販売されるのは、市場が最も急テンポで成長しているSUV車で、中型SUVの2代目RDXと、クロスオーバーSUV車であるMDXの3代目だ=AP通信撮影
アキュラの報道関係者へのプレゼンは、9月24日に、クレムリンの真ん前で、ヨーロッパ、ロシア、ウクライナのホンダ現地法人の幹部が 出席して行われた。
ホンダ・モーター・ヨーロッパ・リミテッドの西前学社長は、来春ロシアでアキュラの公式の販売を開始する意向だと述べた。ウクライナでも同年に販売を始めるという。これは、オフィシャル・ディーラーによる販売としては、ヨーロッパで初めてとなる。
販売車種はSUV車のRDXとMDX
販売されるのは、市場が最も急テンポで成長しているSUV車(スポーツ用多目的車)で、昨年発売された中型SUVの2代目RDXと、クロスオーバーSUV車であるMDXの3代目だ。
後者について、ホンダ・モーター・ルスのマーケティング販売部上級マネージャーのミハイル・プロトニコフ氏は、「カリフォルニアで新たにゼロから作った」と述べている。
いずれの車種もロシア向きに改造されており、最低地上高はアメリカでの185ミリから200~205ミリになり、特別なサスペンションが取り付けられ、座席、ハンドル、ワイパーのためにヒーターが設置された。さらにMDXには、日中の明るさに匹敵する発光ダイオードによる照明器具が追加される。
ホンダは当面ロシアでの現地生産を予定していないので、車は米国の工場から運ばれてくることになる。
ドイツ高級車の独壇場
アキュラのロシア進出は非常に遅れ、高級車ブランドのなかでは最後となった。プロトニコフ氏の説明によると、進出の決定そのものは既に2007年になされており、2010年半ばに販売開始の予定だったが、経済危機が妨げとなった。
だが、高級車の販売台数の低下は、しばらく前に底を打っている。中価格帯の車の売れ行きは依然下がっているものの、高級車のそれは上昇に転じている。
とはいえ、ロシア人が好むのは「ドイツ・ビッグ3」、つまりベンツ、BMW、アウディだ。3位のアウディでさえ、昨年は2万3900台を売り、日本勢では最も成功しているレクサスの1万200台をはるかに引き離している。自動車業界の情報分析を行っている「アフトスタト」社のアンドレイ・トプトゥン情報分析部長によると、その理由はいくつかある。
なぜドイツ・ビック3はロシアで強いのか
まず、ロシアでは、ドイツ製高級車のほうが“高級感”があると受け止められている。トヨタのレクサスのように、同じメーカーの他のブレンドに、より低価格の似たような車があるわけではなく、モデルにもっと独自性があって面白い。
ロシア進出もドイツ車のほうがずっと先輩で、1990年代から正式に売られていたが、日本車製高級車はずっと遅れた。また、ドイツのほうが最先端の技術の導入に積極的である。
また、「フォーミュラ91」社のマーケティング広告部長であるミハイル・レズジョフ氏によると、概して欧州勢のほうが、ロシア政府などの公用車の入札に勝つことに熱心だ。高官がドイツ車に乗ることで、その高級イメージが固定し、どんな経済危機にも関係なく売れる。
さらに、欧州がヨーロッパ・ロシアに近いという地の利もある。ここに住むロシア人の平均収入は他地域よりも高く、潜在的需要者がここに集中しているので、車と部品の販売が容易だ。
「CV-Rが出回っているのに、なんでRDXを買うの?」
ホンダとアキュラが“似たり寄ったり”であることは、次のような 冗談の種にもなった。アキュラ販売開始のニュースが流れると、「もうホンダのCV-Rが市場に出回っているのに、なんでRDXを買わなくちゃいけないんだ?」というコメントがブログに現れた。
もっともトプトゥン氏は、ロシアではアキュラもそれなりに売れるだろうと言う。「最初の2年で2~4千台売ることは可能でしょう」。
アキュラの知名度のおかげで、高級車市場の1%程度を占めることはできるだろう(現在は0・7%にすぎない)。しかも、販売台数の伸び率は決して悪くなく、今年の8ヶ月間で22%上昇している。アキュラは、レクサスと日産のインフィニティ(昨年の販売台数は5600)に次いで、ロシアに登場する3つ目の日本の高級車ブランドになる。
とはいえ、専門家らは、アキュラのいくつかのマーケティング上のミスを指摘した。「高級車市場の競争は熾烈で、競合他社はずらりとセールスポイントを並べているのに、アキュラはエンジンだけだ」とレズジョフ氏は言う。プレゼンで報道関係者に宣伝されたのは、既にロシアではお馴染みの技術ばかり。例えば、「上から車が見える」機能は、最高級車ではない日産のキャシュカイ360にもう装備済みだ。
ロシアの現在のアキュラ保有者はショック
ところで、ロシアのドライバーは、この“新顔”とは実は既に顔なじみだ。アキュラは、オフィシャルでない、いわゆる灰色のディーラーを通じて、売られているからだ。新車は少なく、毎年50台どまり。残りは中古で、ロシア国内のアキュラ車は毎年約350台ずつ増えていると、トプトゥン氏は述べる。
「インヴェスカフェ」社のアナリスト、アンドレイ・シェンク氏は、これに付け加えてこう言う。「とはいえ、全体としては、人気車種だとは言えません。サービスを受けられないし、販売台数も少ないですから」。
レズジョフ氏いわく、アキュラはロシアでは今のところ“希少車種”であり、プレゼンスは弱い。
ロシアのアキュラ保有者にとってショックだったのは、これから開設されるアキュラ・サービスセンター(モスクワに2つ、サンクトペテルブルクに1つ)では、保証期間内のサービスを受けられないことだ。ホンダ・モーター・ルスの増田英夫社長は、“灰色”ディーラーから買った車は、オフィシャル・ディーラーから保証期間内のサービスを受けられないと、釘を刺した。ただ、保証期間後のそれは受けられるという。
ホンダはまだ、ロシアで売るアキュラ車の価格を決めていないが、ロシア市場の競合他社に太刀打ちできると確信しているという。
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