タチヤナ・ボロソジャルとマクシム・トラニコフ=ウラジーミル・ペスニャ撮影/ロシア通信
ソチの個人戦で2人に期待されているのは優勝のみ。フィギュアスケート・ロシア代表の中で、金メダル獲得がもっとも現実的なのがこの2人だ。団体戦のメダル獲得にも貢献すると考えられている。
期待値は最大に達してる。とはいえ2人がペアとして登場したのは、ソチ五輪に照準が合わせられた2010~2011年シーズン。世界のフィギュアスケートのエリートにあっという間に登りつめた感がある。
24時間いっしょ
ボロソジャルはそれまで、スタニスラフ・モロゾフとともにウクライナ代表として演技していた。モロゾフとはウクライナ選手権で優勝し、グランプリシリーズにも出場していたが、大活躍はできなかった。トラニコフはマリア・ムホルトワとペアを組み、ヨーロッパの表彰台に3回上がることができたが、ムードがあまり良くなかったことから、パートナー、コーチのどちらにも別れを告げた。
ボロソジャルとトラニコフは巡り会うために生まれてきたかのごとく、最初から息の合った演技を見せた。氷上での調和は2人を1日24時間寄り添わせ、休暇の時も離れさせない。インスタグラムには一緒の写真がたくさんある。こうなれば、ロマンチックな関係やその好影響に関する話があれこれと出てくる。だが2人はロマンスについて、直接的な回答をしていない。今のところ存在しているのは「プラトニック・ラブ」だけで、あくまでも五輪最優先だとも言われている。
五輪の表彰台は高く険しい
五輪の表彰台への道は紆余曲折、氷は滑る、と言われるが、五輪シーズンでこれが再認識された。最初の2大会ではショートとフリー、また総合で6つの世界新記録を更新した。GPシリーズ開幕戦のスケート・アメリカでは、2人が演技を行った後、“自己批判的”なニーナ・モゼル・コーチですらこう話していた。「私自身、大満足。フリーの後は、もう鳥肌がたった」
だがグランプリファイナルで予期せぬ後退。ショートで順調な滑りを見せていたものの、フリーでジャンプ・エレメントに失敗。失敗は大きく響き、2位に終わった。この時負けた相手は、永遠のライバルであるアリョーナ・サフチェンコとロビン・ゾルコーヴィ組。
ヨーロッパ選手権でもショートでボロソジャル・トラニコフ組を脅かすかに思われたが、体調を理由に、2012年のヨーロッパ選手権と同様、棄権した。ボロソジャル・トラニコフ組はショートで世界新記録を更新したものの、フリーのジャンプ・エレメントとスローイングでミスをし、ロシアのクセニヤ・ストルボ ワとフョードル・クリモフ組よりも低い点に終わってしまった。ショートで高得点をマークしていたことで、なんとか金メダルを獲得。
五輪のペアで金メダルを3度獲得しているイリーナ・ロドニナは、ツイッター上でトラニコフにこうメッセージを送った。「おめでとう。ただ怒らないで聞いてほしいのだけど、もっと集中した、まとまった滑りと、結果への追求心がほしい」
2人のライバル
サフチェンコ・ゾルコーヴィ組のインゴ・シュトイアー・コーチは次のような見解を示した。「ロシアに勝てないわけじゃないことがわかった。これは他の選手にとっても重要なことだ」
ロシアのペアに挑む選手はたくさんいるが、ボロソジャル・トラニコフ組と金メダル争いをするのは、やはりサフチェンコ・ゾルコーヴィ組。このペアはこれまでに、2010年バンクーバー冬季五輪で銅メダル、2008年、2009年、2011年、2012年の世界選手権で金メダル、2007年、2008年、2009年、2011年のヨーロッパ選手権で金メダルを獲得した実績を持つ。ボロソジャル・トラニコフ組とサフチェンコ・ゾルコーヴィ組の氷上での戦いはどれも、見ごたえのあるスリラーのようだ。
銅メダルの候補枠になると、ずっと拡大する。グランプリファイナルの参加者すべてをリストアップしたっていい。中国の龐清(ほう・せい)と佟健(とう・ けん)組、彭程(ほう・てい)と張昊(ちょう・こう)組、カナダのメーガン・デュアメルとエリック・ラドフォード組、カーステン・ムーアタワーズとディラン・マスクビッチ組。そしてロシアのストルボワ・クリモフ組、ベラ・バザロワとユーリ・ラリオノフ組だ。この2組はどちらも、ボロソジャル・トラニコフ組 に続いてヨーロッパの表彰台に上がり、モゼル・コーチから指導を受けている。
トラニコフはヨーロッパ選手権の後でこう不安を述べた。「観客もジャーナリストも我々を厳しく評価するが、五輪までの準備期間が3年であることを理解してほしい。他のペアは組んで久しい。我々は組んだばかりの時に準備を徹底的にやって、今ようやくすべてが普通の状態になってきている。それでもミスが出てしまうのは仕方がない。私は自信を持ちすぎ、安心しすぎていたのかもしれないが、しっかりと復活できるように、時にリラックスも必要。今シーズンのどのスタートも最高だったから、正直なところ、この失敗で少し不安になった。自分をよく知っているから、五輪でこうならなければと思った。五輪前に失敗して良 かったよ。ミスや転倒をしつくしたと思いたい」
2006年トリノ冬季五輪のペアで金メダルを獲得したマクシム・マリニンは、ボロソジャル・トラニコフ組のライバルが自分たち自身であると考える。「ボロソジャルとトラニコフがきれいに滑り切ればライバルは不在。ミスがあればドイツのペアが主なライバルになってくる。他にも2人に挑んでくるペアがいるが、その勢いで2人よりも速く成長している」
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