どこから農水産品を調達するか

Getty Images/Fotobank撮影

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ウクライナ情勢をめぐり、ロシアに対して制裁を科した国の一部すなわちEU諸国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ノルウェーの農水産品に禁輸措置を講じた後、ロシア政府は新たな供給国を探し始めた。まず候補にあがったのはベラルーシ、カザフスタン、中国、スイス、南米諸国。これ以外にも国内生産の整備が計画されている。

輸入元を変更か、国産品への切り替えか 

 ロシアの農産品輸入量は年間400億ドル(約4兆円)ほど。ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、アレクセイ・コズロフ氏はこう話す。「報復措置の対象となったのはロシアへ輸出される農産品の約10%」。現状への対処法は2つあるという。第一に、他の国から輸入して全量あるいは一部を補う方法。「こちらの方が簡単で早いが、あまり問題を解決しない。ロシアが外国の生産者に依存する状態は変わらず、農業も発展させられず、新しい雇用も生まない」第二に、国産品に切り替える方法。「こちらの方は困難でコストがかかるが、経済にとってはより効果的」

 コンサルティング会社「アルカイム」のアレクサンドル・ドロフェエフ社長は、切り替えの困難な食品があると話す。それはハード・チーズの一部種類など、高級食品市場の商品。ただ、スイスからチーズを輸入することも可能だ。「スイス・チーズ・マーケティング」社のデヴィッド・アシャー社長は、アメリカの通信社ブルームバーグの取材に対し、スイスの業界がロシアの対EU禁輸措置を利用しようとしていると話した。スイスの食肉会社「ミカルナ」は、ロシアの消費者がスイスの肉に関心を示したと述べている。

 ドロフェエフ社長はこう話す。「国産品への切り替えは、いかに行おうとも、時間がかかる。小売業者は供給業者と新しい契約を結び、物流の手配を行わなければならない。生産者は生産量を増やさなければならない」。鶏肉の生産サイクルは約2ヶ月で、需要の変化に容易に対応できる。一方で、牛肉と豚肉のサイクルは長く、対応にはより多くの時間を要するという。切り替えが簡単なのは、EUからの輸入量の少ない食品。例えばEUから輸入されている魚の割合は、総需要の13%。乳製品、野菜、果物への切り替えには時間がかかる。 

食糧自給率をあげる

 ロシアでは2010年、食糧自給率をあげる食品安全原則が策定された。これによると、ロシアの生産者は穀物95%、砂糖80%、植物油80%、食肉・食肉加工品85%、牛乳・乳製品90%、魚80%、ジャガイモ90%などを生産しなければならない。

 ドロフェエフ社長によると、食肉産業での国産品への切り替えがより困難だという。

 食肉協同組合のムシェク・マミコニャン組合長はこう話す。「政治的な対立が経済分野に及んでしまった。制裁が見直されることを期待したい。食肉産業での切り替えは大変」。ロシアの鶏肉市場は2000年、50%輸入に依存していた。だが現在は1015%にとどまっている。「輸入の割合は1015%。これは悪くない数字。市場の競争レベルに影響を及ぼしているし、価格変動も抑えている。どの輸出国も同時に輸入国である」

 ドミトリー・ユリエフ農業次官によると、製品供給の乱れは起こらないという。「牛肉、豚肉、鶏肉などの食肉市場を含め、一部食品は他の国からの輸入で補われる」

 乳製品市場では、国産品、またベラルーシ、カザフスタンの生産品で補われる。乳業協同組合のアンドレイ・ダニレンコ執行組合長の試算では、乳製品市場の輸入品の20%が禁輸対象になっているという。「ベラルーシ、南米諸国からの輸入品で必要な量をまかなえる」。消費者側の確保のリスクはなくとも、生産者側ではそうはいかないという。「牛乳の生産量は冬季に減少する。支援のレベルが生産を安定させるわけではない。また、夏季に消費量は減少するが、生産量は増加する」。そのため、冬までに国内の生産を増やさなければいけない。しかしながら、季節的な乳製品の価格高騰を回避するのは難しいという。