モスクワ証券取引所のアファナシエフCEOに聞く

アレクサンドル・アファナシエフ氏=Getty Images撮影

アレクサンドル・アファナシエフ氏=Getty Images撮影

ウクライナ情勢を受けて、ロシアと欧米の関係が悪化する中、モスクワ証券取引所では取引量が増えるという意外な現象が起こっている。最近の情勢がロシアの証券市場に与える影響、海外の投資家の可能性などについて、モスクワ証券取引所のアレクサンドル・アファナシエフCEOがロシアNOWに語った。

-ロシア市場は長い間、投機的と考えられていました。このような考え方には賛成ですか。

 ロシア市場は当初から投機的でした。あらゆる新しい市場は、ハイリスクへの心の準備がある、勇敢な投資家をひきつけるものです。このような投資家を投機家と呼ぶことができるのではないでしょうか。

 ロシアが市場経済に移行してから20年ほどしか経過していませんから、国の証券市場も比較的新しいです。株式会社法は1995年に施行され、証券市場の確固たる法的基盤は2000年代初めに構築されるようになりました。この時期、ロシア市場への関心が国際的な投資家社会の中で生まれました。モスクワ証券取引所には現在、長期投資家も取引に加わっています。国内外の投資家、ヘッジファンド、アルゴリズム取引者、小売投資家などです。

 

-ウクライナ情勢に関連して、モスクワ証券取引所の取引量が増えました。これはどういったことなのでしょうか。

 経済成長期、投資家は株式・債券市場で活発な動きを見せます。地政学的状況などに起因する、今のような困難な時期、投資家はリファイナンシング、現先、またリスク回避のデリバティブなどの商品を求めます。ロシアの輸出で大きな部分を占めている原油の価格下落は、ルーブル安(ほぼ40%)を招きましたから、モスクワ証券取引所のボラティリティは大きくなり、外貨取り引きも増えました。

 モスクワ証券取引所の資産の多様性によって、景気循環の段階に依存することなく、金融指標をあげることができるのです。今年は外貨、株式、デリバティブ、金融商品の取り引きからの収入増が見られます。目立った減少(30%)が見られた唯一の市場は債券市場です。ルーブルの金利上昇に関係しています。その代わり、この市場は来年成長拠点になると考えています。対外債務の市場縮小は国内のルーブル公債と入れ替わる可能性があるからです。

 新しい商品も展開しています。例えば、もっとも成長著しい通貨ペアはルーブル・人民元です。我々の業績から、モスクワ証券取引所のビジネスモデルがうまく機能していることがわかります。今年9ヶ月間の結果は過去最高となり、純利益は23%増えました。

 

-ロシアの証券市場には長期資金があらわれるのでしょうか。あらわれるとしたら、その理由は何でしょうか。

 ロシア市場は他の成長市場と同様、国内と海外の両方の投資家に関心を持っています。成長する経済は常に資金受領者であるため、双方の投資家はひとつなのです。

 ここ1年半から2年で、ロシアでは改革が進み、ロシア市場のインフラが国際基準に持ち込まれました。ロシアでは今や、極めて保守的な投資家の要求にもこたえることのできる、すべての業務を行うことが可能です。

 別の重要な課題としては、国内投資家の増加があります。今日、法人の預金の6%弱しか証券に投じられていません。その割合が55%のアメリカ、民間投資家が非常に保守的でその割合が25%にとどまるドイツと比べているわけではありません。ポーランドや韓国などの一部新興市場でも30%に達しています。一定期間が経過した後、ロシアでこの割合が20~25%になればと期待しています。

 

-政治状況が悪化したにもかかわらず、モスクワ証券取引所の外国人投資家は減っていないとのお話について、もう少し教えてください。

 海外の投資家の取引量は増えています。ロシアの証券市場では昨年度、外国人の割合が40%でしたが、現在はそれが46%になっています。デリバティブではその割合が38%から44%に増え、外国為替市場では10%から14%に増えました。

 外国人として計算されている人の中にはキプロスの登録者もいます。ロシアの多くの財産はオフショア口座、キプロス経由で投じられています。つまり国内需要の伸びの潜在性ととらえることが可能です。ただ、キプロスの口座すべてがロシア発というわけではありません。管理者は必ずしもロシア人というわけではなく、その投資の地理的範囲は広大です。

 ロシアの資産は現在、とても安いので、投資家は興味を持たずにはいられないのです。ルーブル切り下げは輸入企業の利益にプラスになり、農業、食品、また小売、IT、通信、インターネットの企業など、さまざまな分野の発展の刺激になります。

 

-ヤンデックスなど、外国のプラットフォームで活動していた一部大手発行者が今年、モスクワ証券取引所に上場することを決めました。他にどのような企業が上場するのでしょうか。いかにしてロシア市場に呼ぶことができたのでしょうか。

 新たな発行者を招待する一大プログラムがあります。我々が関心を持っている企業群は4つです。

 第一に、取引所に株式または債券を上場して資金調達をしたいと考える、ロシアの民間企業です。株式上場の際には、モスクワでの上場と海外プラットフォームの預託証券の利用を選ぶことができます。我々のプラットフォームへの上場で資金を調達する方が、発行者自身にとっても、国内外の投資家にとっても、有利かつおもしろいと考えます。

 第二に、民営化される国営企業です。例えば、モスクワ証券取引所で昨年末、世界最大のダイヤモンド採掘・生産企業「アルロサ」の民営化が、とても順調に行われました。上場規模は13億ドル(約1300億円)です。

 第三に、実際にはロシア企業でありながら、外国の法域にある企業です。このカテゴリーに属するのが、ロシア最大のインターネット企業「ヤンデックス」、小売業者「レンタ」、大手金属企業「ポリメタル」、電子決済企業「キウイ」です。これらの企業はロシアの投資家、また国内の株価指数に加わることに関心を持っているため、モスクワ証券取引所を選んでいます。

 第四に、ハイテク・ベンチャー企業です。モスクワ証券取引所にはこれらの企業のために、特別に下部組織「革新・投資市場」が創設されています。

 

-つまり、ナスダックに匹敵するものをロシアに創設するということですか。

 小さなベンチャー企業を上値リストに加えることはできませんが、このような企業に関心を持つ投資家のクラスが存在します。この市場は今のところ、とても小さいですし、当然ながらナスダックではありませんが、市場に関心を持つベンチャー基金、ブローカー、投資基金の合同体をつくることには成功しました。