=タス通信撮影
シェール・オイルの採掘量が伸び、世界のエネルギー市場が大きく変化しようとしている。
イギリス系監査法人「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」のアナリストは、原油価格が下落した場合、ロシアのGDPが1.2~1.8%のマイナス成長になる可能性があると考える。ロシアの石油会社が状況を安定させ、アメリカに追いつくためには、最大で5年の猶予がある。
アメリカがロシアとサウジアラビアを追い抜く日
アメリカは石油採掘分野において、7年で飛躍的進歩を遂げた。同国のシェール・オイル生産量は2004年で1日11万1000バレルだったが、2011年には1日55万3000バレルにまで伸びた。この影響で、2013年の原料輸入量は、最近25年で最低の水準まで減少すると予測されている。
PwCの予測によると、世界のシェール・オイル生産量が2035年までに、1日1400万バレル、世界石油生産量の12%まで拡大するという。アメリカのエネルギー情報局(EIA)は、アメリカのシェール・オイル生産量が2035年までに、1日120万バレルほどに増加すると控えめな見方をしているが、他の市場アナリストは1日300~400万バレルまで伸びると試算している。
世界経済の救世主?
このような成長は、原油相場に圧力を加えることになる。2035年の原油価格は、EIAの予測している1バレルあたり133ドルよりも低く、25~40%減の1バレルあたり83~100ドルになるとPwCは試算している。
また、シェール・オイル採掘は、世界のGDPを2035年までに2.3~3.7%(現在のGDPから試算すると1兆7000億~2兆7000億ドル)引き上げる可能性がある。これは各国の経済にも好影響を与える。特にインドと日本などの石油輸入国ではGDPが4~7%伸び、アメリカ、中国、ドイツ、イギリスでは2~5%伸びる可能性がある。
「ロシアや中東諸国などの原油輸出大国は逆に、長期的見通しにおいては、自国のシェール・オイル鉱床を大規模に開発し始めない限り、著しい損失を被る可能性がある」と、PwCの主任エコノミストであるジョン・ホークスワース氏は伝えている。
量は多いが採掘しにくい露の頁岩油
ロシアの石油・ガス分野には、シェール・オイルに限らず、他の根源層も含む、「採掘困難な石油備蓄」というより広い概念がある。ロシアの「採掘困難な石油備蓄」の潜在量は、250~500億トンと評価されている。
ロシアの多くの資源会社に「採掘困難な石油」採掘プロジェクトが存在するが、どれもまだ開発は極めて初期段階にある。主なシェール・オイル鉱床は西シベリアに集中している。この地域こそがロシアの石油会社の”現場”だ。
イギリスの大手石油会社「BP」の予測によれば、シェール・オイルがロシア全体の石油採掘で占める割合は、2030年までに10%を超えるという。
投資・金融会社「カピタル」のアナリスト、ヴィタリー・クリュコフ氏は、「採掘困難な石油」の採掘開始時期が複数の要因に依存していると考える。
第一に、会社はそのような石油プロジェクトの地質学を理解しなければならないという。これは国によって違いがあり、アメリカではより簡単で、中国やロシアではより困難である。
第二に、このようなプロジェクトの税優遇措置が必要になってくるという。政府内では現在、こういった措置を定める法案が審議されている。
交通インフラも問題
ガスプロムバンクのアナリスト、アレクサンドル・ナザロフ氏はこう話す。「ロシアの会社はシェール・オイル採掘で、活発な動きを見せている。機を逸しているとは言えない。従来型の石油もまだロシアにはたくさんある」。
同氏によると、「採掘困難な石油」の採掘実績を有し、さらに設備も販売している外国企業が、ロシア市場に集まっているという。
「市場を維持し、アメリカに追いつくことは、大体5年でできる」。ロシアの石油会社の障害となりうるのは、アメリカやヨーロッパよりも難しい、鉱床の物流アクセスだろう。
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