エクソンモービルが数億$の税返還請求

ロイター通信

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アメリカの石油会社「エクソンモービル」はロシアに対し、税金の遡及返還請求を行った。過去6年間、高い税率で税金を支払ったと、会社側は主張している。超過額は数百億円規模と算出される可能性もある。専門家は、エクソンモービルに続いて、他の企業も請求を行う可能性があると考える。

 ロシアの「コメルサント」紙によると、エクソンモービルは「サハリン1」プロジェクトの利潤税を35%から20%に引き下げ、数百億ルーブル(数百億円)の超過額を返還することを求めているという。同社は、ストックホルム商業会議所仲裁裁判所に訴えを起こす可能性も排除していない。

 

2014年に変化が

石油・ガス・プロジェクト「サハリン1」で、エクソンモービルはオペレーター権と権益30%を保有している。残りの権益は、日本のソデコ30%、ロシアのロスネフチ20%、インドのONGC20%。プロジェクトは生産物分与契約にもとづいて行われている。

 税率の問題が浮上したのは6年前。「サハリン1」プロジェクトは2008年に採算水準に達し、プロジェクト参加者は2009年から35%の税率で利潤税を支払うようになった。セルゲイ・シャタロフ財務次官は当時、プロジェクトについて、手紙の中でこう説明していた。「利潤税は、法律、法令、あるいは規則によって今後減税されない限り、ロシア連邦に13%、サハリン州に22%支払われる」。ところがロシアでは2009年、法人利潤税が20%まで引き下げられた。

 「アメリカ人のクレームは妥当である。プロジェクトの税率が設定された際、当該の法律が変わればさがる可能性があると言われていたのだから。そのような変更があったため、エクソンモービルは請求権を持つ」と、ロシアの仲介業会社「FBS」の上級アナリスト、エリザヴェータ・ベルギナ氏は話す。

 ただし、ベルギナ氏によれば、経済制裁の影響がこの請求にあることは否定できないという。「エクソンモービルは2009年に税負担軽減を試みたが、働きかけはあまり強くはなかった。語気が強まったのは対ロシア制裁発動後」とベルギナ氏。

 制裁によってエクソンモービルの提携の大部分が凍結された。エクソンモービルはロシアでの損失を10億ドル(約1200億円)と試算。「エクソンモービルの幹部には、コストを削減し、“以前の話”を終わらせるという課題がある。また、英国法の下のクレーム提出期限も切れてしまう」と消息筋はコメルサント紙に語っている。

 

エクソンモービルが先例に?

 「アメリカのパートナーがこの争いで勝つ確率は非常に高い。だが出訴期限によって過去3年分の還付に留まるのではないか」と、コンサルティング会社「リュジジェラ」(国際コンサルティング網「ビジネス・ピープル・コンサルティング・グループ」所属)のボリス・フェドシモフ最高経営責任者(CEO)は話す。

 今回のクレームは、「サハリン1」プロジェクトの他のパートナーである日本のソデコやインドのONGCにとって、請求の先例になる可能性があると、ロシアの民間エネルギー調査会社「ロスエナジー」のパートナー、ミハイル・クルチヒン氏は考える。

 エクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)は19日、協議のためにモスクワを訪問。ロシアのアレクサンドル・ノヴァク・エネルギー相と非公開の会談を行った。ノヴァク・エネルギー相は会談後、ロシアがエクソンモービルとの提携に関心を持っていることだけ明らかにした。

 

利潤税の税率の差とは

 サハリン1以外にも、生産物分与契約にもとづいたプロジェクトは2件ある。それは「サハリン2」(出資はロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産と三菱商事のコンソーシアム)と、「ハリヤガ」(出資はフランスのトタルとノルウェーのスタトイル)。どの契約にも個別の課税条件が記されているが、その当時有効だった利潤税の税率が定められている。

 「ハリヤガ」プロジェクトの利潤税は35%(1995年に契約締結)、「サハリン2」プロジェクトの利潤税は32%(1994年契約当時の税率)。アメリカのシュルンベルジェは2010年、税率引き下げを法廷経由で試みた。ロシアでは当時、すでに引き下げられた20%の税率が有効であった。だが裁判所は、本件の見直しを却下した。