「小さな農園で需要の半分を満たせる」

「ロシア市場に占める農家の製品の割合は、それほど小さくありません。大手農産業ホールディングは、需要の半分も満たしていないことが統計で明らかとなっ ています。」=ニコライ・コロリョーフ撮影

「ロシア市場に占める農家の製品の割合は、それほど小さくありません。大手農産業ホールディングは、需要の半分も満たしていないことが統計で明らかとなっ ています。」=ニコライ・コロリョーフ撮影

グループ会社「農園直送(Pryamo S Fermy)」の最高責任者、アンドレイ・マシュク氏に、ロシアで農園をつくる場合の初期費用、大手農産業ホールディングとの競争などについて聞いた。

 -ここ数年、ロシアで農畜産業が人気となっている理由は何でしょうか。

 消費者がここ2~3年、質の良い食べ物を口にしたいと思うようになっているからです。1990年代は冷凍ハンバーグやインスタント・ジュースが流行して いましたが、自然の食べ物に回帰しているのです。健康への関心が高まり、正しい食事をすることが人気となりました。ロシアではまた、農畜産業自体もどんど ん発展してきています。ただ、この事業はあまり利益を生まないので、投資回収期間を短く見積もることには無理があります。当社は自然食品を販売するネッ ト・ショップとして事業を始めましたが、最初の利益が出たのは開設してから1年半後のことです。販売促進、物流システム、工場・倉庫施設の準備などに多く の費用がかかりました。現在はさまざまな農業分野でシェアを持っており、大規模な販売で収入を得ています。

 -100150頭の牛がいる畜産農園をゼロからつくるには、どれほどの投資が必要でしょうか。

 最初に150~200万ドル(約1億5000~2億円)ほど用意しなければいけません。その後は搾乳、獣医サービス、飼料作りなどの縦串システムをつく るために、さらなる投資が必要です。自社の獣医がいないと、牛が病気になって、牛乳に病気を引き起こすようなバクテリアやブドウ球菌などが混入してしまい ます。こういった部分で畜産農園の運営者に100%の確信がない場合、自社の製品を自然食品と呼ぶことはできません。

 -自分の農園をつくるのは高価な挑戦ですね。誰が融資するのでしょうか。

 国から財政融資を受けたり、民間投資を呼び込んだりします。銀行から融資を受ける時に、借り換え額の一部を補償するといった、国の農畜産業支援プログラ ムがいくつかあります。国の支援についてよく知っていて、投資を呼び込むのが得意な、副業経営者や副業農家などと一緒に仕事をするように努めています。こ ういった人々には、モチベーション、経験、知識、市場への理解などがあります。

 -農家は大手農産業ホールディングと競争可能なのでしょうか。

 ロシア市場に占める農家の製品の割合は、それほど小さくありません。大手農産業ホールディングは、需要の半分も満たしていないことが統計で明らかとなっ ています。需要を支えているのは小さな農園や会社です。ただ、これらが市場に参入する場合、マーケティングがなかなかできない、普及させるのに 費用がかさむ、加工設備の購入に無駄な費用がかかってしまうなど、難しい点が多いのです。牛乳はそのまま加工業者に渡す方が簡単です。また小売チェーンに とっては、すでに大きな製品ラインをそろえ、物流システムを整備し、宣伝費用をまかなえるような大手ホールディングと提携する方が、簡単で楽しいのです。 それでも小さな農園だけで、ロシアの乳・肉製品製造の需要の半分をまかなうことは可能です。

 -「農園直送」ブランドの製品は、メトロ(Metro Cash & Carry)などの大手小売チェーンの店舗で販売されています。小売業者と交渉するのは難しかったですか。

 チェーンに簡単に取り扱ってもらえたと言ったら嘘になります。メトロとの仕事のために農園監査を受けたり、包装や出荷システムを変えたりしなければなりませんでした。ただ、うちの自然食品の価格がより手頃なことなどもあり、他の多くの生産者よりも市場参入が簡単でした。1キロ30ドルもするようなカッ テージチーズ(一般的な量産品なら1キロ3ドル)は、どこのスーパーでも販売するわけではありませんから。

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