アレクセイ・クデンコ撮影/ロシア通信
最初はスターを見ると興奮するけど、時間の経過とともにかなり落ち着いてくる。疲れると強い感情の波が押し寄せてこなくなるみたい。足元を見ながら歩いていると、ふと目の前に人の影。視線をあげるとそれがマルタン・フールカデだったり、ショーン・ホワイトだったり、マルセル・ヒルシャーだったり。あと日常で毎日、スポットライトが当たってない時の素顔のスターを見ていると、次第に普通の人として考えることができるようになる。
だけど中には興奮がおさまらない人もいる。ボランティアが競技期間中の選手に近づいたり、ましてやサインを求めたり、一緒に写真をとったりすることは固く禁止されているのに、「見て、見て、オベチキンと一緒にシャイバの前で撮った!」なんて喜びの声をだす人もいる。人気種目では特に問題が深刻になる。世界的なスターはいつでも大勢のファンに囲まれるから。そしてその中にボランティアのユニフォームを着ている人がいたりする。当然こんなことをやったら厳しく罰せられる。ボランティアの資格剥奪も含めて。
灯台もと暗し
クロスカントリースキー・バイアスロン用複合施設「ラウラ」を担当してる私の仲間は、こんなエピソードを話してくれた。ゴンドラで移動した時に、中に2人の女子ボランティアと、うつむいてずっとスマートフォンを操作していたスポーツウェアの女性がいたのだけど、2人は「こんなすごいイベントで活動してる のに、全然選手と写真がとれないし、サインももらえない、顔見知りの選手がいないから無理なんだ」って残念がっていた。仲間はその様子を見て笑いをこらえてて、スマートフォンを持った女性もニコニコしてた。スマートフォンの女性はユスチナ・コヴァルチックだったのに、2人はまったく気づかなかったから。ちなみにコヴァルチックはポーランド人で、ロシア語をよく理解できる。
人気がそれほど高くない種目では、全体的にもっと落ち着いてる。メダルをとったばかりの、注目に慣れていない選手は、皆と喜びを共有しようと、積極的に 一緒の写真やサインに応じる。代表の広報係はこれを阻止しようとするけど、時に許可をだすこともある。スマートフォンで選手を撮影したはいいけど、こっそり「誰かを撮影したけど、これって誰?」なんて聞いてる人がいたこともある。
あと選手を好きになっちゃう子も必ずいる。世界中のかっこいいスポーツ選手がこれだけそろってると、思わずぽーっとなってしまう。だから例えば、「記者会見用のプレートどうしたの?」って聞いて、「あっ、今取ってくる。”彼”を見てたら忘れちゃった」なんて答えがかえってくることもある。それでも五輪中盤までに私たちのほとんどが完全に感情をコントロールできるようになって、恋愛よりも、自分たちの活動に喜びを感じれるようになった。良かった。
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