Alamy/Legion Media撮影
経済制裁後、ロシア企業は欧米の金利の安い融資を受けられなくなった。「ロシア企業は2014年から2015年にかけて、既存債務の償還や借り換えに集中しながら、資金調達を大幅に減らしている」と、ロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏は話す。その際、ドル建ての企業債務の返済は2014年12月がピークだったという。ロシア企業はその後、ヨーロッパとアメリカでの資金調達をほぼ止めた。だが追加的な融資源を探さなくてはいけない。
追加的な資金調達に強い関心を持っているのは、ロシアの大手小売業者を中心とした、急成長する企業だ。ロシアの最大手小売業者「マグニト」(10000店舗保有)は2月、自社株1%を98億ルーブル(約204億円)で海外の投資家に売却。この時、株式取得希望者の申請は1日弱で集まった。「マグニトは確かに、すぐに投資家を見つけることができた」と、FX会社「インスタフォレックス」のアナリスト、アントン・フォミン氏は話す。マグニトは年内にも、小さな店約2000店舗とハイパーマーケット約90店舗を開業することを計画している。というのも、このチェーンは最も手頃な価格帯で活動しており、ロシアの不況に関連して、店の需要が高まる一方であるためだ。2014年度の純利益は33%増の473億8000万ルーブル(約983億6800万円)だった。
マグニトに追随することを決めたのは、別の小売業者「レンタ」。ロシアの経済紙「ヴェドモスチ」によると、レンタは2億5000万ドル(約300億円)までの調達を計画しているものの、売却株数は今のところ不明だという。 レンタは昨年春、ロンドン証券取引所の新規株式公開(IPO)で株式22%を9億5200ドル(約1142億4000万円)で売却した。マグニトのケースと同様、資金調達が必要となった理由は経営拡大である。同社は2015年度に34~38%の増益を予測している。
もう一つの選択肢となるのがアジアの融資元である。中国の銀行は特に、ベネズエラ、アルゼンチン、エクアドルといった国際的な金融市場が利用できなくなっている中南米諸国に積極的に融資を行っている。アメリカのシンクタンク「インターアメリカン・ダイアログ」のデータによると、中国の銀行は2014年、中南米諸国に221億ドル(約2兆6520億円)を融資。2005年から2014年の期間では1190億ドル(約14兆2800億円)を融資している。ロシアの企業は今のところ、中国の銀行家の信頼を得られていない。「アジアとの提携は今のところ、ヨーロッパの資本市場に代わるほど世界規模にはなっていない。だが長期的には、アジアでの取引量は拡大し続ける」とソロコ氏。
中国でのパンダ債(中国以外の政府・企業等が、香港をのぞく中国本土で人民元建てで発行する債券)発行の可能性を表明したのは、ロシアの大手銀行「ガスプロムバンク」(ロシアの国営天然ガス大手「ガスプロム」傘下の銀行で、資産においてロシア3位)。中国市場への参入の一条件が現地の格付けを有することであり、ガスプロムバンクはすでに、中国の格付け会社「大公国際資信評估有限公司」による格付けを受けている。ガスプロムバンクは昨年7月、アメリカと欧州連合(EU)の制裁対象となった。制裁はユーロ債の起債やローンを通じた長期資金の調達などを制限している。ガスプロムバンク以外に、中国の格付け会社による格付けを受けたのは、「ガスプロムネフチ」(ガスプロムの石油子会社)とガスプロムである。
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