今年に入って保険料が2倍に引き上げられたことから、45万8000人の事業主が登記を抹消したのだ =Shutterstock撮影
初めて事業を登録するロシアのあらゆる個人事業主は来年から2年間、納税義務を免除される。このような構想を、ドミトリー・メドベージェフ首相が吟味するよう求めた。基本的には、大臣全員がすでに承認していると、経済発展省のセルゲイ・ベリャコフ副大臣は話す。
法律の網をかいくぐる
これは事業主の多くが法律から逃れようとすることに対する対策であると、経済団体「実業ロシア」のアレクサンドル・ガルシュカ共同議長は説明する。今年に入って保険料が2倍に引き上げられたことから、45万8000人の事業主が登記を抹消したのだ(ちなみに6月1日時点で登録されている個人事業主は 350万人)。政府の社会担当は引き上げに固執し、メドベージェフ首相は最大50万人の事業主の喪失を警告されたにもかかわらず、これを了承した。
政府は今夏、この壊滅的な状況を救うべく動いた。ロシア下院(国家会議)は、保険料値下げ法案を可決した。
いかに監視するか
経済開発省のセルゲイ・ベリャコフ副大臣は、ロシアNOWの取材に対し、新たな規定がロシアで起業する外国人にも適用になる”可能性がある”と話した。
個人事業主は現在、特別な課税方式に従って納税している。これには簡略システム(取引高の6%または利益の15%)、一時収入に対する統一税法、個人所得税と付加価値税、特許システムという、いくつかの選択肢がある。この際、保険料はすべての方式に含まれ、いかなる場合にも除外されることはない。
これまで活動してきた事業主が、免税を目的として新たな事業に切り替えることのないよう、政府は監視することになる。ただし、その監視方法がいかなるものになるかはまだわからないと、ガルシュカ共同議長は話す。詳細は現在、財務省と税務庁が詰めている。
金融危機の影響
もっとも、2010年から事業主は確実に減少している。保険料引き上げ前に減少が始まっていることから、これは税金だけでなく、他の要因もあるとガルシュカ共同議長はみる。
「金融危機前は収益の急速な伸びがすべての行政コストや賄賂コストをカバーしていたが、2009年にすべての成長が止まり、2010年に 事業主のコストは急激に増大するようになった」。
昨年の事業主の人数は370万人。完全に市場から去る者がいれば、“影”に隠れる者もいると、経済専門家グループの専門家、アレクサンドラ・ススリナ氏は説明する。
重要なのはマクロ経済効果よりも社会的意義
個人事業主のGDPへの貢献度は5%でしかなく、税優遇措置を実施したところでいかなるマクロ経済効果ももたらさないと、フランス系の金融グループ 「BNPパリバ」の上級エコノミスト、ユリヤ・ツェプラエワ氏は予測する。だが社会的効果が重要なのだ。
「1990年代のロシアの夢は自分のビジネスを持 つことだったが、今は国営企業に転職すること」。個人事業主の減少に大きな影響を与えたのは、これらの人々に対する政府の懐疑的な見方だとガルシュカ共同議長は考える。だが政府は今、「事業主から詐欺師や泥棒のイメージをなくす必要がある」と信じている。
新たな詐欺師を生むだけとの懐疑論も
「政府は新規起業家に対する税優遇措置を適用して、新たな詐欺師を生みだそうとしている」とツェプラエワ氏。「これまでの事業主がビジネスを自分の知人 や親戚の名前で登録するだろう。こういう組織なんだ、としか思われない」と、1990年代に主要なビジネスを行っていた事業主はツェプラエワ氏の意見を支 持する。
政府はこれを理解しているし、当初は特別扱いしたがらなかったと、政府の財政担当の関係筋は話す。「だが限定的な措置で十分だということになった。この構想の推進者はこれ以上無理強いしようとしていない」。
「無駄な報告や厳しい管理から解放するだけで十分」
すでに事業を始めて対象外となっている人々は落ち着くことができず、もう一度やりなおしたがっていると、ロシアの監査法人「グラディエント・アリファ」 取締役会のパーヴェル・ガガーリン議長は話す。市場で差別が生まれる。既存の事業主がなぜ対象になれないのかと、政府の関係筋は疑問を持つ。
事業主に特に措置を施さなくても、無駄な報告や厳しい管理から解放するだけでいいと、ツェプラエワ氏は考える。そして法律の改正を減らすこと、とススリナ氏はつけ加える。「大企業は短期融資で支出の変更をまかなえるが、中小企業は取引高の資金からねん出しなければならない。税金の負担自体(事業主にとってそこそこ人道的)よりも、ころころ変わる税金制度がロシアの事業を凍結させる」。
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