ロシア製アパレル・ブランド

「Oh, my」ブランドは今日、ロシアのベーシック・アパレル市場のトップを争っている=Press photo撮影

「Oh, my」ブランドは今日、ロシアのベーシック・アパレル市場のトップを争っている=Press photo撮影

スウェーデン系家具チェーン「イケア」の元従業員であるセルゲイ・コヴェレノフ氏は、同社の理念にインスパイアされて、アパレル・ブランド「オー・マイ (Oh, my)」を立ち上げた。このブランドは今日、ロシアのベーシック・アパレル市場のトップを争っている。競争に勝つために、ロシア人の愛国心や実用性のニー ズを重視している。

おっ、ロシア製――Oh, my

 コヴェレノフ氏が自身のブランドをつくろうと考えたのは5年前。その3年後、ロシアの業界でトップに立つという意欲的な計画を立てながら、オー・マイを設立した。このブランドの理念の多くはイケアの影響を受けており、シンプルさ、ぬくもり、快適さに重きを置いている。

 「ロシア市場には、シンプルさを重視 したり、それを推進したりするメーカーが足りなかった。そんななかで先駆的な若者は、西側のファッション・ブロガーのアイデアをとり入れていたし、イメー ジをつくる際のベーシックな要素の重要性を理解していた。ロシアでそのようなファッションを見つけるのは、とても難しかった。我々が気づいた2つ目のトレ ンドは、愛国的な精神。ロシア製、ロシア人がつくったものすべてに対して、関心がとても高かった」とコヴェレノフ氏。この2つの現象をもとに、プライベー ト、家族、教育を大切にする、西側的な価値観を持つ大都市の住人、いわゆる”西側主義者”のために、ブランドを創設することを決めた。

 

コストダウンの方法は 

 最初は試行錯誤をくり返した。2009年に発表した150~200ドル(約1万5000~2万円)の婦人用ワンピースのコレクションでは、実際の生産や 流通のコストが非常に高額であることが判明。複数のブランドを扱うネットショップや、ショッピング・モールの店を通じた販売を行うと、少量しか扱ってくれないのに手数料が非常に高い。そこで自社のネットショップと、ソーシャル・ネットワーキング・サービスのみを使うことにした。2010年春にネットショップがオープン。ワンピースは、生産が簡単な、素朴な色のベーシックなニット品に変わった。最初の製品となったのは、Tシャツとスウェットで、色はブラッ ク、ホワイト、グレー。

 オー・マイは現在、毎日のベーシックな製品を約50種類販売している。必要性の高いタートルネック、長袖のトップス、Tシャツ、ス ウェットシャツをさまざまな長さで用意するなど、婦人服には特別な品ぞろえを行った。

 当初の資本金は自己資金2万ドル(約200万円)と、借入金約2万ドル(銀行の融資と親や友人から借りたもの)。主な顧客はモスクワ(70%)とサンクトペテルブルク(20%)の住人で、26~28歳のモスクワっ子が最大のお得意様だ。

 

デザインと販売以外は外国で 

「Oh, my」アパレル・ブランド・コレクション=Press photo撮影

 2年で月間売上高を5万ドル(約500万円)まで伸ばすことができた。平均購入額は80ドル(約8000円)。ネットショップでは1点16~80ドル (約1600~8000円)の価格帯がよく売れる。製品はサンクトペテルブルク市、レニングラード州、モスクワ市郊外の工場で縫製されている。季節物の ニット製品はラトビアでつくられる。

 「当社は生産ではなく、デザインと販売のみを行っている。生地は自分たちで輸入したら税関で手間がかかり、コストが高 くなってしまうため、仲介業者を通して外国から購入している。輸入元はエストニアやトルコ。本当はロシアの生地を購入したいところだけど、まともなハイテク産業がないから。イワノヴォの生地があるから、それで寝具をつくっているけど、服をつくるには質が低すぎるね」とコヴェレノフ氏。

 縫製を除いて、会社の従業員数は昨年1年で2倍になり、さらに10人が入社しようとしている。衣服開発に携わっているのが1人だけで、製品とブランドの認知度向上に9人が取り組んでいるのは興味深い。

 

“潜在的愛国者”たちをターゲットに 

 将来的にはいくつかの実験を行う計画だ。まず、ソーシャル・ネットワーキング・サービスを多用することをやめる。成功をもたらした戦略を多様化し、従来 型の広告チャンネルを通じた、顧客との交流を始める予定。ブランドの性格を変え、このような方向転換を行っていく。

 これまでは、ソーシャ ル・ネットワーキング・サービスの35歳以下のユーザーを対象に販売促進を図ってきたが、今後は対象を拡大し、「メイド・イン・ロシア」という国産品に高 い関心を持つ、愛国心の強いロシア人を重視していく。

 さらにカプセル・コレクションをつくり、ユーザーの関心を高めるため、デザイナーを招き、異なる色の 限定品を販売していく考え。現在オー・マイは、すべての製品をブラック、グレー、ホワイトの3色のみで販売している。来年に向けて、エストニア、トルコ、 イタリアにさらに3社創設する計画だ。生産拡大以外にも、これが外国で新たな顧客を獲得するチャンスとなるかもしれない。

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