軽い折りたたみ電気自転車

オレンジとホワイトの電気自転車「メレス(Meles)」の外観は、ソ連時代の折りたたみ自転車「カマ」をほうふつとさせる=Press photo撮影

オレンジとホワイトの電気自転車「メレス(Meles)」の外観は、ソ連時代の折りたたみ自転車「カマ」をほうふつとさせる=Press photo撮影

電動の乗り物はロシアで人気があるとは言いがたい。政府や行政は最近、環境にやさしい乗り物に注視し、国民の関心を向けようとしている。

 輸入電気自動車の関税が2月1日、ゼロ水準まで正式に引き下げられた。ただし、ハイブリッドカーは対象外である。この免税措置は2015年12月31日まで続く。政府はこの間、安くなった電気自動車に対する国民の反応をうかがう。

 

手作りの電気自転車 

 実際のところ、電気自動車の高額な値段が燃料の節約効果を上回るため、国民が殺到することはなさそうだ。代案としては、電気モーターを搭載した自転車が ある。サンクトペテルブルク在住の40歳のエンジニア、イワン・ジヴォドロフ氏は、電気自転車の生産を思いついた。オリジナル・モデルを自分で開発し、す でに生産を始めている。

 自動車の交通量の多い、サンクトペテルブルク市中心部のネフスキー大通りを、ジヴォドロフ氏と歩く。「ちょっと想像してみてほしい。自動車が騒音をたてず、空気を汚さなかったら、と。自動車の代わりにみんなが自転車で走っていたら、と。もっとスペースがあって、空気を思いっきり吸えるようになったら、と」とヴォドロフ氏。

 ロシアではつい最近まで、電気自転車はネットの変わり者の娯楽でしかなかった。手づくりのバッテリー、ベニヤ板、絶縁テープの自転車は、アート・インスタレーションまたはアポカリプス(黙示録)後のフューチャリスティックな交通手段といったところか。冬は前輪にスキーが装備される。

 ヴォドロフ氏は最初、一般的な自転車のつくり方を書籍で学んだ。これによって、自分の電気自転車を設計することができた。市場に投入されているどのモデルにも、欠点があったという。ブレーキの質、疑わしいデザイン、価格などの点で、気に入るものはなかった。夫人と2人でモデルのデザインを考え、中国の工 場に試験ロットの生産を依頼した。

 

ハンドルとペダルも折りたためるコンパクトさ 

 オレンジとホワイトの電気自転車「メレス(Meles)」の外観は、ソ連時代の折りたたみ自転車「カマ」をほうふつとさせる。だがフレームだけでなく、ハンドルとペダルも折りたたむことができ、バッグに入れることが可能だ。今日ロシアで購入できる、このクラスの折りたたみ自転車としては、もっとも軽いモデルとなる。軽いだけでなく、耐久性もあり、すべての部品がプラスチックなどではなく、しっかりとアルミ製になっている。

 「体重100キログラム強の私も普通に使っているが、どちらかというと女性用にデザインされている。美しく、軽く、棚の中にしまったり、列車で運んだりすることのできる自転車にしたかった。このサドルの座り心地も良い。妻と2人で女性のサイズや座った跡をはかって、一番快適な形を開発した」とヴォドロフ氏。

 

コンセントで充電、時速2530km50km走れる 

「美しく、軽く、棚の中にしまったり、列車で運んだりすることのできる自転車にしたかった」=Press photo撮影

 バッテリーは電話やノートパソコンと同様、コンセントから充電可能。1回の充電で約50キロメートル走る。電気自転車で出勤しても、疲れず、汗もかかない。時速25~30キロメートルで、渋滞を横目に、市内のあらゆる場所にすばやく行くことができる。

 ディスク・ブレーキ採用で、雨や水たまりがあっても平気。またタイヤの湾曲や他の機械的損傷も恐れない。フレームの構造により、自転車には背筋を伸ばして座ることができ、走行中、手や足に大きな負担がかからない。このような座り方の自転車では通常、坂道や水たまりのある道を進むのが大変だが、メレスはス ポーツ用自転車や山岳用自転車ではなく、街中で走るための自転車としてつくられている。電気モーターの力は上り坂やでこぼこ道に十分対応可能。

 ヴォドロフ氏はその品質の秘密について、部品代を節約していないだけと説明する。「中国ではすべてがコストに比例している。質の良い部品を使えば、良い自転車ができる。中国のデザインは今のところ、あまり良くないから、そこは自分でやらなければならない」

 

「コストパフォーマンスで無敵」 

 量産用の資金は、大きな自転車店のオーナーから借りた。モデルとデザインのイメージや設計から、初品の受け取りまで、約1年を要した。ヴォドロフ氏は現 在、華やかな都市部用の電気自動車を設計し、量産することを夢見ている。憧れはアメリカの企業家で、決済システム「ペイパル」の創設者の一人である、イーロン・マスク氏。マスク氏は電気自動車「テスラ」の製作に自身の資産を投じている。

 ロシアの電気自転車市場の参入者は、中国のみすぼらしいモデルか、ヨーロッパの高額なモデルの販売店ばかりであるため、ヴォドロフ氏はライバル不在だと 考えている。メレスの価格は2万2000ルーブル(約6万6000円)。ロシア市場で販売されている、普通の山岳用自転車の価格と比較可能だ。

 ロシアで電気自転車を所有している人は今日、概算で1500人以下。うち半数は自分でつくった手づくり品。ヴォドロフ氏はこのニッチを埋め、将来的には環境にやさしい乗り物の需要が著しく高い、ヨーロッパ市場に参入したいと考えている。