ウクライナ情勢の経済的影響

ウクライナ国立銀行=写真提供:wikipedia.org / Max

ウクライナ国立銀行=写真提供:wikipedia.org / Max

予期されるウクライナの債務不履行は、ロシア経済にも打撃を与えると、専門家は警告している。ロシアの政界と経済界はすでに、その影響を最小限に抑えるための対策を講じている。

 ウクライナ経済は厳しい状況に置かれている。ウクライナ銀行間通貨市場では1ドル=10フリヴニャ(グリブナ)付近で推移。ウクライナ国立銀行の外貨準備高は178億ドル(約1兆7800億円)から150億ドル(約1兆5000億円)まで減少。外国からの資金流入は鈍化し、逆に流出は大量に起こっている。

 アルセニー・ヤツェニュク暫定首相は27日、最高会議でこう述べた。「ウクライナの国庫は略奪されている…。統一財政資金で残っているのは400万フリヴニャ(約4000万円)。これでは何もできない」。ウクライナの対外債務は総額1300億ドル(約13兆円)だという。イギリスの市場調査会社「キャピタル・エコノミクス」のアナリストによると、対外債務不履行を回避するためには、緊急的に200~250億ドル(約2兆~2兆5000億円)が必要だという。

 ヨーロッパは支援を急いでいない。欧州連合(EU)は1週間半前、ウクライナを放置しないと約束したが、今のところ支援の規模も、具体的な時期も提示されていない。支援は5月の大統領選の後になりそうだ。その理由はわかりやすい。西側諸国は新政権が構造改革に同意したら、援助を行おうというのだ。今のところ、望みは国際通貨基金(IMF)のみ。ウクライナは150億ドル(約1兆5000億円)を受け取れればと期待している。

 

ロシアの不安

 ヨーロッパの格付け会社「フィッチ」は、ウクライナの金融危機がロシア経済にも打撃を与えると警告している。ウクライナに支店を構えるロシアの銀行は、ウクライナ国内で総額280億ドル(約2兆8000億円)を融資している。融資先は50%以上が地元企業、25%がウクライナの資産の取得を行っているロシアとウクライナのビジネスマン。「融資の60%が外貨で行われているため、景気後退、担保資産所有への政治的脅威、フリヴニャの切り下げを含む」、経済的リスクと政治的リスクにどちらもさらされている。

 ロシアの銀行はこのリスクを予見していた。ロシアの国営大手銀行「VTB」のアンドレイ・コスチン総裁は、新たな融資を停止していることを伝えた。ただ、ウクライナにおけるVTBの資産割合は、グループ総取引の2~3%にすぎない。ヴェドモスチ紙のVTBへの取材によると、すでに企業にも個人事業主にも融資を行っておらず、銀行の顧客となっている個人への貸し付けのみを行っているという。

 ズベルバンク(ロシア連邦貯蓄銀行)のゲルマン・グレフ総裁も、独立広場での衝突が収まった後、ウクライナでの融資を一部凍結すると発表した。ただし、大企業への制限はない。フィッチはズベルバンクが他の銀行ほど脆弱ではないと考えている。

 

リスクはさまざまな分野に及ぶ

 銀行以外にウクライナ情勢の負の影響を被る可能性があるのは、ウクライナ企業と提携しているロシアの製造会社。オランダの金融大手「ING」の上級エコノミストであるドミトリー・ポレヴォイ氏によると、まず機械製造会社が影響を受けるという。また消費財や農産物の部門にも一部影響が及ぶ。以前ウクライナ製品の輸入が制限された際、ロシア側ではなく、ウクライナ側が被害を受けたことに触れながら、「ウクライナからロシアへの農産物の輸入が停止してもベラルーシが一部補える」と話した。政治は政治として、ビジネスは何が必要かを理解しているという。

 ウクライナとの協力関係が重要となる石油ガス分野については、関係悪化でまず困るのはウクライナ側である。ウクライナ・エネルギー・石炭産業省のエドゥアルド・スタヴィツキー大臣臨時代理は2月第3週に、第1四半期のガスの割引価格を第2四半期でも維持することやガス料金の支払い問題を改善することについての交渉を、ウクライナとロシアが行っていると伝えた。

 ウクライナはロシアの重要な貿易相手国であるため、フリヴニャの切り下げがルーブル相場にも悪い影響を与える可能性があると考えるのは、「ドイツ銀行」の上級エコノミストであるヤロスラフ・リソヴォリク氏。また同じ理由で、ウクライナ経済の弱体化が、ロシアの国内総生産(GDP)の成長をいくらか遅れさせる可能性もある。

 ロシアはそれでも、ウクライナの支援を急がない。ロシア財務省のアントン・シルアノフ大臣は、ウクライナに約束していた150億ドル(約1兆5000億円)の融資のうち、120億ドル(約1兆2000億円)を凍結したと発表した。30億ドル(約3000億円)については、すでにウクライナ債券の購入にあてられた。ポレヴォイ氏は、ウクライナが債務不履行に陥った場合、これらの債務再編の話になるかもしれず、当然ながら、ロシアにとっては厳しいことになると話す。ただし、ロシアやロシアの投資家のリスクはそれほど大きくない。ウクライナ債券の80%をアメリカの投資家が保有しているため。