露自動車市場の現況

アフトワズの組み立てライン =ロシア通信/アンドレイ・ホルモフ撮影

アフトワズの組み立てライン =ロシア通信/アンドレイ・ホルモフ撮影

急成長するロシア自動車市場は、数年後には欧州最大になる見込みだ。露国産メーカーを一部残し、外国メーカーの現地化率を上げ、自国の利益も確保するという政府の戦略は既に描かれている。

 露自動車市場はここ数年、欧州で最も有望だという評価をかたじけなくしている。昨年度は、AEB(欧州ビジネス協議会)の統計によれば、ロシアでの新車販売台数は11%伸び、293万台に達して、経済危機前の水準を超えた。かたやEU(欧州連合)は、ACEA (欧州自動車工業会)によると8・2%減で、過去17年で最低の1200万台まで落ち込んだ。

 高止まりしている原油価格がアメリカ人の懐にこたえ、逆にロシア人の懐を暖かくしていることは言うまでもない。しかも30%の高関税は、外国メーカーにロシアでの現地生産を促してきた。昨年度は、輸入車122万台に対し現地生産車97万台と、ほぼ拮抗するに至っている。

 

純国産車は風前の灯だが

 当然こうした状況は、「安かろう悪かろう」で売ろうとする露自動車メーカーに逆風になっている。おまけにロシア人の平均収入は増えており、国産車にない価格帯の車を欲しがるようになっている。その結果、露国産車の販売台数は、2002年のピーク時の92万台から、昨年は58万台にまで減った。

 現在生き残っている国産ブレンドといえば、Lada(アフトワズ社)とUAZ(ソラーズ社)だが、前者は既にルノー・日産が経営権を取得しつつあり、後者も外国メーカーとの合弁企業設立に重点を移した。露国産で堅調なのは、商業用の低価格車を生産するKAMAZ社とGAZ社のみだ

 

ロシアの戦略

 露政府の戦略は明らかで、外国メーカーの現地生産化を促すということだ。2011年にルノー・日産、GM、フォード、フォルクスワーゲンの各社と結ばれた協定では、現地化率60%、年産30万台を課した。そのうち30%以上の車には、現地生産されたエンジンとトランスミッションを使用しなければならない。

 その見返りに、2018年1月までは自動車部品の輸入は無関税だ。これは、ロシアがWTO(世界貿易機関)加盟に際し、関税の緩やかな減少を勝ち取ったことを考えれば、相当な優遇措置だろう。昨年度の自動車輸入関税は、新車の軽自動車は25%、トラックとバスは10%だが、2018年でも前者は15%、後者は5%だ。

 なお現在、自動車の輸入業者は廃車処理料金を支払っており、欧州委員会が、輸入業者を差別するものだとクレームをつけているが、問題はまだ決着していない。

 

露自動車市場は欧州最大に

インフォグラフィック:

 露自動車市場が成長する要素はまだ他にもある。ロシアの自動車保有台数は、まだ人口比では欧州の半分で、1千人あたり250台にすぎない。自動車ローンの金利(15~17%)、自動車保険(価格の5~10%)は欧米に比べずっと割高なので、下がる余地がある。

 ロシア産業貿易省の描く戦略では、露自動車市場の規模は2020年には417万台に達する見込みだ。プライスウォーターハウスクーパースの見通しでも350万台。

 もっともいずれの予測も、初期の爆発的成長が、年2~5%の成長率に落ち着くという点では共通しているが、それでも遠からず欧州第1位に躍り出る公算が大だ。

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