金保有量で中国を追い抜く

GettyImages/Fotobank撮影

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ロシアは半年間で54トンの金を購入し、総保有量で中国を追い抜いた。専門家は、ロシア経済がこのようにして、金外貨準備高の大部分を占めているドルとユーロへの依存から、一部脱却しようとしていると考える。ただし、金外貨準備高に占める金の割合は約10%にすぎない。

金保有量で世界第6位に浮上

 「ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)」の報告によると、ロシアは金の総保有量1094.7トンで世界第6位に浮上した。中国の総保有量が前期と同水準の1054.1トンだったため、結果的に追い抜いた。

 「ロシア中央銀行が金保有量を増やした理由は明白。経済制裁のリスクを減らし、投資分散化をはかっている」と、「デュカスコピー・バンクSA」CIS諸国販売部のパーヴェル・シモネンコ部長は話す。ドル、ユーロ建て取り引きに経済制裁が科される危険性があるため、中央銀行は資産の多様化を続け、今年末までに金外貨準備高に占める金の割合を15%まで増やすという。「中央銀行は政治情勢が悪化した場合に備え、準備高の安全性を確保しようとしている。また、金は保護資産であり、第2次世界金融危機発生の可能性が予測される中、このような投資はより堅実に見える」

 WGCのデータによると、半年間でロシアは54トンの金を購入した。保有の伸び率は世界でもっとも高かった。ちなみに同じ期間内での購入量はカザフスタンで12トン、メキシコで0.8トン、フィリピンで0.2トン。アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、スペインなどの上位金保有国は購入していない。ドイツは逆に、2.9トンを売却している。

 ロシア中央銀行の正式なデータによると、金外貨準備高に占める外貨の割合は90%から87.5%まで減少。「ロシアの金保有量の増加は、金外貨準備高の構成の変化と関係している。ロシアはアメリカ国債、ドル、ユーロへの投資を減らしている」と、ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、アレクセイ・コズロフ氏は説明する。ヨーロッパ中央銀行とアメリカ連邦準備制度が非常に緩い金融政策を実施している時、すなわちその通貨を安くし、地政学的リスクが高官レベルにある時、金外貨準備高の金の割合が増えるのは自然なことだという。

 

全体的な傾向 

 ここ数年、世界各国の金外貨準備高に占める金の割合は、増える傾向にあるという。「これは主要な通貨発行国で圧倒的な、為替市場の高ボラティリティおよびリベラルな金融政策と関連している」とロシアの投資会社「ルス・インヴェスト」分析部のドミトリー・ベデンコフ部長は話す。輸出を中心としている新興・発展途上国では、金外貨準備高が外貨資産から構成される。例えば、金の割合が中国ではわずか1%、インドでは7%、ロシアでは10%、サウジアラビアでは2%、ブラジルでは1%以下。「金の割合が高く、支配的な国は、例えば72%のアメリカ、68%のドイツ、65%のフランス」とベデンコフ部長。そのため、金外貨準備高の構成の多様化およびその信頼性の観点から、金保有量の増加は良い傾向である。

 また、ロシア経済はドルから代替資産へ移行しようとしているという。「ドル離れのプロセスは徐々に加速している。政治的決定、経済主体の動きにもとづいていることは明らか」と、ロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏は話す。例えば、ロシアの携帯電話会社「メガフォン」と、世界最大のニッケル生産会社「ノリリスク・ニッケル」は、すでに自社の資金の一部を香港ドルに交換した。「この動きは続いており、次なる第一歩がアメリカの長期債券からの段階的な脱却と、ヨーロッパ諸国法域外への資金配分になる可能性はある」とソロコ氏。ただし、この第一歩は、クライナ情勢の緊迫化が続き、ロシアとEU、アメリカの関係が改善されない場合の話だという。

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