アエロフロートが“格安”子会社を設立

写真提供:タス通信

写真提供:タス通信

露航空大手「アエロフロート」が10月4日に子会社として設立した格安航空会社(LCC)の名前が、「ドブロリョート」(良いフライト)と決まった。アエロフロートが発表した。4年後には、同社は時価総額12~14億ドルに成長すると関係者は期待しているが、まず航空関連法が改正されるのが先決だ。

 「ドブロリョート」は、元々アエロフロートの前身である、1923年に設立された株式会社の名称だった。

 「我々は良いネーミングだと思っています。名前の中に“良”の字が入っているし」と、ヴィタリー・サヴェリエフ・アエロフロート社長はコメントした(インターファクス通信の報道による)。

 アエロフロートの発表によれば、有限会社「ドブロリョート」は、去る10月4日に設立された。その社長には、2年前に倒産した格安航空会社(LCC)「アヴィアノヴァ」(投資会社А1のプロジェクト)の元社長が就任するという。

 営業開始は来年春か夏の予定で、ハブ空港はモスクワのドモジェドヴォだが、空港関係社はこれについてコメントしていない。

 

まず1億ドル投資

 アエロフロートは、この子会社に1億ドルを投資する。2年後には回収できる見込みで、5年目には約1千万人の旅客を運ぶ見込み(ちなみにアエロフロートの2012年度の旅客数は2750万人だった)。サヴェリエフ社長は、120万人ほど子会社に“食われる”だろうという。同氏の推算では、3~4年後には、子会社の時価総額は14億ドルに達する(アエロフロートは、現在のレートで19億ドル)。

 またサヴェリエフ社長によれば、ドブロリョート社は独立組織となり、「最大限独自の裁量に任される」が、その営業方針の大枠は、既にアエロフロートの取締役会が承認済みだという。そのなかには、2016年までの路線や便数、デザイン(Landor社が考案)なども含まれる。

 

「中古は飛ばさない」 

 ロシアの従来のLCCとの違いは、飛行機が中古ではなく新しいことだ。2年前に倒産したSky Express社(社長はボリス・アブラモヴィチ氏)の場合、使われていたのは“機齢”15年のボーイング737で、アヴィアノヴァ社のほうは、3~7年のエアバスА320。だがドブロリョート社は、最新鋭ハイテク機のボーイング737NGを使う。

 まず8機を買うが、この取引については、10月16日に、アエロフロート取締役会で話し合うという(購買額は明らかにされていない)。

 「どんなプロジェクトでも、ゼロからいきなり8機を買うのは、それなりのリスクがあります。しかし、アエロフロートには有利な条件で買える可能性があるし、別の案件のために融資、投資を受けることもできます」。「アヴィアポルト」社のオレグ・パンテレエフ分析部長は、このように説明する。

 

中古で過密ダイヤはムリ 

 ドブロリョート社のプレゼンでは、「飛行機を買い足していくときも、専ら新しいものだけ」で補充し、数年後には40機を保有する見込みだという。

 「これは非常に重要です。新しい飛行機でなければ、LCCの特徴である過密なダイヤを遅滞なくこなしていくことはできません」。こう言うのは、アヴィアノヴァ社のコンスタンチン・テテリン元社長。Sky Expressもアヴィアノヴァも、中古の飛行機を飛ばしていたため、故障やダイヤの遅れがしばしば生じた。

 ドブロリョート社の路線は、向こう3年にわたってすでに計画されているが、アエロフロートのスポークスマンによると、営業開始後に変更される可能性はあるという。

 その現時点での計画によれば、初年度は8つの路線に、週150~180便を飛ばす。2年目には路線は11になり、3年目にはさらに6路線増える。

 

航空関連法改正で露LCC市場が変わる 

ドブロリョート航空が結ぶ都市

2014年には、サンクトペテルブルク、サマーラ、エカテリンブルク、マハチカラ、クラスノダール、ウファ、カリーニングラード、ノーヴイ・ウレンゴイ。2015年には、アナパ、ヴォルゴグラード、ノヴォシビルスク、カザン、ソチ、チュメニ、オムスク、ペルミ、ニジネヴァロトフスク、チェリャビンスク。2016年には、ロストフ・ナ・ドヌ、アストラハン、ミネラーリヌイエ・ヴォードィ、キエフ、エレバン、イスタンブール。

 テテリン氏は、ドブロリョート社設立にともない、ロシアのLCC市場は変わると言う。アエロフロートの働きかけで関連法が改正され、この種の会社がより効率的に活動できるようになる見込みだからだ。

 「これは市場が成熟したということではありません。国には、ドブロリョート社を立ち上げる政治的意志があり、そのための行政的措置がとられたからです」とテテリン氏は結んだ。

 サヴェリエフ社長自身は、これに関連して、プレゼンでこう述べていた。「ロシアの法律を世界のそれに合わせなければ、LCCはやっていけません。例えば、チケットのキャンセル不可、機内食と預かり手荷物の有料化、外国人パイロットの雇用などの導入が必要です」。

 同社長は、必要な法改正が今年末までに行われると期待しているという。運輸省のスポークスマンは、修正案はすでに政府と下院に提出されたと述べ、やはり今年末には法改正が完了するとみている。

 

アエロフロートの狙いは 

 「法改正は、アエロフロートにとってとても魅力的で、新会社設立のリスクを補って余りあるのかもしれません」。こうパンテレエフ氏は考える。

 「現在のところ、格安チケットを買った人は、それより高いチケットとどこが違うのかよく分からないでしょう。ビジネスとエコノミーの違いは分かりますけどね。もしその差がもっと目に見えるようになれば、アエロフロートなどの高い航空券の価値が上がるはずで、それらの売り上げも伸びるでしょう。乗客は何に対して金を払っているのか納得がいきます。また、競合他社を価格競争に引きずり込むことで一泡吹かせることもできます」。

 

*元記事(露語)

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる