アメリカの対露制裁拡大の影響は

ロイター通信
 アメリカは、ウクライナ情勢をめぐり、対ロシア経済制裁を拡大した。ロシアの専門家は、これが何よりも輸入代替(国産化)政策の強化につながると考える。だが、「対外経済活動発展銀行」(VEB)、石油最大手「ロスネフチ」など、国の発展の牽引車となっていた企業の子会社が制裁対象とされたことで、大型のインフラ計画の実現に影を落とす可能性もある。

 アメリカ政府は7月30日、これまで対ロシア制裁の回避策になっていたと考えられる、ロシアの11個人、15法人に対して、制裁を発動したことを発表した。

 対象になったのは、ウラジーミル・プーチン大統領に近いとされるゲンナジー・ティムチェンコ氏およびボリス・ロテンベルク氏の親戚とビジネス・パートナー、また対外経済活動発展銀行、ロスネフチなどの、国内の主要な企業の子会社。

 アメリカ企業は制裁対象者といかなる取り引きを行うことも禁じられ、また制裁対象者のアメリカにある資産は凍結される。

 「制裁リストの拡大は、経済的というより、政治的な行為」と、元ロシア中央銀行副総裁のロシア経済・国家行政アカデミー株式市場・金融工学講座のコンスタンチン・コリシチェンコ主任は話す。この決定は、ウクライナでのマレーシア航空ボーイング777型機墜落に関して、国連安保理に国際法廷を設置する決議案に対し、ロシアが拒否権を行使したことが原因になった可能性があるという。

 

新たに制裁対象になったのは

 アメリカ政府によると、これまでに制裁の対象になっていたロシア企業は、制裁を回避するために子会社を使っているという。

 そのため、対外経済活動発展銀行傘下の投資部門「VEBキャピタル」なども含め、対外経済活動発展銀行とロスネフチのすべての子会社が対象になった。VEBキャピタルは、ガスパイプライン「トルコストリーム」のギリシャでの建設の投資家である。これはロシア産天然ガスを黒海経由で中東欧に送るガスパイプラインを敷設するプロジェクト。また、インフラ建設に積極的に出資していた「ロシア直接投資基金」も、制裁対象になった。この基金は先に、「サウジアラビア総合投資院」と契約を締結していた。ロシアの専門家は、制裁対象になった企業に、アメリカの通貨での決済の問題が発生する可能性があると考える。

 個人としては、プーチン大統領の友人とされるティムチェンコ氏およびロテンベルク氏の他、フィンランドの実業家カイ・パーナネン氏が、「ティムチェンコ氏に物理的な支援を提供した」として、自身が保有する企業とともに、制裁対象になった。さらに、ロテンベルク氏の息子のロマン・ロテンベルク氏と、ヘルシンキ近郊の小さな「ラングヴィク」ホテルを財産としている、フィンランドの企業「ラングヴィク・キャピタル」も制裁対象になった。フィンランドのマスメディアによると、このホテルをロテンベルク家が保有している可能性があるという。

 

主な影響

 「アメリカの決定は、アメリカとロシアの制裁戦争の最新動向に論理的に合っているため、予想外とは言えない。ロシア経済への大きな影響はないだろう」とロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏。新たな制裁措置の導入は、両国の関係が改善していないことを示すものだが、市場はこれをすでに織り込み済みだという。

 コリシチェンコ主任によると、制裁によって、ロシアの企業と銀行が欧米の資金や技術を利用しにくくなるものの、ロシアにはプラスの面もあり、大胆な決断を強いられるだろうという。「これは『東方への転換』であり、積極的な輸入代替の模索である。これらのプロセスは、ロシア経済の現状において非常に苦痛であるが、中期的見通しでは、構造改革実施の基礎となり得る」とコリシチェンコ主任。

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