ビザやマスターに代わるカードは?

中国のユニオンペイがシェアを拡げる可能性もある=ロイター通信撮影

中国のユニオンペイがシェアを拡げる可能性もある=ロイター通信撮影

一連のロシアの銀行へのサービスを停止したアメリカのクレジットカード会社ビザとマスターカードをめぐる状況を受けて、ロシア当局は、それらに代わる決済システムへの移行についての議論を再開した。国内では、かねてからロシア独自のシステムの創設を求める声があり、中国のユニオンペイ(中国銀聯カード)がシェアを拡げる可能性もある。

 ロシアでは、これまでも、国内市場におけるビザとマスターカードの大きなシェアは看過できない、と言われていた。そのため、ロシア中央銀行は、ウクライナ危機のずっと以前から、それらの会社の影響力を抑えようとしていた。カード全体に占めるビザとマスターカードの割合は、80~90%であり、これらのカードを管理するスイッチアームは、ロシアの管轄圏外にある。

 銀行家らは、システムは国家の規制の下にあるべきだとみなしており、たとえば、モスクワ銀行は、国家の経済面および情報面の安全確保のツールとしての独自のカード決済システムを創出する構想を支持している。同行の理事セルゲイ・メドノフ氏は、こう語る。「ロシア中央銀行をベースとして同行の指揮下にそうしたシステムを創ることが最も相応しいように思います。ロシア中央銀行は、ロシアの決済・清算センターとなるべきであり、そのために必要なすべての技術的・法的基盤をそなえていると思います」

 ロシア中央銀行は、ちょうど今年7月1日までに、ロシア国内のトランザクションのセンターを創出するつもりでいた。これは、国家的な安全性を高めるばかりでなく、中銀に追加的な収入をもたらしうる(決済システムは、中銀と収入を分け合うことになる)。

 

「国営」という名称を求めて

 現在、ロシアには、国際的なもののほかに、およそ20のローカルな決済システムが機能している。それらの多くは小規模で、大手は二つ。その一つは、1993年に創設されたロシア初の決済システムの一つであるユニオンカードで、これには、約300の金融機関が加盟している。もう一つは、ロシアおよびCIS(独立国家共同体)の500以上の銀行が加盟する決済システム「ゾロターヤ・コローナ(金冠)」。

 しかし、専門家らが最も有望な決済システムとみなしているのは、ズヴェルバンク(貯蓄銀行)に決済センターをもつPRO100(プロースタ)で、そのカードは、手始めに給与支給用として公務員に配布される可能性がある。非銀行クレジット組織「ペイユー(PayU)」の会長エレーナ・オルロワ氏は、こう語る。「そのプラス面は、まず第一に、それがマスターカードによって開発されたM/Chipテクノロジーを利用している点であり、そのため、銀行は、そのシステムへ移行するために新しい設備を購入する必要がなく、ソフトウェアに若干手を加えるだけで済むのです」

 

移行期間 

 戦略的コミュニケーション局「UEC(ユニヴァーサル電子カード)」の代表アンドレイ・ネステロフ氏は、こう語る。「銀行が決済システムPRO100へ加盟するには最低一月半かかります。市民にはこのシステムは無料で、ユニヴァーサル電子カードを入手すれば利用できます。銀行がこのシステムに加盟するためにかかる費用は150万ルーブル(約450万円)ほどで、このシステムのサービスは外国のシステムより割安です」

 非営利パートナーシップ「国家決済評議会(ナショナル・ペイメント・カウンシル)」のアルマ・オバエワ会長は、こう述べる。「ローカルなシステムが全国規模で始動するには、最低半年かかりますが、顧客を集めてビザやマスターカードのようなグローバルなシステムとなるには、数年かかるでしょう。移行期間が必要なのです。給与のカードはローカルな決済システムをベースに発行されてクレジットカードはビザやマスターカードをベースに発行されるという国もあり、そうしたモデルはロシアでも定着する可能性があります。独自のシステムへの移行のプロセスは、スムーズでなくてはなりません」

 

欠点 

 しかし、自国の決済システムには、一つの大きな欠点があり、全ロシア社会団体「ロシアン・フィナンシャル・ディレクターズ・クラブ」第一副会長のタマーラ・カシヤノワ氏は、こう語る。「ユーザーには、ロシアのシステムのサポートがない国外でカードを利用する場合に問題が生じます。今の状況で何か独自の開発を国際舞台へ導くのは、そう簡単ではありませんね」

 カードPRO100は、今のところ、ロシア国外では利用できないが、エレーナ・オルロワ氏は、それは、中国やインドなどの独自の決済システムが機能している他国の経験も示しているように、単に時間の問題であるとみなしている。

 

中国のオータナティヴ

 ロシアの決済システムが現れるまで、2013年秋にロシア市場へ進出した中国のユニオンペイがビザやマスターカードに取って代わることも考えられる。中国の決済システムは、2002年に創設され、数年で国際的ステータスを獲得した。

 ロシア大統領顧問のセルゲイ・グラジエフ氏は、こう述べる。「中国では、国家の業務センターが導入され、ビザやマスターカードを含むカードによるすべての決済を中国の管轄内に置きました。これは、より確実ではるかに安価です」

 地方銀行協会の会長で国家会議(ロシア議会下院)議員のアナトリー・アクサコフ氏は、米国の制裁によって損害を被ったロシアの銀行が必要に応じてユニオンペイへ移行する可能性がある点を指摘している。

 専門家の多くは、生じた状況によって痛手を被るのは、ロシアの銀行という顧客を奪われる形で市場の大きなシェアを中国のライバルへ献上するリスクを冒しているビザとマスターカードのほうである、という見方で一致している。

 

*以下の記事を参照: