新製品を製作中の高級デザイン家具「カンディハウス」のマスター=「カンディハウス」提供
本社・工場のある北海道旭川市から直送したテーブル、ソファなど約30点。日本文化をテーマに開業したばかりの家具展示販売店「メイジ」のメイン商品として置かれ、来店する客たちをとりこにした。
素材の質感を重視したカンディハウスの家具は無垢(むく)材の食卓テーブルなら1台数十万円の価格帯で売られるブランド品だ。
ロシアでは関税や運送費などがかかるため、商品によっては100万円近い値がつく。だが富裕層が増えてきた今、こうした高級路線にもチャンスが出てきていると同社は見る。
在庫持たず日本から直送
「メイジ」は地元企業が運営しており、商品を供給するのがカンディハウスの役目だ。
ロシア国内ではサンクトペテルブルクにも卸先を持つ。商談や日ごろの連絡調整はロシア市場を管轄するドイツ現地法人、カンディハウス・ヨーロッパが担当する。
原則としてロシアには在庫を持たず、注文を受けてから日本でつくり、数カ月後に消費者の元に届ける。
ノボシビルスクの店の母体は運送業を中核とするグループで、物流面でも頼りになる存在だ。
ドイツ法人のアルフレッド・ロース社長は流れの変化をこう話す。
「数年前ならロシアの富裕層は何についてもギラギラした派手なものを求めていた。だが、最近は見た目はシンプルでも上質なものに関心を示すようになってきた。当社の家具がまさにそれで、大きなチャンスが来ている」
写真提供:「カンディハウス」
カンディハウスの海外事業は1980年に米国から始まり、今では15カ国に取扱店を持つ。ロシア初進出はちょうど5年前だ。
きっかけは、2000年代前半にロシアからの経済視察団が旭川を訪れたことだったという。
この時に団員の一人が同社の家具にほれ込んだことから、09年春、モスクワのインテリアショップに出荷することになった。
リーマン後に撤退を経験
だが、前年に起きたリーマン・ショックの影響でロシアの景気が落ち込むタイミングと重なってしまう。
半年後にはショップそのものが閉店しまい、その後数年、ロシアの一般消費者の目に触れる機会はなかった。
風向きが変わったのは13年1月。毎年出展しているドイツ・ケルンの国際家具見本市に、著名デザイナーの佐藤オオキ氏率いるデザイン事務所「nendo」と共同開発した新シリーズを出品したところ、ロシアから来ていたバイヤーの目にとまった。
同年春、サンクトペテルブルクのインテリアショップ「デザインギャラリー サンクトペテルブルク」での展示販売が始まった。
ノボシビルスクのパートナーと契約を交わしたのもちょうど10回目の出展となった今年のケルン見本市だった。
サンクトペテルブルクからは追加発注が入っており、ノボシビルスクでも顧客の反応は上々という。ロシア市場での浸透に、それほど時間はかからないかもしれない。
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