ルーブル安で首都開発の行方は

マラト・フスヌリン・モスクワ副市長=写真提供:モスクワ通信

マラト・フスヌリン・モスクワ副市長=写真提供:モスクワ通信

ロシアの通貨ルーブルが対ドル、対ユーロで半落したことから、モスクワ市の行政は首都開発計画の一部見直しを迫られている。計画には2018年FIFAワールドカップ・ロシア大会に向けた準備も含まれている。新たな条件のもとで、モスクワの開発をいかに進めていくのか。マラト・フスヌリン・モスクワ副市長(都市計画・建設担当)に聞いた。

-アメリカの格付け大手「スタンダード&プアーズ(SP)」によるロシア国債の信用格付けの引きさげや、外国人投資家の流出は、モスクワの開発にどのように影響したのでしょうか。

 格下げによる直接的な影響はありません。モスクワへの投資の主たる部分を占めているのはロシアですから。しかしながら、一定の影響は出てくるでしょう。モスクワでは昨年、不動産900万平方メートル、道路100キロメートルが建設され、さらに4000万平方メートルの建設許可が発給されました。近い将来、この指標が縮小するでしょう。今年「崩壊」することは恐らくないでしょう。それでも完工不動産が800万平方メートルまで減少する可能性を排除していません。多くは銀行融資に依存します。住宅ローンが維持されれば、市民はローンでの住宅の購入を続けます。例えば、モスクワで昨年建設された住宅は320万平方メートルです。世界金融危機後の2010年、モスクワで建設された住宅は200万平方メートルでした。

 

-モスクワ市の行政には、ルーブル安による何らかの予算凍結予定はありますか。2018年ロシアW杯の準備への影響はいかがですか。

 凍結は今後のインフレの度合いに依存します。インフレ率が10%に達したら一つ、15%でまた一つという具合に。モスクワ市開発計画を試算しました。ベースライン・シナリオでインフレ率年平均10%を考慮に入れており、これを念頭に置いて、いくつかの施設の建設をまだ始めないことに決めました。インフレによって、複数のインフラ整備を加速する必要がでてきました。例えば、2018年W杯の開会式が行われるサッカー・スタジアム「ルジニキ」の改築については、2017年完了としていましたが、それを2016年に前倒しすることを決めました。インフレ率が15%になった場合、余分な1年のコストが10億ルーブル(約17億円)ほどになってしまいます。高いインフレ率により、地下鉄建設の工期削減を決定しました。3年プロジェクトを2年で実現したいと考える業者がいれば、さらなる融資を模索する用意もあります。

 

2018W杯を含むモスクワの大型プロジェクトの費用を、ルーブル安はどれほど増大させたのでしょうか。

 W杯に向けて、世界有数の大きさを誇る「ルジニキ」スタジアムが、完全に改築されます。プロジェクトは今すでに、5~10%高騰しています。ですがこれは最終的な費用ではありません。プロジェクトには輸入資材がたくさん使われており、例えば、屋根には開会式の中継などが行われるメディア・スクリーンが設置されます。資材の輸入はルーブル相場に大きく依存しています。今のところ、最終費用がどれほど高騰するかを予測することはできません。すでに一部サプライヤーを変更しています。従来からヨーロッパのサプライヤーと取り引きをしてきましたが、今はロシア国内、それが無理であればアジアといった具合に、代わりの業者を探しています。地下鉄建設を依頼したスペインの業者は、すでに為替相場の変動によって予算オーバーになっています。

 

-地下鉄建設を含めて、中国の業者とモスクワの協力関係はどうですか。

 地下鉄はモスクワの主な交通手段であり、類似システムは東京や北京などの大都市にもあります。少なくとも1ヶ月に一度は、中国の代表団がモスクワを訪問するか、モスクワの代表団が中国を訪問するかしています。モスクワ地下鉄にはある特徴があります。それは1分間に列車1台という頻度。世界ではまだ超えられていません。中国企業はこれに近い頻度を設定するようになってきたので、モスクワの実績は興味深いのではないでしょうか。その一方で、中国の新駅建設のテンポは世界一です。

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