最も革新的な五輪をサポート

布谷彰氏=写真提供:Press Photo

布谷彰氏=写真提供:Press Photo

来年2月に開催されるソチ冬季オリンピックの組織委員会は、この五輪が技術面で最も革新的なものになると再三述べてきた。それを多くの面で協賛活動で手助けするのが、五輪のパートナーたち。プログラム「オリンピック・パートナー」は、1988年のカルガリー五輪でスタートした。当時、IOC(国際オリンピック委員会)が、パナソニックを含む世界の大企業にグローバルスポンサーとなることを打診したのが始まりだ。現在IOCには、いずれも世界的な企業である10のグローバルスポンサーがおり、そのうち、パナソニック、コカ・コーラ、マクドナルドは五輪を支え続けて既に25年になる。パナソニック・ロシアのプロジェクト「ソチ2014」を統括する布谷彰氏がタス通信に対して、ロシアでのビジネスの秘訣やホッケーへの熱い思いなどを語った。

―IOCのグローバルスポンサーとしての仕事は何から始まりましたか? 

 映像機器の提供からです。それから少し遅れて、音響機器も提供するようになりました。五輪の回数を重ねるごとに、機器の種類も増えていきました。ソチ五輪では、我々は同時に二つの義務を負っています。グローバルスポンサーとして映像機器と音響機器を納品するほか白物家電部門で公式サプライヤーにもなっています。こうしたケースは、長野五輪に続いて二度目です。ロシアはわが社にとって特別に重要な地域なのです。

 

―ソチに納品する品目のなかに監視カメラがありますが、それについて教えてください。 

 オリンピック施設の約4000台の監視カメラのほか、ソチのインフラにも3000台以上を設置済みです。目的はいずれも同じで、安全確保です。ちなみに、カザン市のユニバーシアードでも似たようなカメラが使われました。 

 

パナソニックはどんな新技術、新製品をソチに提供するのですか? 

 我々の広告塔となるのは、メディアキューブです。これは、“継ぎ目”のない、4面の巨大なLEDスクリーンで、解像度はフルHDを上回ります。現時点では、これが最も強力なスクリーンで、これまでの五輪にはこれに類するものはありませんでした。

 このキューブは、ホッケーが行われるボリショイ・アイス・ドームに設置されます。重量は26トンを超え、必要に応じて、高くなったり低くなったり、高さを調整できます。1面が6・9メートル×6・6メートルの大きさで、1ピクセル(画素)は6ミリです。通例そうであるように、キューブの上の部分で競技の映像を見せ、下の部分で得点を、側面でロゴと対戦チームの国旗、五輪のマーク、シンボル、情報などを示します。キューブの設置と調整に3ヶ月近くかかりました。

 

他に新製品は? 

 まったくの新製品というわけではありませんが、昨年夏ロンドン五輪で絶賛されたものがあります。これは、光束2000ルーメンの強力なプロジェクターで、開会式と閉会式に使われました。ご記憶かと思いますが、メイン・スタジアムに設置された中央キューブに画像を映し出すのです。画像は、スタジアムの周囲に置かれたプロジェクターから伝送された画像を“縫い合わせた”ものですが、ひとつのリアルな画像が合成されました。ソチのセレモニーでも、これに劣らぬ見物を提供し、観客に喜んでもらえればと思います。

 

ロンドンでは史上初めてすべて3Dで撮影されました。パナソニックはこのプロジェクトに直接関わっていましたね。 

 そうです。これは、オリンピック放送機構(Olympic Broadcasting Services)との共同プロジェクトでした。今回は、4Кの新技術に注目が集まっています。これは、映画で初めて使われましたが、スポーツの分野にも積極的に導入されています。

 人間が肉眼で捉える映像は、約125メガピクセルです。理論的には、映像機器の解像度はいずれこの水準に近づくでしょう。そうなれば、テレビの画像と窓の外の景色は、解像度の点では差がなくなります。

 

オリンピックは新製品を紹介する機会になるということですか? 

 五輪が開催されるごとに、そこで使われた技術、製品は、スタンダードになるチャンスがあります。我々がデジタルビデオカメラを導入したときもそうでした。トリノ五輪(2006)でテープのアナログの代わりにデジタルを提案したときは、誰もそれが可能だとは信じませんでしたが、今や、誰のポケットにもデジカメが入っています。その後は、我々がバンクーバー(2010)で披露した3Dですね 

 

次にどんな新技術が出てくるのか、想像もつかないですね。 

 例えば、超広角カメラです。これを使えば、スタジアム全体が捉えられます。観客は、自分がスタジアムにいるような完全な臨場感を味わえるでしょう。ロシアのFC「ロコモチフ」の試合の一つでテスト済みです。ソチでも使ってもらえると大いに期待しています。 

 あるいは、高画質・高音質のビデオ会議システムですね。似たようなものは、バンクーバー、ロンドンでも使われましたし、ローザンヌのIOC本部にもあります。ただソチがユニークなのは、その規模です。オリンピック施設に全部で89のビデオ会議システムを納入します。

 ですから、ソチ五輪が革新的なものとなることを確信しています。そのイノベーションには、当社の製品も貢献していると自負しています。

 

ロシアの組織委員会との仕事で、ロシアの独特のお国振りなど、何か問題はありましたか? 

 私は、バンクーバー、北京、ロンドンの組織委員会と仕事をしましたが、「ソチ2014」は、協力に対して最もオープンだと思います。五輪の組織に携わる人の多くは、それが最初で最後なので、どの五輪でも何らかの問題が生じるのは止むを得ません。しかし、私の経験ではどれも解決可能です。

 

日本人とロシア人は、メンタリティーに極めて近い面があるとの意見がありますが、本当ですか? 

 どの国民にも色んな特徴があるのは当然で、日本は別の惑星だと思う人もいます。でも、日本人とロシア人の思考パターンはよく似たところがあります。いずれも、「はい」と「いいえ」しかない白黒の世界には生きられないということです。フリーハンドの範囲が広く、柔軟です。ですから、何度でも会って顔を合わせ、共通の解決を見出すことができるんですね。

 

ソチの街自体は気に入っていますか? 

 過去の五輪はいずれも大都市で行われました。ソチは、そんなに大きくないですが、五輪のおかげで、スポーツと娯楽の中心地になるでしょう。私自身、頻繁にソチを訪れていますが、残念ながら、観光スポットを見る余裕はありません。それに街全体が建設に没頭していますし。

 

五輪開催中はソチに来られますか? 

 行かないわけにはいきません。開幕から、当社のあらゆる機器の管理をしなければなりません。私と同僚は、もちろん、開会式にも閉会式にも立ち会います。しかし、セレモニーを楽しむ余裕があるかどうか・・・。緊張することは間違いありませんが。開催の2週間前に、当社のサービス・エンジニア30人がソチ入りし、五輪とパラリンピックの全期間当地に留まり、機器の正常な作動をバックアップし、これらの機器を使う情報・報道関係者を援助します。ここまでやる会社は、世界広しといえども他にはありませんよ。

 

ロシアのホッケー人気は凄まじいですが、あなたはホッケー・ファンとして、どの国が優勝すると思いますか? 

 ぜひとも決勝戦を見たいと思っています。ロシアが進出した場合はなおさらです。パナソニックがスポンサーである「ロコモチフ」の選手が、ナショナルチームに入り、決勝戦でもプレーしてほしいですね。 

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