ロシア人の生命価値はいかほど

輸送機関所有者民事責任義務保険では、死亡事故で最大16万ルーブル(約48万円)の賠償が定められている。=PhotoXPress撮影

輸送機関所有者民事責任義務保険では、死亡事故で最大16万ルーブル(約48万円)の賠償が定められている。=PhotoXPress撮影

人的資本は経済発展の原動力というのが世界の認識だ。だがロシアでは生命価値が驚くほど安い。

 なぜ生命をお金に換算する必要があるのだろうか、そもそも生命価値とはなんだろうかと、疑問に思うだろう。例えば、誰かが工場の生産現場の事故で死亡した場合、交通事故で死亡した場合、自然災害で死亡した場合、またはテロで死亡した場合、遺族にはどれほどの補償が行われるのかを算出するものだ。

 そう言うと、命というより死の値段のようだが、まったくそうではない。経済専門家は、政府や企業が安全水準を高めると、生命価値が高まると考える。そしてこれが労働条件、保健分野、保険システム、救急作業の改善へとつながるという。大切なのは死亡数を減らすことで、国家機関や経済界にとっては、経済的損失を抑えることにもなる。ロシア国立研究大学「高等経済学院」の専門家が、ロシアにおける生命価値を評価した。

 

専門家の評価

 高等経済学院・比較社会調査実験所のタチヤナ・カラブチュク副所長はこう話す。「ロシアにおける平均統計的生命価値は、5000万ルーブル(約1億5000万円)ほど。これはアジアの新興・発展途上国に近い。先進国と比べると、極めて少ないことがわかる。イギリスの12.5%、フランスの16.7%、アメリカの22.22%」

 人的資本の評価にもとづいた他の計算方法では(教育分野、労働分野で人がいかに力を発揮しているかなど)、ロシア人は平均600万ルーブル(約1800万円)でしかない。

 高等経済学院・労働調査センターのロスチスラフ・カペリュシニコフ副所長はこう話す。「ロシアは人的資本の指標において、先進国から遅れを取っているが、ポーランドやルーマニアといった旧社会主義国よりはるかに進んでいる。ロシアの指標は2000年代に2倍以上増えたが、その主な原動力となったのは、ロシア人の実収入増」

 

値段は職業によって変化

 ロシアには国家的な生命価値の統一計算システムがないため、正式な水準を理解するのは難しい。だが個別の基準なら存在する。工場で不幸な事故が起こった場合、義務社会保険は遺族に100万ルーブル(約300万円)を保証しているが、一度に受け取れる額は7万7000ルーブル(約23万1000円)である。鉱山労働者の生命は国によって特別な評価がなされており、死亡した場合は、直近3年間の平均年収が遺族に支払われる。

 より高額なのは国家公務員の一部カテゴリー。司法機関や監督機関の職員が業務中に死亡した場合、本人の平均月収180ヶ月分が遺族に支払われる。軍人や救急サービスの職員の場合は、基本給120ヶ月分である。

 

保険会社の評価

 輸送機関所有者民事責任義務保険では、死亡事故で最大16万ルーブル(約48万円)の賠償が定められている。昨年導入された輸送車民事責任義務保険では、乗り物に乗っている人が死亡した場合、遺族に200万ルーブル(約600万円)の賠償が行われ、さらに葬儀費用2万5000ルーブル(約7万5000円)が支払われる。

 非常時や自然災害で死亡した場合は100万ルーブル(約300万円)だが、ドモジェドヴォ国際空港のテロ事件とクラスノダル地方の洪水の時には、遺族に200万ルーブル(約600万円)が支払われた。

 

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 ロシア国営保険会社のアンケート調査によると、生命価値は平均360万ルーブル(約1080万円)。この時、男性の生命価値は430万ルーブル(約1290万円)、女性は280万ルーブル(約840万円)である。職業別ではトップマネージャーが580万ルーブル(約1740万円)だが、無職は550万ルーブル(約1650万円)と、不思議なほど差がない。これより少ないのがホワイトカラーで、220万ルーブル(約660万円)。この評価は注目に値するが、それでも主観的だ。

 ロシアの保険会社が行った昨年度の統計によると、ロシア人は生命保険に756億ルーブル(約2268億円)支払った。一方で、自動車保険には2790億ルーブル(約8370億円)支払っている。生命保険サービスの需要を高めること(言い換えれば、国民が自分に対して資金などの面でより責任を負うようにすること)の障壁となっているのが、全体的な生活水準の低さだと専門家は考える。自分の生命に保険をかけられるような資金的余裕が、誰にでもあるわけではない。そのため、以前と同様、多くの人が自分の生命を国家に”委ねている”のである。その方が信頼できるし、安く済むということだ。

 

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