サッカー・スタジアムのないモスクワ

ゼニト・アリーナは2016年7月に竣工する予定=PhotoXPress撮影

ゼニト・アリーナは2016年7月に竣工する予定=PhotoXPress撮影

モスクワのスタジアムが大雨という試練に直面し、名門クラブが市外でホームの試合を行っているなか、役人は2018年ワールドカップ・ロシア大会の準備が順調に進むと断言しているが・・・。

まともなスタジアムは現在2つだけ 

 注目の首都ダービー、「CSKAモスクワ」対「ディナモ・モスクワ」の試合が、10月6日に行われた。結果は0-2でディナモが勝利。このダービーは通常、3万人から3万5000人の観客を集めるが、今回はわずか6000人しかいなかった。

 このように寂しくなってしまったのは、今回を含めて4試合連続の黒星を喫したCSKAのプレーのレベルが低いからでもなく、富豪のボリス・ロテンベルク が新社長に就任したディナモが好結果を出しているからでもない。非常に質の低い人工芝が施工されている、小さな「ロコモティフ・モスクワ」の予備スタジアムで、試合が行われたからだ。

 観測史上最大の降水量を記録したモスクワの今秋と、このような事態に備えていなかったロシアのサッカー関係者によって、残念な試合になってしまった。大都市モスクワには、サッカーをプレーできるスタジアムは2ヶ所しかなく、1週間に数回定期的にプレーできる芝生は1面もない。

 

ホームの試合のために2千キロ移動 

 ロシア・プレミアリーグの幹部は、「スパルタク・モスクワ」が「テレク・グロズヌイ」との試合会場を見つけることができないでいる状況を確認するや否や、エカテリンブルクでの試合を決定。スパルタクはホームの試合のために、1700キロメートル離れたウラル地方の街まではるばる遠征しなければならな かった。

 サポーターの支持がほしいスパルタクのフロントは、年間パスを持っているサポーターに、エカテリンブルクまでの無料バスを用意すると発表。平日3日間のバスの旅だ。これにはコアなサポーターも反対した。

 

さまよえるオランダ人たち 

 CSKAはUEFAチャンピオンズリーグの試合を、サンクトペテルブルクで行っている。エカテリンブルクよりも、サンクトペテルブルクへ行く方がはるかに楽ではあるが、CSKAの因縁の敵である「ゼニト・サンクトペテルブルク」のスタジアムだ。UEFAはこれに理解を示し、連日のスタジアムでのプレーも許可した。10月1日火曜日にゼニトがプレーし、翌日2日水曜日に哀れなCSKAの選手が、チェコの「ヴィクトリア・プルゼニ」と対戦した。

 ディナモにいたっては、モスクワ郊外のヒムキにある、プレミアリーグの中でも最悪の「ロジナ」スタジアムで試合を行っている。これはアマチュア・リーグ のチームがプレーしている、収容人数3000人ほどの小さなスタジアムだ。ロシアをこのような状況から救ってきたモスクワの「ルジニキ」スタジアムは現在、改築のために閉鎖されている。

 

唯一習得したのは選手の獲得の仕方のみ 

 1972年ソ連最優秀選手賞を獲得しているエヴゲニー・ロフチェフ氏はこう話す。「ロシアのサッカーが10年で唯一習得したことは、サッカー選手の獲得。試合の組織、スタジアムとフィールドの建設、観客動員、選手の進歩などはすべて、ロシアの手に合わない。『ロコモティフ』予備スタジアムの建設予算の 数十倍もの値で獲得された選手が、そこでダービーをするという、驚くような光景がくりひろげられた」。

 2018年ワールドカップ・ロシア大会まであと5年ほどだが、質の高いスタジアムがない。ゼニトの新スタジアムの元請業者がまた変わりそうだし、ディナモのVTBアリーナの建設がまた延期されている。「クラスノダール」と「クバン・クラスノダール」があるサッカーの街クラスノダール市では、ワールドカップの試合は開催されない。

 

W杯は天気の良い夏です」 

 ロシアのサッカー関係の役人は、動揺しないよう呼びかけている。ロシアサッカー・プレミアリーグのセルゲイ・チェバン副理事は、ワールドカップの会場となるスタジアムすべてが、期日までに完成すると考えている。

 「VTBアリーナは2017年10月に、ゼニト・アリーナは2016年7月に竣工する予定。建設工事は急ピッチで進んでおり、大部分の都市が来年にもワールドカップの準備を整えられる。今秋のフィールドの状況が問題を引き起こしていることは 理解している。これほどの量の降雨は80年以上なかった。自然には勝てないが、ロシアの選手が状態の良いフィールドでプレーできるよう、可能な限りのことをする。ただ、ワールドカップが行われるのが、ロシアの天候が快適な夏であることを忘れてはならない。ウクライナが昨年のUEFA欧州選手権で示したように、ロシアもワールドカップは最高のレベルで行うことができると信じている」。