五輪の切符を手にしたロシア

応援者がロシアの国旗を振っている=

応援者がロシアの国旗を振っている=

AP撮影
 国際オリンピック委員会(IOC)は、予想に反し、リオデジャネイロ五輪からロシアを締め出さなかった。今回の大々的なスポーツ・スキャンダルの結末について、ロシア国内では、「ロシア・スポーツ界の大勝利」とか「われわれにとって最適であり最悪でない決定」といった声が、聞かれている。

 7月24日の日曜日、国際オリンピック委員会(IOC)は、ロシア社会の極めて悲観的な予想に反し、ロシア・チームの夏季五輪ブラジル大会への出場をそれでもやはり認めた。ローザンヌのスポーツ仲裁裁判所 (CAS)が、ロシアの陸上選手らに対して厳しい評決を行ったのち(事実上、彼らは、全員がオリンピックから締め出された)、IOCに対する望みは、ほとんど失われていた。というのも、IOCは、裁判所の判断に従うことを再三にわたり強調していたのだから。

 その際、ロシア・オリンピック委員会(ROC)は、「極めて危険な先例が、生みだされ、この時点から、スポーツ界全体は、新たな規則に準ずることになる」と声明した。ロシアのヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、CASに対する怒りのコメントを発表した。ROCのレオニード・チャガチョフ名誉会長は、ムトコ氏とROCのアレクサンドル・ジューコフ現会長に責任を負わせ、選手らは、西側の「政治的な注文」やスポーツの葬送について盛んに口にしていた。誰もが、最悪の事態に備えていたが、最悪の事態は、生じなかった。

 ロシアの陸上選手らの資格剥奪は、なおも効力を有しているが、IOCの執行委員会は、ロシア・チームを五輪から完全に締め出すことはしなかった。尤も、条件つきであり、過去にドーピングの問題がなかった「潔白な」選手のみが、出場を許され、誰が「潔白」であるかは、国際的な連盟が近日中に判断する。

 

歩み寄り

 たしかに、予想は、芳しいものではなかった。この大々的なドーピング・スキャンダルからロシアがうまく脱け出せるとは、あまり信じられておらず、スキャンダルは、月を追って勢いを増していった。そもそもの発端は、2014年12月にドイツの公共放送ARDが「極秘のドーピング:いかにロシアは勝者をつくるか」というドキュメンタリーを放映したことにあり、まさにこの番組の放映の後、世界アンチ・ドーピング機関(WADA) が、調査に乗り出した。その結果、ロシアのアンチ・ドーピング機関は、認可を取り消され、リオ五輪を目前に、ロシアの陸上の全選手が、資格を剥奪された。国内でのアンチ・ドーピング検査のために、ロシアは、毎月3万2千ポンドを英国アンチ・ドーピング機関(UKAD)に支払わなくてはならなかった。

 その後、少し前に欧州選手権で敗退したサッカーのナショナル・チームやパラリンピックの選手たちについても、ドーピング疑惑が囁かれるようになった。IOCがロシア・チーム全体の運命を決定しつつあった日の朝、英国のメディアは、インサイダー情報を流し、タイムズ紙(The Times)は、2008年と2012年の五輪に出場したロシアの選手らの再検査された検体の陽性反応について報じ、デイリー・メール紙(The Daily Mail)は、IOCが2016年のリオ五輪のみならず2018年の平昌(ピョンチャン)五輪にもロシアの選手を出場させない可能性に言及した。

 要するに、状況は、白熱していた。IOCの決定は、ロシアでは、遂に訪れた公正さとして(部分的にではあれ)、つまり、歩み寄った厳しすぎないものとして、受けとめられている。ヴィタリー・ムトコ氏は、スポーツ省はこうした決定を行ったIOCに感謝している、と述べるとともに、「ナショナル・チームに対して打ち出された基準は、たいへん厳しい。しかし、選手の80%は、これらの基準をクリアしている」と語った。

 

政治それともスポーツの純粋さ?

 議会を構成する政党のリーダーらは、もっと批判的であった。ロシア連邦共産党のゲンナジー・ジュガーノフ党首は、「すべてこれは、不快で忌むべき厄介ごとであるが、この決定は、少なくとも最悪なものではない」と情報メディア「ライフ」に語った。

 ロシア自由民主党のウラジーミル・ジリノフスキー党首は、出場に関する決定をまたしてもぎりぎりまで引き伸ばそうとしている、とし、「すると、登録が後れ、宿泊や食事の問題が生じる。メダルの数を減らすために、とことん苦しめるつもりなのだ」

 ドーピング・スキャンダル全体の政治的な背景をめぐる説も、ますます頻繁に耳にされる。女子棒高跳びの二度の五輪チャンピオンでありリオが自身にとって最後の五輪となるはずだったエレーナ・イシンバエワ選手は、「すべての論拠は、VFLA(全ロシア陸上連盟 ― 編集部)に対して向けられたものであり、選手らに対しては、具体的なものは何も向けられていない」と主張した

 しかし、誰もが、ドーピング・スキャンダルのなかに根拠なき注文を見てとったわけではなく、ロシア・テニス連盟の副会長で五輪チャンピオンであるエフゲニー・カフェルニコフ氏は、「WADAは、謂われなき非難を行わなかったであろう」とツイッターに記した

 今後、ロシアは、ROCがIOCでの会議において約束したアンチ・ドーピング・システムの完全なリストラクチャリングに迫られることになる。ムトコ氏は、「ただし、IOCやWADAと一緒に、である。ドーピングは、世界共通の問題なのだから」と述べた。

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