはならない。

 

記事全文(露語)

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