ガスプロムのあまりにも“儒教的”な戦略

写真提供:Press Photo

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国営天然ガス会社「ガスプロム」が“じっくり待っている”間に、中国だけでなく、日本までもが、同社のパイプラインや液化天然ガスを必要としなくなるかもしれない。

 ガスプロムは買い手との協議において、「If you sit by the river long enough, the bodies of your enemies will float by(河辺に長く座って待てば、敵の遺体が流れてくる)」(欧米では孔子の教えまたは東洋の諺などとして知られている語句)を実践しているように見える。 つまり、買い手が自然にやってくるのを座って待っているのだ。

 新しいパイプラインや液化天然ガス(LNG)の工場の大規模な建設計画はあるものの、競争に慣れていないガスプロムは、あらゆる面で競合企業に立場を譲っている。それは外国企業だけでなく、待望のLNG輸出自由化を目前に控え、新しい契約を着々と 結んでいる、国内最大の独立系天然ガス生産・販売会社「ノバテク」や国営石油会社「ロスネフチ」もそうだ。

 

露国内にも強力なライバル 

 ガスプロムはこの反応の速さを学んだ方がいいかもしれない。アルカディー・ドヴォルコヴィッチ副首相が5月、買い手との契約がない限りはLNG輸出自由化を進めないと発表すると、その1ヶ月後にはノバテクとロスネフチが、環太平洋諸国を中心としたLNGの買い手と契約を結んだ。それもノバテクの契約相手 は、パイプライン経由のガス供給についてガスプロムとすでに8年も協議している、中国石油天然气集団公司(CNPC)だ。

 また、ロスネフチはCNPCと2030年までに原油3億トンを供給する契約を2009年に結び、さらに3億6000万トンの新たな契約を近日中に結ぼうとしている。

 ただし、両社はすべてを順調に進められたわけではなく、約1年に渡り、最初の契約で定められる供給の計算式の解釈について協議を行わねばなら なかった。結果的にロスネフチはCNPCに割引を行い、債務の問題を解決した。ロスネフチは新たな契約を結んだ後、パイプライン・システムの拡大について、ロシアの国営石油パイプライン会社「トランスネフチ」と話し合わねばならない。 

 このような問題がありながらも、ロスネフチには収入をもたらす現実的な 供給事業がある。

 

政治的に判断する独占企業 

 ガスプロムはすでに何年も中国と「契約寸前」の状態にあるのだから、思い切って中国に割引を行うか、あるいは供給条件を変えて、ロスネフチと同じ道をたどるという方法もある。

 ガスプロムの幹部によると、ロシア側と中国側が主張するガス価格の差額は1000立方メートルあたり50ドル(約5000円)で、 現在問題となっているのはアメリカの現物市場を見据えた係数式の追加なのだという。

 だが何も変わらないのだ。原油あるいはLNGが、天然ガスよりも簡単に 販売できるからではなく、ロスネフチは商業を優先し、ガスプロムは政治を優先していることが、両社の差なのだと市場関係者は考えている。

 市場の状況は文字通り毎日変化しているため、ガスプロムが「河辺に座って待っている」間に、買い手は同社のパイプラインや液化天然ガスを必要としなくな る可能性がある。これは中国のみならず、ロスネフチが最初にLNG契約を交わした日本も例外ではない。少し譲歩すれば世界の供給者になり得るガスプロム は、「河辺に座って待ち続ける」だけなのだ。