2014年のロシア経済総決算

「シベリアの力」分岐パイプライン=ヴァレーリイ・シャリフリン撮影/タス通信

「シベリアの力」分岐パイプライン=ヴァレーリイ・シャリフリン撮影/タス通信

2014年のロシア経済にとって、急激な原油安、ウクライナ情勢を受けた対ロシア経済制裁はネガティブ要因となり、ルーブル安、政策転換などにつながった。

北極圏で石油採掘開始

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ロシアの宝物

 国営天然ガス会社「ガスプロム」の石油子会社「ガスプロム・ネフチ」は2014年4月、北極圏大陸棚の世界唯一の海上掘削プラットフォーム「プリラズロムナヤ」から、原油の初ロットを出荷。石油は新油種アルコ(Arctic Oil)で、その輸送のためにタンカーを2隻購入した。

 国際環境保護団体「グリーンピース」などの環境保護活動家から猛反対されていたものの、初の北極圏プロジェクトは実施された。

 ロシアは2020年までに最大25ヶ所のプラットフォームを北極圏に建設し、また自国の技術を外国に提案する計画を立てている。

 

中国とのガス輸出入契約

 「ガスプロム」と中国の国営石油・天然ガス会社「中国石油天然気集団公司(CNPC)」は2014年5月、中国に東部経由(「シベリアの力」分岐パイプライン)で年間380億立法メートルのガスを30年輸出する、総額4000億ドル(約48兆円)の契約を結んだ。

 東シベリアのガス田を基地とする「シベリアの力」は、2014年9月に着工した。

 「バンクオブアメリカ・メリルリンチ」の調査によると、契約がロシアのマクロ経済指標に影響をおよぼし始めるは2015年。これによってガスプロムの年間投資額は50~60億ドル(約6000~7200億円)増える。

 

大手IT企業のモスクワ証券取引所上場

 ロシア最大のIT企業「ヤンデックス」の株式100%を保有するオランダの会社「ヤンデックスN.V.」は2014年6月、モスクワ証券取引所に上場した。

 2011年5月にはアメリカのナスダックでも17.6%の新規株式公開(IPO)を実施。IPO総額14億3000万ドル(約1716億円)で、ナスダック史上有数の規模となった。

 

ウクライナとのガス問題

 「ガスプロム」は2014年6月、ウクライナがガス料金を滞納していることを理由に、ガス供給を停止した。

 ウクライナ政府は、1000立法メートルあたりの価格を285ドル(約3万4200円)から485ドル(約5万8200円)まで不当に引き上げたとして、ロシアを非難。ガスプロムは割り引きの終了による価格上昇であることを説明した。

 問題が落ち着いたのは2014年10月末。2014年12月にようやく供給が再開された。

もっと読む:プーチンがガス問題で歩み寄り >>>

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ロシアに対する経済制裁

 ロシア経済にとって重大なできごととして、圧倒的多数の専門家があげたのが、対ロシア経済制裁。

 ウクライナ情勢を受けて、アメリカと欧州連合(EU)は2014年3月、制裁を発動。その後も強化し続けた。

 政府高官の渡航禁止などから始まり、国営石油会社「ロスネフチ」、大手銀行「VEB」、「VTB」、「ズベルバンク」、「ガスプロムバンク」など、国の出資している大手企業に対する制限へと拡大していった。

 アントン・シルアノフ財務相は、制裁によるロシアの損失額を400億ドル(約4万8000円)と発表した。

 

対ロシア制裁への対抗措置

 ロシアは2014年8月、対ロシア制裁への対抗措置として、アメリカやEUなどの制裁を発動した国の食料品の輸入禁止を決定した。

 この措置を発動した後、国内の輸入市場は乳製品と肉製品の3分の1、水産物の半分を失った。

 税関庁のデータによると、アルゼンチン(146%)、ニュージーランド(44%)、ニカラグア(173%)からの肉製品の輸入が伸びた。またベラルーシからの水産物輸入量は98%拡大(ベラルーシは内陸国)した。

 

原油価格の下落

 2014年11月の石油輸出国機構(OPEC)総会で、出席者は世界の原油価格維持について合意できなかった。総会後、北海ブレント原油は2010年以来の安値となる1バレル72.58ドルで取り引きを終えた。

 財務省の試算によると、原油価格の下落でロシアは年間900~1000億ドル(約10兆800億~12兆円)失う。ロシアの国家予算の半分は石油・ガス収入に依存しているため、急激なルーブル安も招いた。

もっと読む:原油価格に影響を及ぼせるか >>>

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ルーブル安

 ロシア中央銀行は2014年10月、ルーブルの下落を抑えるため、300億ドル(約3兆6000億円)の介入を行った。また翌月には予定より2ヶ月早く、変動相場制に移行した。

 ルーブルは対ドル、対ユーロで60%下落し、インフレの拡大、国民所得の急減を引き起こした。

 

ロシア企業の脱オフショア化

 ロシア下院(国家会議)は2014年11月、脱オフショア化法案を可決。オフショアまたは外国の法的管轄域で登録された会社の株式を保有し、管理下に収めているロシアの株主は、未分配利益に対して納税しなければいけなくなった。

 ウラジーミル・プーチン大統領はクレムリンで行った年次教書演説の中で、オフショアからの資本の還流に対する大規模な「恩赦」を約束した。

 

「サウス・ストリーム」の建設中止

 ロシアは2014年12月、年間640億立法メートルの輸送能力のあるガスパイプライン「サウス・ストリーム」の、建設計画を中止した。これはロシア産天然ガスを黒海経由で中東欧に送るガスパイプライン。

 プーチン大統領は中止の理由がブルガリアの方針であることを明らかにした。ブルガリアはプロジェクト実現のための最終許可を出さなかった。

 「ガスプロム」はここ3年で、このプロジェクトに46億6000億ドル(約4660億円)を投じていた。ガスパイプラインはブルガリアからトルコに切り替えられる。トルコに配分されるガスは年間140億立法メートル。残りはトルコとギリシャの国境すなわちEU向けに供給される。

 

*本記事への協力者は、ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」、「UFS」、投資分析会社「インヴェストカフェ」の専門家、ロシア経済・国家行政アカデミー構造研究センターのアナリスト、アルミ会社「ルサル」、製鉄会社「マグニトゴルスク製鉄」、「NLMK」、食品産業会社「グルパ・チェルキゾボ」などの大手企業の関係者など。