「経団連企業6割ロシアと取引」

東芝の副会長および経団連の副会長を務める佐々木則夫氏=セルゲイ・ミヘエフ撮影

東芝の副会長および経団連の副会長を務める佐々木則夫氏=セルゲイ・ミヘエフ撮影

地政学的危機の影響のもと、ロシアと日本の経済関係はいかに変化しているのか、日本の経営者はロシアをどのように見ているのか。第2回日本・ロシアフォーラム(モスクワ、9月8~10日)に主賓の一人として招かれた、東芝の副会長および経団連の副会長を務める佐々木則夫氏が、「ロシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)」のインタビューに応じ、両国関係について語った。

-一番気になっていることからお聞きします。ヨーロッパの経営者は今夏、正式な制限もないのに、EU諸国でロシア向けの輸出支援が滞っている、ロシアへの輸出ライセンスの発給が遅れている、銀行がロシア業務の利息を引き上げたなどの不満を表明していました。日本の経営者は今夏、どのような困難に直面したのでしょうか。

 日本はG7が科した対ロシア制裁に加わっていますが、その温度差は明らかで、日本の制裁が緩やかなものとなっていることを、まずお話ししておかなければなりません。

 日本とロシアの関係については、北方領土問題が何十年も存在しています。しかし、一昨年末に安倍さんが首相になられてから、日本側はこの困難を乗り越えようとし、安倍首相とプーチン大統領の個人的な友好などのおかげで、関係が実際に構築されました。その時に、ウクライナ問題が発生したのです。

 これらの困難があっても、日本・ロシアフォーラムが行われていることに大きな意義を感じます。特にセルゲイ・ナルィシキン下院(国家会議)議長がご出席になっていました。日本の経済界はこれを非常に重視しています。

 9日にはドヴォルコヴィッチ副首相とフォーラムに参加した日本の経済人との面会があり、そのご質問の内容で、制裁に関連して日本企業の状況がどのように変わるのかを、ロシア政府が気にされている、また我々のことを心配されていることがわかりました。

 ロシア方面の活動をしている日系企業が、ウクライナ情勢の影響を受けたと言ったら、正しくないでしょう。しかしながら、リスクが拡大していると感じますし、ロシアのイメージに反映されています。それでも例えば、ロシアでの、またロシア企業とのプロジェクトに対する融資の利率に影響したということはないですし、これまで通り、市場によって定められています。日本でこれはまだ感情および何らかの“提案”のカテゴリーの範疇です。ウクライナ情勢を受けて、何かを変える意向は、日本企業にはありません。

 両国の関係は政治と経済だけでなく、文化、スポーツ、科学、技術だと思います。フォーラムで討議された内容ですね。もっとも大切なのは、市民外交を続けることです。両国の間ですべてが政治に結び付けられたら、亀裂が広がるだけです。我々はそれを許してはなりません。日本の会員企業1300社、総従業員数800万人からなる経団連の副会長として、ここに自分の役割を見いだしています。

 

-仮に日本とロシアの経済関係が低迷した場合、どこの国が日本の貿易相手として有利になってきますか。ロシアのライバルはどこの国ですか。

 どの日本の大手企業にも、ロシアだけでなく、東アジア、東南アジア、南米、アフリカとの関係があります。いわゆる新興国ですね。しかしながらすべては個別の企業によって変わってくるので、一概には言えません。

 

-経団連企業の大部分がすでにロシアで活動しているか、その可能性を検討しているものの、ロシアの官僚主義の障壁、不明瞭な法律、事業の安全性の問題に不安を感じているとのお話がフォーラムでありました。逆にロシアの魅力とは何でしょうか。

 フォーラムで申し上げたのは、我々の質問に回答した経団連会員企業についてです。会員企業の60%がすでにロシアと事業を行っており、それを拡大するか、またはロシア市場に参入しようとしています。このうちの84%が、ロシア市場について、とても魅力的で、将来性があると考えています。より関心の高い分野はエネルギー、環境、医療、農業、およびロシア極東の開発です。開発とは、インフラなど、ロシア政府が定めたものです。

 日本企業がもっとも心配しているのは安全性です。ただし、これはロシアだけでなく、多くの国でも日本の経済界が第一に心配する問題なのです。それは日本でこの問題がほぼ解決されているためです。

 

-ロシアでは日本の進出がとても評価されています。新しい雇用だけでなく、常に最新の技術、優れた管理、企業文化などによるものです。しかしながら日本のロシアへの直接投資は、他の国と比べると多くはありません。事業環境および安全以外に、何を変えればいいのでしょうか。

 歴史に深い根をおろす問題があります。第二次世界大戦が終わって70年ほどが経過しているのに、両国の間には平和条約がありません。この状況は日本人に精神的な影響をおよぼしています。両国の関係は法的に普通の二国の関係にならなければいけません。

 欧米諸国に比べると、日本は確かに対ロシア投資で遅れをとっています。それでもトヨタ、日立、コマツなどはロシアで工場を稼働させましたし、当社にはサンクトペテルブルクに合弁企業があります。日本企業は今後投資を増やしていくと、個人的に考えています。

 

-日本の経営者の目から見たロシアはどのように映りますか。日本の企業文化の基準にどれほど合っていますか。ロシアでの活動はまだエキゾチックなのでしょうか。

 世界をすべて同じにしようと考えてはいけません。独自性はとても重要です。例えば、日本の企業文化はアメリカ人にとってかなりエキゾチックです。ロシア企業の代表とお話しした個人的な感想ですが、ロシアでは決定を行う際、市場参加者を取り引きをしてはいけない「他人」か「身内」かにわけます。この点でロシア経済界は、ライバルが同時にパートナーになる日本、ヨーロッパ、アメリカと異なっています。自分たちのチームに入っていないからといって、敵とは限りません。ロシア経済界は将来的に、外国の企業と接触し、影響を受けながら、相互理解の方向に向かっていくでしょう。再度申し上げますが、これは私個人の印象にすぎません。

 

-「日本」、「日本のもの」とは、ロシアで品質、ハイテク、未来という言葉と同義です。「ロシア」、「ロシアのもの」とは、日本でどのようなイメージですか。

 イメージは時代とともに変化しました。現在はロシアというと、豊富な天然資源のイメージがあります。私の世代は宇宙開発、発展した軍需産業をイメージしていました。私は原子力エネルギーの分野で10年ほど仕事をしましたので、ロシアが常に上位の国であったことを知っています。しかしながら現在でも、宇宙、原子力の平和利用、軍事の分野の最新技術と、大量需要の分野の状況に隔たりがあります。日本企業、日本の技術はそこで寄与できるでしょうし、ロシアでもっと人気が出ればと願っています。

 日本人が心の中でロシアを尊敬していることを強調したいです。それはロシア文化、トルストイ、ドストエフスキーの作品、プロコフィエフや他の作曲家の音楽を知っているためです。それゆえに、両国の文化交流はもっと密でなければならないのです。