ソチ10日目「メダルの裏側で」

ヴィターリイ・ベロウーソフ撮影/ロシア通信

ヴィターリイ・ベロウーソフ撮影/ロシア通信

勝利の歓喜は、観客、視聴者、そして五輪にかかわっている私たちが今、毎日目にしてるもの。そして競技には別の面がある。それはケガ。五輪の夢がはかなくも、一瞬にして崩れ去ってしまう。

 五輪の医療サービスを行うのは医師だけど、多くのボランティアが医師の手伝いをしてる。通訳、病院への救急輸送の手配、発生案件についての連絡などが、その役目。迅速かつ質の高いサービスをするために、正しい条件整備が必要になる。それをやっているのが私の仲間たち。残念なことに、この医療ボランティア・チームのサービスには、かなりひんぱんに要請がある。

 海岸部の屋内施設で行われる競技は、それほどケガの危険が高くないから、普通は打撲や筋違いへの対応。ところが、これが山岳部になると、競技への出場が危うくなるような大ケガが普通に起こる。

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 一番多いのは、アルペンスキー、フリースタイル、スノーボード、スキージャンプの練習中と競技中。これらの種目を担当しているボランティアは、最初の数日が経過すると、落ち着いて対応できるようになる、なんて普通に話してる。

 私はケガを見たら冷静でいられない。ケガのショックでしーんと静まりかえっている屋内施設で、淡々と自分の役割を続けるなんて無理。ただ、ぼう然と立ちつくしていてもしょうがないから、すべてがうまくいくように、と祈りながら、動き始めるけど。

 ケガがあると、プレス・センターがあわただしくなる。情報はすぐに届かないからざわざわしてる。ジャーナリストは落ち着かない様子で、編集局に電話をかける。「自分のミスで転倒・・・ヒジを抱えている・・・自分の力で起きあがって・・・いや、まだなにもわからない」。

 ケガになれている選手たちでも、なかなか冷静ではいられない。転倒する音が聞こえると、自分も大ケガから復帰したばかりという選手が、ふりかえって目を大きく見開いて、その様子をうかがう。転倒の音は他の音とは全然違う。響くし、大きい。テレビではほとんど聞こえないけど、現場では問題の予兆。医師があわただしくなって、人がかけよってきて、電話がなって、悲鳴もあがる。転倒の音がしたら、すべてが動きだす。