Getty Images撮影
可能性秘めた国
「私がロシアで起業したのは、EU(欧州連合)と違って、誰も世界経済危機の悪影響を口にしていないし、課税システムもまあまあだから。個人企業の法人税は6%」
こう語るのは、04年からロシア在住のモロッコの建築家マルアン・スバイさん。「私の業界は競争が厳しいが、ロシアはビジネス面での成長に無限の可能性を秘めている」
在露5年のイタリア人女性ミシェル・ボログナニさんも似たような意見だ。1年前、彼女はロシア人女性とモスクワに小さなブティックを開いた。「ヨーロッパの市場は飽和状態。ロシアではほとんどあらゆるアイデアを実現する余地がある」
約6割
約2万5000人の外国人の個人事業主のうちCIS出身者の割合。
112位
世界銀行によるビジネス環境のランキングで、ロシアは112位。
4億ルーブル
法律が定義する収益面からみた「零細ビジネス」の利益の上限。
10%
ロシアで零細ビジネスの従事者の割合。小売業、自動車修理が多い。
行列待ちは
ここ3~4年ロシアは法改正や行政簡素化などにより、ビジネス環境の改善に取り組んできた。その結果、世界銀行によるビジネス環境ランキングでは120位から112位に少し上昇。プーチン大統領は2020年までにトップ20入りする計画を示している。現在のトップ3はシンガポール、香港、ニュージーランドだ。
ロシアで特に改善されたのは、事業登録、非営利団体の許認可などの手続きだ。5年前には、税務庁に登録するのに丸1日かかったが、今では手続きが電子化され、関係職員の勤務予定が正確に定められ、「行列待ち」は1時間以内で済む。
マルアンさんはこう説明する。「私が個人事業主として登録したのは、他の形態の有限責任会社だと、もっと多くの書類を集めねばならないから。法人税も高くなる。ロシア人のパートナーと起業するには、有限責任会社の登録が必要です」
ロシア語は必須
ロシアでの起業に要する初期費用は事業の種類によって異なる。「いずれにせよ、1万~1万5000ユーロ(約130万~195万円)の手持ち金なしに新事業に乗り出すのは冒険だ」。こう企業家たちは口をそろえる。
また、あらゆるビジネスマンにとってロシア語は必須だ。「他の国でもそうだけど、この国の言葉を知らなくてはどうしようない。消費者とは彼らの言葉で話さなくては」と、リトアニア出身のイオランタさんは言う。彼女は母国とロシアで旅行社を経営している。
ロシアでビジネスを妨げているものは何だろうか。「たくさんある」とみな異口同音に答えた。官僚主義と汚職による絶えざるリスク。住居を借りると、消防局や衛生局が何度も「調べ」に来る……。
「その地方と業界の特性を知るべきだ」と、ギリシャ人のアンドレスさん(32)は警告する。彼は2年前にモスクワに八百屋を開いたが、すぐにつぶれてしまった。機敏に対応して店じまいしたので損失をあまり出さずに済んだという。事業再起をあきらめていないアンドレスさんは断言した。
「ロシア人は確かに投資とビジネスの発展に関心をもっています。今、この国で成功するには、サービスの質と効率が必須条件です」
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