現在、ロシアが販売するLNGの77.5%が日本向けとなっている=タス通信撮影
ただし、日本のガス市場におけるロシアの可能性は、今後数年間限定的だ。日本へのロシア産LNGの主な輸出者である、国営天然ガス企業「ガスプロム」の消息筋は、次のようにコメントした。「これは当然と言える。サハリンのLNG工場の能力はわずか1000万トンほど。これを拡大するのは今のところ不可能」。
現在、ロシアが販売するLNGの77.5%が日本向けとなっている。ロシアが日本のガス市場でこれを維持するだけでなく、さらにシェアを拡大できるかは、大問題である。
理論的には可能だ。例えば、「サハリン2」プロジェクトのLNG生産工場の第3ライン建設計画や、「サハリン1」プロジェクトの新工場建設計画などがある。「三井物産」を中心とした日本側は例えば、このアイデアに関心を示した。「東京電力」も同様だ。東電は昨年、追加分の100万トンを含む、300万トンのサハリン産LNGを輸入した。
ウラジーミル・プーチン大統領は、安倍晋三首相との会談後、ロシアの炭化水素資源で日本を支える用意があることを明らかにした。さらにガスプロムが日本国内におけるLNG受入基地、および気化したガスのパイプラインの建設に投資する用意があることも話した。
だがエネルギー戦略研究所燃料・エネルギー複合体専門・分析局のアレクセイ・ベロゴリエフ局長は、慎重な考えを示す。「日本のLNG価格に多くが依存している。現在はプレミアム価格となっているため、すべてのLNG生産者が日本に”殺到”している状態。しかしながら日本においても、他のアジアの国においても、これに対して不満が高まっている」。
ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長が4月に訪日した後、茂木敏充経済産業相は同社に対し、ガスの値下げを検討するよう求めた。
それでもトランジット・ゾーンのないロシア産ガスの物流条件は、日本にとって何よりも魅力的だ。これは最大限に安全を確保できる唯一の策である。
ただし国際ガス連盟の報告によると、2017年には年間LNG生産量が3億6550万トンに達する可能性がある。ここには2016年に稼働を開始するロシアの「ヤマルLNG」工場は含まれていない。2017~2018年に年1500万トンのフル稼働を始める予定だが、例えば2017年のLNG需要は、「ドイツ銀行」の専門家によると、年間約3億5000万トン。現在の世界経済の傾向が継続した場合、この時までにウラジオストク、ヤマル、サハリンのLNG工場が稼働を開始することによって、需要と供給のバランスが達成される。
ベロゴリエフ局長は、日本におけるロシア産ガスの状況が、日本のLNG価格に左右されると話す。「中期見通しでは、日本市場がプレミアではなくなる。さらにアメリカにおけるガスの『価格革命』も加わる。その結果、ヤマルとペチョラのLNG工場建設プロジェクトが、日本にガス輸出をするには高額になりすぎてしまう可能性がある」。
日本とロシアには、互いに質問したいことがある。
日本はロシアのLNGプロジェクトについて、より詳細に知りたいと思っている。どの鉱床から天然ガスを採掘するのかについて、ロシア側が説明を幾度となく変えていることに、日本は困惑している。
ロシアは日本の原発について、より詳細に知りたいと思っている。日本の炭化水素資源の需要は、福島原発事故および原発の相次ぐ停止の後、急激に伸びた。日本にある54基の原子炉は現在、すべて停止している。しかしながら原発を今後稼働するか否かについて、最終的な政治決定はなされていない。潜在的なロシアのLNG供給業者の構えは、この点に依存している。
日本のガス市場におけるロシアのシェアは現在約9%。日本の一部専門家の予測によると、将来的にはこれが30%まで拡大し得るという。いずれにしても、中期見通しでシェア拡大のチャンスがあることは、確かなようだ。日本のガス価格は、約3年後に大体定まる。リスクは明白だ。
日本へのLNG輸出拡大は、ロシアの新工場の建設および発展を考えれば、2019年以前には始まらない可能性がある。それまでロシアの戦略が大きく変わることはないだろう。それでも日本のガス市場の見通しを踏まえた決定は、近いうちに行われるはずだ。
ロシアの会社は日本のガス市場で厳しい競争にさらされるであろうが、これに遅れを取らないかということが問題だ。ガスプロムのLNGに関する長期的見通しが不明瞭な状態を、何とかしなければいけなくなるだろう。現在取り上げられている主な問題は、これまたガスプロムが分析しきれていないシェール・ガスの問題だ。
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