「国家ぐるみ」とのドーピング非難

ラミール・シトヂコフ撮影/ロシア通信
 ロシアのスポーツが非難されている理由は何か、この先何が待ちうけているのか。ロシアNOWが特集する。

何が起きたのか

 「世界反ドーピング機関(WADA)」は9日、ロシアのドーピング問題に関する報告書を公表した。11ヶ月にわたる調査の結果として、これを作成したのは、ディック・パウンド氏(カナダ)率いる特別委員会。

 報告によると、ロシアでは陸上選手のドーピング違反隠蔽システムが長期間存在していたという。WADAはロシアのスポーツ選手と役員に対する厳しい制裁を要求している。

 

何から始まったのか

 「ドイツ公共放送(ARD)」は昨年12月、ドキュメンタリー番組を放送した。これによると、イギリスの「サンデー・タイムズ」紙が世界の陸上選手5000人以上の血液検査結果1万2000件を入手。ドーピングが疑われる世界各国の選手が、2001~2012年に行われた五輪および世界選手権でメダル総数の3分の1を獲得していたという。また、ロシア代表チームが獲得したメダルの80%以上が、ドーピング疑惑のある選手によるものだったと指摘している。これを受けて、WADAは独自の調査を開始した。

 「ロシア反ドーピング機関(RUSADA)」はこの件とは別に、昨年調査を実施している。「モルドヴィア共和国競歩五輪準備センター」の選手複数名がドーピング違反で資格をはく奪され、RUSADAは昨年8月、ヴィクトル・コレスニコフ・センター長に暫定資格停止処分を科した。RUSADAは今年1月、反ドーピング規定に違反したとして、5人の競歩のロシア代表選手の資格をはく奪した。

 国際陸上競技連盟(IAAF)の会長を1999年から2015年まで務めたラミン・ディアク氏(セネガル)は今月初め、「全ロシア陸上競技連盟(VFLA)」からロシアの選手のドーピング違反を隠す代わりに賄賂を受け取った容疑で逮捕された。

 

何で非難されているのか

 主に非難されているのは「モスクワ反ドーピング研究所」。WADA報告書によると、陸上選手を中心とするロシアの選手のドーピング検査で不正を行ったという。特に、匿名選手の話として、グリゴリー・ロトチェンコフ所長が1417の検体を廃棄したと記されている。ドーピングを使用した選手がロンドン夏季五輪に出場できたとして、IAAFとRUSADAも非難されている。

 これ以外に、WADA報告書によると、陽性反応の出た検体の隠ぺいに、ロシアの特殊機関も関わった。ロシア連邦保安庁(FSB)が職員をモスクワ反ドーピング研究所に送っていたという。

 

何が待っているのか

 WADAは、2016年リオデジャネイロ夏季五輪などのすべての国際大会から、ロシアの陸上選手を速やかに除外することを推奨している。また、ロンド五輪女子800メートルの金メダリストのマリヤ・サヴィノワを含む、5人のロシアの女子選手および5人のコーチをドーピング規定違反で永久資格停止とし、モスクワ反ドーピング研究所の認可を取り消す勧告を行っている。

 パウンド委員長によると、これは氷山の一角だという。「モスクワ研究所には他の多数競技の関係者の検査結果があった可能性がある」

 

さまざまなコメント

 WADA報告書には大きな反響があった。国際オリンピック委員会(IOC)は、「報告は非常に衝撃的」との声明を発表している。反ドーピング法に実際に違反していた場合、IOCは「断固とした措置で対応する」。IAAFのセバスチャン・コー会長は、ロシアが現状において、自発的に陸上代表を解散させるのが妥当だと述べた。

 ロシアのヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、ドーピング防止問題への複合的取り組みを求めた。「孤立化は誰にとっても悪いこと。陸上界の問題はロシア以外にもある。陸上のすべての問題をロシアに負わせることはできない」と話した。また、モスクワ反ドーピング研究所はソチ五輪前にWADAから入念に調べられ、その時はいかなる苦情もなかったことを明らかにした。

 RUSADAのニキータ・カマエフ業務執行理事は、タス通信の取材に対し、WADA報告書は「未完成」だと述べた。「裏付けのない宣言文。現時点で、すべての非難は根拠のないもの」。同時に、RUSADAが独自の内部調査を始めたことも明らかにした。

 

専門家の見解

 スポーツ弁護士のアルチョム・パツェフ氏は、WADA報告書に政治的な指令があると感じている。「そのため、すべての情報が『推奨』形式になっている。本当に除外すべき理由があるなら、とうの昔にやっているはず」と「Rスポルト」紙に述べた。

 反ドーピングの専門家であるセルゲイ・イリュコフ氏は、ロシアにとって悪い成り行きを予測する。「この報告書は、何かを証明するというより、主張しているように見える。論争は続くと思う。この影響はあると確信する。ロシアにとって最も悲惨な影響もあり得る」と「スポーツ・ル」に述べた。

 一方で、問題の根はロシアのスポーツの根幹にあると考える。「スポーツの大成功はロシアでとても評価される。政治的目標になっている。課題は簡潔。勝ちなさい、と。可能性のことなんて誰も考えていない。ドーピングは簡単。余計なものをすべて除去してくれる、優勝への最短の道のり」とイリュコフ氏。