サッカー指導者のファビオ・カペッロ氏(現在はロシア代表監督) =AP通信撮影
バンクーバー五輪での失敗を受けて
ロシア勢がさえなかった2010年バンクーバー五輪以降、外国人コーチが次から次へと訪れるようになったものの、奇跡はすぐには起きなかった。ロシア選手が飛躍的に成長するような魔法のレシピは、まだ提案されていない。五輪前のシーズンで金メダルがわずか5個というのは、バラ色のソチ五輪を予測するには不十分だ。
ヴィリー・シュナイデル氏(ドイツ)、スケルトン
五輪シーズンは始まっていないが、49歳のコーチはすでに成功していると言える。昨夏にスケルトン・ロシア代表の上級コーチに就任したばかりだが、ひと冬で2つの歴史的勝利を記録した。女子選手のエレーナ・ニキチナはヨーロッパ選手権で初めて金メダルを獲得し、男子選手のアレクサンドル・トレチャコフは初めて世界チャンピオンになった。
セバスチャン・クロス氏(フランス)、ショート・トラック
ショート・トラック・ロシア代表のコーチになったのは昨春だ。1シーズンでチームは3つの歴史的勝利を記録した。世界選手権で銀メダル2個、ヨーロッパ選手権のリレーで勝利、距離別で世界記録を達成した。
ヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、最近行われた上院(連邦会議)の会合で、外国人コーチは統計でほとんど結果を出せていないのに、なぜロシアにこれほどの大人数が必要なのかと、率直な質問をした。
「ロシアは最近、運動科学に多額の投資を続けている。どの代表チームにも科学集団ができたが、そのデータを活用している人は少ない。そしてロシアの若手選手の指導をさせるために、柔道のイタリア人コーチのガンバ氏や、ボブスレーのカナダ人コーチのリューダース氏など、たくさんの人を招待するようになった」。
ロシア・フリースタイル連盟(スキー)のセルゲイ・コロリ第一副理事長は、2010年末に同種目に外国人を招待した理由をこう話す。
「ソ連崩壊後、ロシアのスポーツ界には技能資格のある人材が不足している。そのため、バンクーバー五輪後に外国人を招待しなければならなくなった。代表チームのコーチ経験があるだけでなく、準備、トレーニングの全期間にわたって自身の経験と知識を伝えられる人を選ぶように努めた。ソチ五輪で成功するだけではなく、種目全体が機能するシステムを確立することが重要だ。そうしないとソチ五輪後に問題はさらに深刻になる」。
現実の壁と考え方の違い
だが、役人の“机上の正論”は、簡単に現実の壁にぶつかる。ロシア代表を教える外国人コーチには、その種目でピラミッドを築く時間が物理的にない場合が多い。代表とともに外国遠征に行っていることがほとんどだからだ。
ヴォルフガング・ピヒラー氏(ドイツ)、バイアスロン
バイアスロン女子ロシア代表のコーチに就任してから2シーズンの間に、世界選手権でわずか1個の銅メダルしか獲得していない。これは負の意味で史上初だ。ワールドカップの各段階においてオリガ・ザイツェワがたびたび成功することで、全体をなんとか支えている。
ヴォルフガング・シュタイエルト(ドイツ)、スキージャンプ
2004年に代表コーチに就任した。5シーズンで目立った成功はなかった。バンクーバー五輪後、メールで解任の連絡が行われた。
来年のソチ五輪の結果は長期的な成功よりも重要であり、外国人コーチはメダルだけが期待されていることをある瞬間に理解するようになる。ジュニアのコーチとともに行ったセミナーの数ではなく、メダルでその指導が評価され、コーチはやり方を考えるようになる。
考え方の違いは、相互理解を妨げる主な原因だ。外国人コーチは教え子に強制するのではなく、導いていかなければならないという考えに慣れている。そしてその教え子は子供時代からスポーツにお金をかけていて、自分が何をしているのかを自覚し、自分と他の人の時間を大切にする。つまり選手に自主性がもともと備わっているのだ。
一方で、国の財政で成り立っているロシアのシステムは、成功をもっとも重視し、コーチが永遠の子守になり、選手が目を話せない子供になるよう誘導する。つまり選手があーしろこーしろと管理されることに慣れていて自立していないのだ。実績のある外国人コーチは、そんな教育者の役目をまったく予期していない。
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