FIFAスキャンダルの波紋

ロイター通信撮影

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国際サッカー連盟(FIFA)の幹部が汚職の疑いで逮捕された事件は、世界のサッカーの未来や、2018年ロシア大会、2022年カタール大会の開催についての議論の波を巻き起こした。ハッシュタグ「#FIFAGate」も交流サイト(SNS)をかけめぐった。ちなみにFIFAゲートのゲートとは、ウォーターゲート事件からきているもので、スキャンダルを意味する。今回の汚職スキャンダルはどのような影響をおよぼすのか。ロシアの専門家に意見を聞いた。

 スイス警察は527日、アメリカの要請にもとづいて、ジェフリー・ウェブ副会長およびエウヘニオ・フィゲレド副会長を含むFIFAの幹部7人を、チューリッヒで逮捕した。アメリカの司法当局は、FIFAの幹部が1991年から24年間に渡り、恐喝、詐欺、資金洗浄を行ってきた疑いがあるとしている。 

 また、スポーツ系のマスメディアやスポーツ振興グループの関係者にも、総額1億ドル(約120億円)以上の賄賂をFIFAの幹部に渡した疑いがかけられている。捜査関係者の情報によると、見返りとして、中南米大会のマーケティング権やスポンサー権を得ていたという。すべての犯罪はアメリカで用意、実行され、支払いはアメリカの銀行を経由して行われた。

 逮捕がFIFAの会長選挙(529日)直前に行われたことは興味深い。逮捕者のリストに、5期目を目指していたジョセフ・ブラッター会長(79)の名はなかった。ブラッター会長は誰もが認める有力候補で、大手ブックメーカー(賭け業者)では、ブラッター氏の再選とヨルダンのアリ・フセイン王子(39)の初当選の係数が1.11vs6.00であった。そして予想通り、再選を果たした。

 

スポンサー離れの可能性

 ロシアのサッカーの一流専門家で、ロシア・サッカー連盟の会長候補であるアリシェル・アミノフ氏は、今回の事件がブラッター会長の地位を脅かすと考えている。「ゆるぎないブラッター体制の基盤は、『第三世界』の多くの国々への思いやりにある。増え続けるスポンサーからの収入を地域の連盟(協会)に再配分しており、そのような施しを受けた人々が選挙で応援している。汚職は『第三世界』を動揺させるものではないし、ブラッター会長はアメリカ人の圧力に抵抗できる間は、アフリカが気持ち的に応援してくれていると自信を持てるのではないか。現時点では、マリなどの国からの投票はイングランドからの投票に相当する」

 アミノフ氏によると、スポンサーがFIFAとの提携をやめた場合に、大きな影響がおよぶ可能性があるという。「大手スポンサーが離れ始めたら、状況は大きく変わる。資金の再配分がなくなると、ブラッター会長を支持するアフリカの気持ちが弱まる可能性がある。アフリカの支持がなくなると、ブラッター会長は以前から会長に批判的だったアメリカやヨーロッパと大きな問題を抱えることになる。したがって、すべてが従来のままで変わることはないと皆に証明できる時間が残り少ないことを、会長自身理解している」

 ブラッター会長には欧州サッカー連盟(UEFA)も圧力をかけている。ミシェル・プラティニUEFA会長は、FIFAの活動の「ペレザグルースカ(再起動)」とブラッター会長の辞任を求めている。

 

ロシアへの影響は

 多くの高官やサッカー関係者は、今回の容疑者リストに開催国であるロシアやカタールの関係者がいなかったことに不満を述べている。捜査すべきだと主張しているのは、イギリスのデビッド・キャメロン首相や、UEFAのレナート・ヨハンソン元会長、ウクライナ・サッカー連盟のアンドリー・パヴェルコ新会長など。

 FIFAの広報責任者であるワルター・デグレゴリオ氏は、現時点で2018年ロシア大会、2022年カタール大会の開催に変わりはないと述べた。

 このスキャンダルについては、ウラジーミル・プーチン大統領も見解を述べた。FIFAの逮捕騒動はロシアとは無関係であり、アメリカはこのような形でブラッター会長の再選を阻止しようとしていると指摘。これに対して、アメリカ国務省のジェフ・ラスキー報道官は、アメリカ市民を含むFIFA関係者の告発があくまでも犯罪に向けられたものであると反論した。

 FIFAモスクワ事務所のヴァレリー・チュフリー元所長によると、ロシアは脅威にさらされていないという。「FIFAの汚職捜査は、この手の初の試みではない。アメリカでは、ソルトレイクシティ五輪(2002)とアトランタ五輪(1996)の主催者も収賄の容疑で立件された。だがどの件も裁判までは進まなかった。FIFAは今回の汚職スキャンダルをいかなる混乱もなしに乗り越える。大きな大会の開催権がはく奪された例はない。今回もそうなるのではないか。FIFAの人員構成に小さな変化はあるだろうが、ブラッター会長はそのポストを維持し、ロシアとカタールは粛々とW杯の準備を進めて行く」と、ロシアNOWの取材に対し、チュフリー元所長は話した。