インフラ良好だが組織面に問題

開幕から9日経過した時点で、ロシアは、金メダルの実に60%以上(105個)を獲得し、2位以下を大きく引き離した =ロシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)撮影

開幕から9日経過した時点で、ロシアは、金メダルの実に60%以上(105個)を獲得し、2位以下を大きく引き離した =ロシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)撮影

カザン市で開催中の第27回夏季ユニバーシアードは、ソチ冬季オリンピックのリハーサルの場ともなったが、その出来栄えは、味にたとえると、甘酸っぱいといったところか。

 今回のユニバーシアードの組織者たちは、これまでに大会の組織、運営のほとんどすべてを実地に試した――安全対策、メディア、ファン、地元住民への対応等々。

 ところが、多くの点で理想からは遠かった。マスコミの選手への取材は、かなり制限されていたし、多くの競技場はガラガラだったし、選手村も世界的な水準には及ばないところがあった。

 

ダフ屋買占めで競技場はがら空き

 例えば、女子体操のマリア・パセカ選手は団体で金メダルを獲得したが、競技場が半分しか埋まっていなくてがっかりしたという。「もう一ヶ月も前から、すべての競技のチケットは売り切れだって聞いていたんですけど」。

 実際には、開幕セレモニーが始まるや、チケット販売のシステムは問題をさらけ出した。多数の切符をダフ屋が買い占め、額面より10倍高い値で売った(額面20ユーロを200ユーロで販売)。

 その結果、競技がたけなわになると、大勢の観客がチケットを求めて、数時間も行列に並んだのに、結局我慢できなくなって、帰宅してしまった。しかし、競技の中には、がら空きの競技場で行われたものがあったのだ。

 「もちろん、カザンを愛する者としては、こういう大きな大会が当地で開催されるのは嬉しいけど、なんでこんな余計な緊張を観客に強いるんです?チケットを買うのはすごく難しいです」。こう語るのはカザン市民のミャスルルさんだ。。

 もっとも、彼は、メインスタジアム「カザン・アリーナ」が、カザンのサッカークラブ「ルビン・カザン」のホームグラウンドになるので、そのオープンは嬉しいと付け加えた。

 

「競技場は最高、選手村は学生寮」

 今回のユニバは、全部で31の競技場で行われたが、それらについては選手は賞賛の言葉を惜しまなかった。

 「すべての競技場が、インフラが良くて、驚きました。カザンは、ユニバだけでなく、オリンピックもできるんじゃないか、と思うほどです」。こう言うのは、競歩のオリンピック・チャンピオン、エレーナ・ラシマノワ選手のコーチであるヴィクトル・チェギンさん。ラシマノワ選手は、ユニバでも金メダルを獲得した。

 だが、オリンピック村のほうは問題を残した。1500メートル走で優勝したロシアのワレンチン・スミルノフ選手は住まいには大いに不満げだ。「3人一部屋で、シャワーはよくふさがっていました。学生寮みたいでしたね」。

 

学生という名のスターたち

 もう一つの争点は、ロシア選手団がスターをずらりと揃えたこと。オリンピックで3度優勝しているスヴェトラーナ・ロマシナ選手(シンクロナイズド・スイミング)、柔道のオリンピックチャンピオンのアルセン・ガルスチャン選手、1500メートル障害のオリンピックチャンピオンのユリア・ザリポワ選手はじめ、錚々たる強豪が大勢参加した。

 他の国がカザンに送り込んできたのは、なるほどプロではあるが、オリンピックのメダルなどまだ考えてみたこともないような学生たちがほとんど。

 その結果、開幕から9日経過した時点で、ロシアは、金メダルの実に60%以上(105個)を獲得し、2位以下を大きく引き離した。

 とはいえ、ユニバーシアード組織委員会のウラジーミル・レオーノフ委員長は、これはオリンピックチャンピオンが選手団に混ざっているからではなく、地元開催で気合が入っているからにすぎないと説明する。

 「ロシア人選手は祖国で勝ちたいんですよ。別に恥ずかしいことは何もないじゃありませんか。似たようなことを2011年に中国で目にしたでしょう」。確かに、このとき中国は、形の上では学生だが五輪ですでに実績を積んでいる強豪を大量に参加させた。 

 「スヴェトラーナ・ロマシナ選手はお手本のような偉大な選手です。彼女がまだ学生とは知りませんでした」と、シンクロナイズド・スイミングで、ロマシナ選手に及ばず銀メダルとなった日本の乾友紀子選手はびっくり。

 ロマシナ選手は、昨年モスクワ経済統計・情報理論大学を卒業したので、ちゃんと参加の資格はあるのだが、これほどのタイトル保持者を、しかも7月末にバルセロナで開催される世界選手権を前にして、敢えて参加させる必要があったのだろうか?

 地元のサポーターの応援もあり、ロシアがメダル獲得競争でぶっちぎって勝つのはもう明らかだ。ま、勝てば官軍さ・・・。