PhotoXPress撮影
警戒心
クリミアのワイン醸造業者パーベル・シベツさんはモスクワの一流レストランで15年間ソムリエとして働き、9年前に故郷のクリミアに戻って来た。クリミアのワインはポートワイン「マサンドラ」だけでないことを証明するために。
2006年にワイナリーの会社を設立したパーベルさんは10ヘクタールの土地にヨーロッパ種ブドウを植え、昨年最初のワインを出荷できた。
「簡単な作物しか栽培していないクリミアで高級ワインを作っている」
クリミア編入のニュースを彼はビジネスマンとして警戒感をもって受け止めた。
「クリミアで我々に向かって、ロシア市場が開放されると言っているが、露市場はいつだって開いていた。むしろ、ロシア編入のせいでウクライナ市場を失うのが落ちじゃないですか」
現在、ぼうぜん自失の人が多いという。
「私にはフランス業者から瓶を、ポルトガルからは栓を輸入する契約がある。どうやって税関手続きをすればいいのかも分からない」
しかし、ロシア連邦アルコール市場規制庁によると、許可証書き直しと商標登録の受け付けが始まっており、醸造業者の不安は解消されそうだ。
期待感も
2年前にオレグ・ニコラエフさんはクリミアに定住した。「ここは素晴らしい所だ。モスクワに12年間住んだが、もう我が家のような感じがする」
昨年オレグさんはセバストポリに自分のレストラン「島」を開いた。投資額は50万ドル(約5000万円)だ。モスクワなら似たようなレストラン開業に300万ドル(約3億円)かかるという。
「私はクリミアが独立国になるのを夢見たが、それでは北キプロスみたいになる。ロシア編入は考え得る限り最良だろう」
オレグさんは観光ビジネスも始めた。不動産業にも注目している。オレグさんはリスクを自覚している。
「ここではインフラが更新され、大金が流入する。今、土地私有化が始まろうとしている。金のにおいをかぎつけて、山師がわんさかやって来るだろう」
通貨不安
ユーリー・ペンダリチュクさんはロシア人だが、ウクライナにいくつかの企業を所有している。主な収入は医療器械の販売と、食品への合成着色料の添加によるものだ。
12年にユーリーさんはクリミアの海岸の土地をホテルを建てるために買った。2年後そこには高級ホテルが出来上がった。
ユーリーさんはどこかの大企業に売却する心積もりで、額は700万ドル(約7億円)と踏んでいた。ところが、クリミアの事件が起きた。建物はできていたのに、いまだに空き家のままだ。
ウクライナ通貨フリブナの暴落で、ユーリーさんは約100万ドル(約1億円)を失った。外国の業者との契約はドル建てで、支払いは猶予するという条件だった。
ユーリーさんによると、キエフでもクリミアでも景気は悪く、彼の利益はほとんど消えてしまったという。
「明日どうやって家族を食わせたらいいか分からないのに、誰がケーキだの医療機器だの買いますか」と、ユーリーさんは意気消沈気味だ。
彼の試算では、クリミアの事件の前後で、医療器械の販売額は40%にまで落ち込んだという。
クリミア編入でユーリーさん個人のプロジェクトはほとんど葬り去られたが、それでも、半島全体にはプラスの経済効果があるだろうと彼はみている。
「役所や役人からの粛清的な圧力は弱まった。猫もしゃくしも賄賂ではなくなった。残った役人は、お決まりのキックバックのために、自分の椅子を失いたくないから」
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