中銀によるルーブル買い支え

=タス通信撮影

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ロシア・ルーブルは今年に入ってから、何度か厳しい局面に遭遇したが、ロシア連邦中央銀行の買い支えなどにより、今のところ持ちこたえている。

 今月初めからは、クリミア半島をめぐるロシアと西側諸国の対立により、株式市場は20%下落した。ルーブルは1月中旬から9.6%も安くなっている。ロシアの金融専門家らは最近、2008年の状況を引き合いに出している。ロシアは当時、グルジアと紛争状態に陥り、金融市場の反応は軍事行動に連動していた。ただウクライナは、その規模、人口、資源で、南オセチアやアブハジアよりもはるかに大きいため、現在の政治問題の方が厳しいことは明らかだ。また、欧州連合(EU)にとってウクライナの意義は非常に大きく、ロシアにとってクリミア半島は軍事基地として非常に重要である。

「対立は今のところ、マクロ経済や金融の深刻な問題を引き起こしてはいない。大手銀行は安定しているし、パニックもない。大手企業や銀行の大規模な倒産あるいは破綻などが認められた場合、市況が変わる可能性はある」と全国格付機関の上級アナリストであるマクシム・ヴァシン氏は話す。

 

ウクライナ情勢のルーブルへの影響

 ウクライナ情勢に直結したルーブルの変動は一部と言える。ロシア中銀によるルーブル引き下げが始まったのは昨年末。取り引きに加わらずに変動幅を上げ始め、ルーブルを徐々に下げた。

今年のルーブル下落

 1月15日のUSD/RUBは33.2386。次の10日間でルーブルは6.6%さがり、2月5日までに35.45になった。ルーブル安はウクライナ情勢とは無関係で、ロシアの資本流出が主な要因だと言われていた。  新たなルーブル安はウクライナ情勢の影響を受けた2月末。  

 2月25日のUSD/RUBは35.5112、3月1日は36.1847。その後上院が対ウクライナ軍事力行使を承認したことで下落。この時はルーブルが暴落する可能性もあったが、ロシア中央銀行は3月3日、主要金利を7%まで上げる決定を行い、ルーブル維持のための介入を拡大した。これによって下落は止まり、3月14日のUSD/RUBは36.4566となった。

 1月中旬には為替レートの調整をやめ、ルーブルを自由変動にした。市場はこれに瞬時に反応し、外貨は値上がりし、ロシアの大手国営企業はより高いレートで大量に購入した。専門家はそれでも、この時期のルーブルの下落に影響したのは、ロシアから先進国の市場への資本流出だと話す。ロシア連邦経済開発貿易省によると、1月の流出総額は170億ドル(約1兆7000億円)に達したという。

 「流出の勢いが増した原因の一つは、アメリカの量的緩和の段階的縮小に関する情報」とロシアの投資分析会社「インヴェストカフェ」のミハイル・クジミン氏は説明する。投資家の一部は「質への逃避」を実施したという。「これ以外にも、ロシア中銀は特別介入をやめ、一手段としての介入を残したが、これが市場でのルーブルの変動性をさらに大きくした」

 2月末から3月初めは、ロシア上院(連邦会議)が対ウクライナ軍事力行使を承認したことで、さらなるルーブル安が起こった。2月初めですでに6.6%安くなっていたルーブルだから、ウクライナに関する決定で崩壊する可能性もあったが、中銀が主要金利を7%まで上げ、介入を拡大する決定を行った。特に3月3日は110億ドル(約1兆1000億円)の介入を実施。これはそれまでの平均介入額の10倍である。介入後、ルーブルはすぐにあがった。「これがその後のルーブルの暴落を抑えた」とクジミン氏。

 

ルーブル維持はいくら

 西側諸国とウクライナが反対したクリミア半島へのロシアの軍の参入から、中銀はルーブルの変動をコントロールしている。「ルーブルは極めて遅い降下をしており、中銀の許容力に応じてルーブルが安くなる。中銀は市場での通貨需要を満足するために、金・外貨準備を大量に費やしている」とヴァシン氏。

 多くのロシアの専門家は、パニックが株式市場から金融市場に移ることはなく、ルーブルは中銀の介入および銀行部門の支援メカニズムだけで比較的安定を続けると考えている。特に中銀は14日、買い戻し条件付証券売却・購入の枠組みの中で900億ルーブル(約2700億円)を銀行に提案し、さらに銀行の需要が提案を2倍強の2030億ルーブル(約6090億円)に引き上げた。中銀は17日には4000億ルーブル(約1兆2000億円)と発表した。このような銀行側からの活発な流動性需要は、追加的な資金が必要であること、また主要金利が1.5%増の7%まであがっているため、その分支払う用意があることを示している。銀行は中銀から受け取った資金を、ルーブルの融資や為替取引(市民からの外貨購入)にまわす。

 

為替レートの予測

 専門家によると、ウクライナ情勢の大きな影響がなければ、今年末までに1ドル37.50~38ルーブル、1ユーロ53.2ルーブルの方向に動くという。経済制裁や資本流出の影響でロシア経済の停滞が起こった場合は、景気後退に陥り、1ドル40ルーブル、1ユーロ55ルーブルになるという。

 ロシア政府の予測によると、ルーブルの部分的引き下げが、ソチ五輪の大きな負担を抱えている予算の現状を改善し、7600億ルーブル(約2兆2800億円)増やす。

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