ルーブル25%以上下落の要因

ロイター通信

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2014年初めから、ルーブルの対ドルおよび対ユーロ相場は25%以上下落した。専門家は主な要因として、最近まで続いた原油価格の下落をあげる。ルーブル安は赤字予算を減らすため、政府にとっては有利でもある。

 ロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏は、ルーブル安についてこう話す。「現時点でルーブル安の主な要因となっているのは、原油や他の原料の価格の下落」。ブレント原油は今夏、1バレルあたり115ドル(約1万1500円)前後であったが、現在は87ドル(約8700円)を割り込んでいる。

ルーブル安

 ソロコ氏によると、ルーブル安は急速な米ドル高によるもので、日本円、スイス・フラン、ユーロなども対ドルで安くなっている。

 「ドルの上昇は何よりも、需要増に関連する市場の通貨不足を反映している。原油価格の下落は主な指標ではあるものの、投資家はロシアの輸出収益の減少を警戒しているため、今のところは予期レベルでの機能となっている」と、ロシア経済・国家行政アカデミー応用経済研究所構造研究センターの研究員、ミハイル・フロモフ氏は考える。2番目のルーブル安の要因として、対ロシア経済制裁と地政学的な不安定さによって外国資金が流入しないことをあげる。

 ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、アレクセイ・コズロフ氏によると、10月に発表されたヨーロッパ中央銀行の月次報告は、欧州経済通貨同盟を不況の危機にさらすような、ヨーロッパの経済成長の鈍り、インフレの危機的レベルまでの低減を指摘しているという。「リスクの著しい上昇を背景に、ドル高、原油価格の下落という条件があり、ルーブルとロシアの株式市場は強い圧力を受けている」

 ルーブル安を受けて、ロシア連邦中央銀行は今月初め、通貨介入を行った。その規模は50億ドル(約5000億円)超。ルーブルのレートを維持するために、ドル売りを実施した。ソロコ氏によると、今月の介入額は昨年12月の1ヶ月分に相当するものの、クリミアのロシアへの編入を背景に下落した3月の3分の1だという。中央銀行は今月17日だけでも17億6800万ドル(約1768億円)を売っている。「中央銀行はこのようにして、市場の変動を抑えているが、現在のルーブル安の傾向を止めようとはしていない」

国家予算への影響

 ルーブルは当初、変動相場制に移行すると考えられていた。だが圧力が増す中、中央銀行は市場に戻り、介入せざるをえなくなった。

 ルーブル安は赤字予算を減らすため、政府にとっては有利でもある。ソロコ氏によると、石油およびガスの販売収益の低減を補填できるため、予算にはプラスになる。石油およびガスの主な取り引きはドルおよびユーロで行われているが、予算はルーブル。

 ルーブル安はまた、ロシアの製造会社にとって有利な条件となる。輸入品が高くなるため、国内市場で競争しやすくなる。「8月の原油価格が1バレルあたり106ドル(約1万600円)だったため、年末までに85ドル(約8500円)になっても、年間平均原油価格は96ドル(約9600円)超になる(この価格をもとにロシアの予算が決まる)。100ドル(約1万円)付近は予算のリスクにならない」とフロモフ氏。

 コズロフ氏は、ロシア経済への投資を魅力的にし、資本流出を止めれば、ルーブルの維持が可能になると話す。「ロシア経済は現在、原油価格、経済成長、インフレに大きく依存している。この構成を標準的にすれば、ルーブルの安定化も可能」

 ただ、原油価格が戻りつつあるため、ルーブルのレートは上昇する可能性がある。アメリカ系金融情報サービス大手ブルームバーグは20日、イランが原油価格下落防止対策を講じようとしているという情報に反応して、原油価格が上がりはじめたと伝えた。サウジアラビアとクウェートも、両国の中立地帯であるカフジ油田での採掘を減らすことを決定している。その結果、ブレント原油先物は1バレルあたり90.21ドル(約9021円)まで上昇した。

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