ウクライナがデフォルトしたら

アルチョーム・ゲオダキャン/タス通信撮影

アルチョーム・ゲオダキャン/タス通信撮影

ウクライナでは1日、対外債務の支払いにモラトリアム(支払猶予)を導入できる新法が施行された。ロシアはロスチャイルド財団に次ぐ、第2位のウクライナ債保有者であり、債務30億ドル(約3600億円)を回収できない可能性がある。専門家は、ウクライナのデフォルトが、主にロシアの銀行の安定を脅かすと考える。

 新法は2016年7月1日までのモラトリアム導入を可能にする。特に、2013年にロシアが購入したウクライナのユーロ債30億ドル(約3600億円)に、適用される可能性がある。ロシアは、国際法廷で争うことを決めるなど、債務の回収に努めようとしている。

 ロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏はこう話す。「新法は相当程度、債務再編でより有利な条件を得ようとしている外国人を脅かす手段に見える。だがウクライナ政府が新法を実際に利用する可能性も排除できない」。概して、新法はロシアとウクライナの緊張を増幅させるが、影響はより深刻になる可能性もあるという。

 

ロシアのリスク

 ロシアのFX会社「ロマノフ・キャピタル」分析部のパーヴェル・シチパノフ部長によると、ウクライナは不可避なデフォルトおよび国際的な債権者との長期裁判に向けて準備を始めているという。

 アントン・シルアノフ財務相は、タス通信にこう話した。「要するに、これはデフォルト。ロシアは6月にウクライナから7500万ドル(約90億円)を受け取ることになっているため、今のところ、ウクライナにクレームを入れる理由はない」。20日に支払いがなかった場合、ロシア政府は裁判所に提訴するという。

 ロシア政府は2013年末、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領(当時)に、2015年末を償還期限として150億ドル(約1兆8000億円)を融資(ウクライナ国債を購入)する方針を示した。だが最初の30億ドル(約3600億円)分の購入にとどまった。

 この時、ロシアの金融支援条件の一つは、ウクライナの対GDP債務比率が60%を超えた場合に、ロシア政府が償還を要求できるというものであった。ウクライナの対外債務は、2014年第3四半期にすでに、この上限に達し、2015年6月初めには420億ドル(約5兆400億円)または対GDP債務比率70%までふくらんだが、ロシア政府は償還を求めていない。ウクライナ国立銀行の予測によると、2015年に国家債務は対GDP比93%まで上昇するという。

 

長期的影響

 「ウクライナがデフォルト宣言を行ったら、当然ながら、ロシアの経済状態に影を落とす。ロシアとウクライナの経済関係の多くは破断しているものの、一部協定にもとづいて連携は維持されている」と話すのは、ロシア経済・国家行政アカデミー経済・社会科学部のアリセン・アリセノフ准教授。ロシアとウクライナの研究者の共同開発の大部分は、付加価値の高い宇宙・航空分野に集中しているという。経済的影響および政治的影響は、ウクライナ自体にとっても、ロシアなどの関係の深い隣国にとっても、予測不可能なほど厳しいものとなりそうだ。「大きなリスクがあるのは、ウクライナの企業、銀行、政府の対ロシア銀行債務の一部。いくつかの予測によると、250億ドル(約3兆円)規模の可能性もある。返済されなければ、ロシアの金融機関の資本不足を招く可能性がある」とアリセノフ准教授。

 ロシア政府は4月、ウクライナのユーロ債を保有する他者と、元本減額の廃止について協議し、合意することができた、とロシアの経済紙「ヴェドモスチ」は伝えている。特に、総額100億ドル(約1兆2000億円)ほどの5大債券保有者を統合している、対ウクライナの民間債権者委員会(ロシアはここに含まれず)が、これを進んで決めた。最大のウクライナ債保有者はロスチャイルド家のフランクリン・テンプルトンで、アメリカ系金融情報サービス大手「ブルームバーグ」によると、その保有額は76億ドル(約9120億円)にのぼるという。