AFP / East News撮影
決済銀行は今のところ、ロシア大手「アルファ銀行」になる予定。同銀行処理センターのヴィレン・チミリャゼフ所長はロシアNOWの取材に対し、「当行は技術的にも運営的にもこの用意ができている」と話した。近い将来、ロシアでの活動許可申請書類が、監督機関であるロシア連邦中央銀行に提出される。
ロシアのクレジット・カード市場は、「ビザ(Visa)」と「マスターカード(Mastercard)」がほぼ独占している状態。さまざまな調査で、90~95%のシェアがあるとされている。しかしながら、アメリカがロシアの銀行に対する経済制裁を決定し、ビザとマスターカードがそれに従う用意のある行動を見せたため、ロシアでの立場は大きくゆらいだ。ビザとマスターカードは、ロシアに処理センターを建設する、あるいはロシア連邦中央銀行に2日分の保証金(約30億ドル≒3000億円)を支払うことを求められると、それを拒み、ロシアから撤退する構えを見せた。ただロシア政府はその後、条件を緩和し、半年間の処理センター建設の猶予を与え、保証金の支払い延期の可能性を示唆した。
ビザとマスターカードがアメリカ政府の決定に従う行動を見せたことに、ロシアの利用者は困惑した。特に海外旅行の好きな人たちがそうだった。旅行中にお金を使えなくなる事態を警戒した利用者は、代替カード探しを始めた。ここで明らかに優位となったのが中国の銀聯。銀聯カードはかなり以前からロシアで展開されており、極東やモスクワでもすでに複数の銀行がサービスを行っている。
チミリャゼフ所長は、JCBとはかなり前に合意済みで、今回のビザとマスターカードの件が決定に影響したわけではないと説明。いずれにせよ、ロシアではJCBの主な競合が銀聯になると考え、今後については慎重な予測を行っている。「JCBの近い将来のシェアは3~5%をこえない」とロシアNOWに話した。
ロシアの格付け会社「ルス・レーティング」の上級アナリストであるマクシム・プレシュコフ氏は、JCBによるロシア市場への参入が、日本とロシアの貿易拡大につながると考えている。ただし、ビザとマスターカードの主要な競合になるかという点では疑問を示す。「中国とロシアの経済的連携が強まっていることを考えると、将来は銀聯の方が有利になる」
ロシアの金融会社「フィボ・グループ」のアナリスト、アナトリー・ヴォロニン氏は、JCBがロシア市場でシェアを拡大するためには、ロシア全土でカードの利用を可能にすることが必要だと考える。また、近い将来生じるであろう他の問題についても話した。それはロシアが自国の決済システムの開発を始めていること、またJCBは銀聯と違い、「予防」決済システムとして検討されていないことだ。「JCBはこのロシアのシステムと提携できるかもしれない。提携によって外国、せめて日本だけでも、ロシアの決済システムのカードを使えるようになる」
ヴォロニン氏によると、ロシア極東が中国と大きく関わっていることから、銀聯は極東で利用者を増やすのではと考える。「残りのロシアの地域では、日本と中国の状況はほぼ同じだろう。行政は中国を好むが、市民は日本の方を信頼するのではないか。問題は市場でのプロモーション、銀行や商業施設との契約、イメージづくりで、どれだけ責任者が迅速かつ活発に動けるかということになる。例えばJCBと言うと、日本のJCBカードよりも、イギリスの建設機械のJCBの方がロシアでは有名」
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