EU発動の対露制裁第4弾の影響は

ロイター通信撮影

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欧州連合(EU)は12日、ウクライナ情勢をめぐり、ロシアに対する経済制裁の第4弾を発動した。アメリカも同様の措置をとる準備をしている。新たな制裁の対象となったのは、ロシアの国営石油会社、大手銀行、防衛産業企業などと個人。ただし内容は、すでに発動済みの禁止事項を厳格化したものにすぎない。ロシアの株式市場はさほど大きな落ち込みを示さなかったが、投資家はロシアの報復措置とその影響を予期している。

新たな制裁の影響は 

 新たな制裁は、これまでの禁止事項を拡大し、強化したもの。ズベルバンク、VTB、ガスプロムバンク、VEB、ロシア農業銀行と、国が関与している大手銀行の資金調達は、さらに厳しく制限された。前回は90日以上の中長期的な資金の調達の禁止が定められていたが、今回はこれが30日以上まで短縮された。

 専門家は、この措置が実感できるほどの影響をもたらすとは思えないと話す。「前の対ロシア制裁が発動された時点で、ロシアの銀行は金融市場の利用が制限された場合の、負の影響を見積もっていた。また、ロシアの銀行にとって、西側の市場で短期的な資金調達を行うことは、あまり一般的ではない」と、ロシアの投資分析会社「インヴェストカフェ」のミハイル・クジミン氏は説明する。

 同様の考えを示すのが、ロシアの仲介業会社「FBS」の上級アナリスト、キーラ・ユフテンコ氏。「西側の金融機関は7月の時点で、業務に制限を設けながら、ロシアの銀行との提携を最大限に抑えようとしていた。国営銀行はルーブル資金の不足を感じてはいないが、ドル資金の需要を確保するため、アジアの金融プラットフォームへの参加を進めている」

 売上高1兆ルーブル(約3億円)以上の国営石油会社、すなわちロスネフチ、トランスネフチ、ガスプロム・ネフチも、今回の制裁で外国資金の利用が制限された。資金面だけでなく、石油分野の技術・サービス交換も対象となっている。また、難採油田の開発分野で、EUはロシアとの提携を制限した。

 トランスネフチとガスプロム・ネフチは、この制裁でほとんど影響を受けない。「これらの企業には、西側の銀行から調達した資金の大きな債務はないし、外国からの長期的な資金調達を必要とするような大きなプロジェクトもない」と、ロシアの民間エネルギー調査会社「ロスエナジー」のパートナー兼アナリスト、ミハイル・クルチヒン氏は、「コメルサントFM」局に話した。

 もっとも影響を受けるのはロスネフチ。北極条件下で大陸棚の石油・ガスの開発・採掘を目指す、大型投資プログラム・プロジェクトがあるためだ。しかしながら、負の影響はすぐにあらわれないという。「これらの制限の負の影響は、当面出てこない。この制裁がどれだけ続くかが意味をもってくる」と、ロシアの投資分析会社「インヴェストカフェ」のアナリスト、グリゴリー・ビルク氏は話す。

 ロシアの防衛分野に対する制裁も拡大された。ヨーロッパの企業は二重用途品をロシアの企業9社に納入できなくなる。9社にはカラシニコフや、対戦車ロケットおよび小型武器を製造しているトゥーラ武器工場も含まれている。他の企業としては、弾薬製造のテフマシュ、すでに7月のEUの制裁リストに入っていた防空システム工場「アルマズ・アンテイ」、弾薬製造のバザリト、兵器・道路建設機械・鉄道車両製造のウラルワゴン工場もある。

 

投資家が予期するのは報復措置

 EUは制裁発動を引き延ばしていた。合意されたのは5日のことである。EU諸国の間で調整を図ろうとしたことがその理由。EUの外交安全保障上級代表であるフェデリカ・モゲリーニ氏は、「時間的猶予を与えることを求めた国もあった」と話している。ヨーロッパの報道によると、制裁発動に反対したのは、イタリア、オーストリア、フィンランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー。その主張の一つは、5日に宣言されたウクライナ東部の停戦が有効な間、脆弱なバランスを破り、ロシア政府を挑発すべきではないというもの。

 約1週間の発動の引き延ばしが、投資家の準備期間となった。EUが制裁を発動するとの非公式な情報が流れた11日、ロシアの株式市場の指標は13%下落。アナリストはこれを緩やかな負の反応と評価している。12日も大きな下落は見られなかった。インヴェストカフェのアナリストは、ロシアからの報復措置の方が市場に大きな影響をおよぼすと話す。

 ドミトリー・メドベージェフ首相は87日、自動車、航空機、船舶の産業で、措置を講ずる用意があると発表していた。アンドレイ・ベロウソフ大統領補佐官は911日、ロシア通信の取材に対し、ロシアは自動車および複数種の衣服を含む軽工業製品の輸入を制限する可能性があると話していた。