コンスタンチン・ザヴラージン撮影/ロシア新聞
プーチン大統領は、この条約は三国を原則的に新しい統合のレベルへ至らせるものであるとし、「我々は、国家的主権を完全に保持しつつ、より緊密で均斉のとれた経済協力を保障する」と述べた。
ガイダール研究所・国際貿易研究室のアレクサンドル・クノベリ室長は、ヴズグリャード紙にこう語った。「EAEUの条約には、経済的観点からは何ら目新しいものはなく、この条約に盛り込まれているものは、すべて三国の他の組織の枠内ですでに合意されています。ですから、この連合ができたからといって短期的な見通しで三国間の貿易高を一気に増加させることはできません。これらの国の間の貿易がすでに1992年から非関税であったとあれば、なおさらです」
新たな可能性
しかし、条約の第四部において、新しい連合は、さらに妥協点を見いだしてその他の制限を撤廃するための可能性を創り出している。三国は、商品、サービス、資本、労働力の自由な移動を保障する義務を自ら負っており、エネルギー、工業、農業、輸送といった枢要な経済部門において足並みのそろった政策を実施していく。
クノベリ氏によれば、第四部では、商品および金融市場に関する将来的な取り決めとそれらの具体的な時期が謳われている。たとえば、2025年までに、共通の金融メガレギュレーターがお目見えし、加盟国はマクロ経済的で反独占的な単一の通貨および金融政策を実施するに至り、11年後には、石油およびガスの単一の市場が創設される。また、2019年までに、ロシア、カザフスタン、ベラルーシの三国は、共通の電力市場を創設する。薬剤に関しては、より速やかな進展が見込まれており、2016年1月1日までに単一の市場が創設される見通しだ。
単一のエネルギー市場
さまざまな部門における単一の市場の創設は、EAEU内の商品の自由な移動ばかりでなく三国の市場におけるルールと料金の調整をも意味している。
電力についていえば、現在、ロシアは、それをベラルーシとカザフスタンへ輸出してカザフスタンから輸入しているが、クノベリ氏は、「ロシアでは、国内の消費者向けの電力料金は低めに設定されており、EAEUのパートナーは、自国にも同様の料金を設定するよう望んでいる」と述べる。
カザフスタンとベラルーシは、ロシアの石油ガス資源へのアクセスを得ようとしており、この面での両国の関心は異なるものの、国家エネルギー安全保障基金のアレクセイ・グリヴァチ副理事長は、ヴズグリャード紙にこう語る。
「ロシアの石油は、ベラルーシへは非関税で輸出されていますが、ベラルーシは、欧州(関税同盟に加盟していない第三国)へ石油製品(ロシア産石油を原料とする)を供給する際に輸出税をロシアの国庫へ納めています。カザフスタンとしても、もちろん、ロシア産の石油をロシア国内と同じ価格で購入できるに越したことはありません。カザフスタンは、また、ロシア国内のインフラを利用して欧州へ独自にガスを輸出したいと考えています。それによってロシアは、ロシアが資金と可能性を失って欧州方面で他国と競合することのないように、長期的なスパンで単一の経済市場へ移行するよう主張したわけであり、11年も経てば、ロシア産エネルギーの国内価格も輸出価格と肩を並べ、欧州市場もガスプロムにとっての重要性を失い、カザフスタンにもEUへ輸出するための余分なガスはもはやなくなるでしょう」
三国のGDP成長のポテンシャル
ロシア、ベラルーシ、カザフスタンの統合プロセスの互恵性は、すでに実証ずみであり、三国の経済関係は拡大し、貿易の構成が改善され、構成全体に占めるハイテク製品の割合が増加し、三国の競争力が向上しつつある。
たとえば、この三年間で、関税同盟内の貿易高は、事実上50%、額にして230億ドル、増加(2013年のその総額は662億ドル)し、ロシアの貿易高に占めるベラルーシとカザフスタンの両国を合わせた割合は、EUと中国に次いで三番目に大きい。
ガイダール研究所の専門家は、統合による経済効率のアップが料金以外の制限の撤廃にも及んでいる点を指摘している。
EAEUは、また、三国以外の第三国との統合の可能性も拡げつつあり、プーチン大統領によれば、新しい連合の加盟国は、自由貿易ゾーンの設置に関するべトナムとの交渉を活発化し、商品およびサービスに関する情報の交換などの分野を含む中国との協力を強化し、イスラエルおよびインドとの貿易への特恵制度の導入を目的とした専門家グループを形成することで合意している。
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