飲料自販機売り込み

ロマン・キセレフ撮影

ロマン・キセレフ撮影

街のあちこちに缶ジュースやコーヒーの自動販売機が並ぶ。日本ではありふれた光景だがロシアではそうではない。飲料の自販機はあるが、日本と比べれば目にすることはまれだ。飲料大手のダイドードリンコはロシアを未開拓の大市場とみて、現地での自販機ビジネスに乗り出した。       

 「今年中に、自動販売機をモスクワに500台設置する予定です」と、同社広報・IR部の平田勇人副部長は明言する。
 昨年12月、モスクワに現地法人を設立し、現在日本人を含む7人のスタッフが奮闘している。既にシェレメチェボ空港の鉄道駅構内など30カ所以上に設置。1本80~110㍔(約240〜330円)で販売を始めている。2018年までに稼働1万台、売り上げ年間50億円を目指す。ダイドーの調査によれば、ロシアには日本のような飲料自販機ビジネスが存在しないようだ。 

ロシア販売されるダイドー品:

果実・野菜飲料
炭酸飲料
コーヒー飲料
お茶系飲料 
機能性飲料・水
カカオ

日本で自販機が多いのは、飲料メーカーが自社商品を売るために人の集まる場所に次々と販売機を置くからだ。機械の多くは正面・側面に飲料メーカーのロゴがついており、原則的にその会社の製品だけを扱う。自販機ビジネスの概略はこうだ。飲料メーカーはまず、オフィスビルや公共施設などの所有者と交渉して、販売機を置くスペースを確保する。販売機が稼働すると、品切れにならないようにスタッフを巡回させて補充するほか、随時取り扱い商品を入れ替える。売れ筋は設置場所や季節によって異なるため、どの飲料をどれくらいの割合で扱うか、ラインアップをいつ切り替えるのかなどが企業ノウハウの部分となる。これをモスクワでやろうということだ。

先行のウラジオで成功

 実はダイドーにとってロシアは初めてではない。先行して極東のウラジオストクで100台、同社の自販機が稼働中だ。最初の設置は09年。ウラジオでは現地パートナー企業への販売機・飲料の輸出、運営手法の指導という形を取った。ダイドーはこれを通して、ロシア人の味の好みや、現地での自販機運営の経験を蓄積することになった。自販機は日本製。氷点下40度を下回る酷寒でも故障しなかった。「外国では自販機は機械ごと盗まれるリスクがある」という懸念もあるが、治安面を含めて、ウラジオでは5年間一度もトラブルがないという。ウラジオ事業が安定稼働するなか、モスクワで自販機設置を推奨する動きがあるとの情報から現地調査を実施した。将来性が高いと判断し、自らスタッフを現地に置いて本格展開することを決めた。平田氏によれば、日本製自販機は外国製に比べてビジネス上の大きな強みがあるという。

 日本人にとっては1台の自販機で冷たい飲み物と温かい飲み物を買えるのは当たり前だが、世界的には冷・温で別の機械を使うのが普通というのだ。1台で違う温度帯に対応できる日本製はどの季節でも利用者が求める飲み物を提供できる上、事業コストも抑えられる。
 「年内500台」の目標から見れば、モスクワでの設置ペースは好調とは言い難い。ビルなどのオーナーは設置場所を提供することによる収入も得られるが、そうしたメリットがロシア社会に知られていないため、ゼロから説明しなければならないという。
だが、最近では興味を示した不動産所有者の側から問い合わせてくる例も出てきた。将来、飲料自販機がロシア社会に普及したとき、ダイドードリンコはその立役者として名を刻むかもしれない。