エルミタージュ美術館250周年

GettyImages/Fotobank撮影

GettyImages/Fotobank撮影

世界有数の所蔵数を誇る「エルミタージュ美術館」は今年で開館250年。現状や次の250年の計画などについて、ロシアNOWが取材を行った。

 今回のエルミタージュ美術館の入場は、冬宮殿の双頭のワシの装飾がほどこされた正面門からではなく、窓口、回転式入場口、観光客の列、皇族の衣装を着たストリート・アーティストのいない、建物反対側の館長入口からである。壁の小さな標板には「宮殿河岸通り34」と記されている。

 「遅れずについて来てください。ご自分では道を見つけられませんから」と広報部は警告する。確かに地元のガイド(今回はエルミタージュ美術館広報部)なしに、エルミタージュの迷路で正しい道を見つけるのは難しい。記者団は案内されるまま、美術館の部屋(ここには2000室ある)の何メートルもある廊下を歩き、数十ヶ所のホールを通り過ぎ、ようやくミハイル・ピオトロフスキー館長が挨拶の準備を行っている絵画ギャラリーに到着した。

 ピオトロフスキー館長は66歳。身長の高くない、真面目で、落ち着いていて、礼儀正しい人である。地味なスーツの上に黒いスカーフをかけ、マイクに近づいて適度な大きさの声で話し始めた。「本日はエルミタージュにとって特別な日...」

 

美術館のトップ

 有名な東洋研究者、中東研究者で、いくつもの勲章やメダルを保有しているピオトロフスキー氏は、すでに20年以上もエルミタージュ美術館の館長を務めている。ソ連が崩壊、国が大混乱し、誰もが美術どころではなかった1990年代初め、美術館がようやく元の落ち着きを取り戻した2000年代初めを経験してきた。国家のシステム、美術館および文化への対応が変化した、大変な時代だった。

 現在、これらは過去の思い出であり、新たな繁栄の時代に250周年を迎える。このような速度で成長、発展したのは、恐らく創設者のエカチェリーナ2世の時代だけであろう。エカチェリーナ2世は1764年、オランダ、フランドル、イタリアの絵画数百枚をベルリンの商人から購入し、エルミタージュのコレクションをそろえた。

 

ダ・ヴィンチからミケランジェロまで

 エルミタージュは今でもエカチェリーナ2世のことを忘れてはいない。18世紀後半に当時のロシアの一流肖像画家によって描かれた肖像画が飾られている。1日250万人の来館者は、これらの肖像画以外にも、60万点からなる西ヨーロッパのコレクションを目当てにしている。ダ・ヴィンチの「リッタの聖母」と「ブノワの聖母」からマティスの「赤い部屋」まで、ミケランジェロの「うずくまる少年」から「タヴリーダのウェヌス」まで、さまざまな傑作がある。

 常設展は4階120室からなる。企画展は館内10ヶ所で催される。コレクション総数(古代、アンティーク、東洋美術、スラヴの世界を含む)300万点、職員総数2500人の真の美術帝国であり、国外にも分館を構えている。

 

参謀本部

 ここ10年の著しい変化と言えば、参謀本部の建物の改築とそのエルミタージュ美術館への移譲。参謀本部の窓は宮殿広場側にもあり、美術館を見渡すこともできるが、美術館の一部ではなかった。内部の壁面を飾っていたのは、聖母の絵画ではなく、将官の肖像画。冬宮殿と同様、イタリア人によって建設された1829年以降、寄木細工の床では将校のブーツの足音が響いていた。

 2012年、内部に美術品が展示された。そして保守的な展示方針に固執し、現代美術の展示を避けてきたエルミタージュ美術館に、初めてアクチュアル・アートの展示館が登場したのである。

 

驚きの企画展

 参謀本部は新たなプロジェクト「エルミタージュ20/21」の一環である。このプロジェクトには、アクチュアル・アートを重視した美術館の新方針が反映されている。

 1997年以降、造形美術、装飾美術の優れた作品400点を購入。その中には有名なフェルナンド・ボテロの「スイカのある静物」、ルイーズ・ブルジョワの「自然なエチュード」、ピエール・スーラージュの「黒い光」などがある。

 参謀本部では毎年、反響を呼ぶ展示会が催されている。アウシュヴィッツをカリカチュアで表現した、2012年の企画展「ジェイク&ディノス・チャップマン 歓楽の終焉」はちょっとした騒動であった。昨年は企画展「日本の現代美術」が行われ、山本基の塩の迷宮のインスタレーションは大きく注目された。今年は「マニフェスタ」が行われている。

 ピオトロフスキー館長はこう説明する。「ロシアでこのようなレベルと意義を持つ展示会が行われたことはない。独自に行ってきた展示会は時に優れ、時に少し劣っていた。今回はヨーロッパでつくられた、ヨーロッパのための展示会であり、初めて欧州連合(EU)外にやって来た」

 

新たな時代

 250周年記念日は2014年10月7日。「すべての施設を開放する。参謀本部東翼、『旧村』の新しい建物、小エルミタージュの建物、エルミタージュ劇場に隣接する予備館」とピオトロフスキー館長。

 派手な式典は予定されていない。「すべてあまり高額なものではなく、主要なプロジェクトの方に資金が投じられる」。「計画は非常にたくさん」あり、近い将来には大企画展「エルミタージュの考古学」、「新獲得」、「エルミタージュの修復」などが行われる。

 エルミタージュの今後の主な目標は、世界の所蔵庫として美術館を維持すること、ブランドの現代化なしに、より人々に身近なものとすること。「世界は美術館の成功の基準とは何かを理解しようとし、そろばんをはじく。だが美術館の成功の基準とは、訪問する人、地元の人をいかに美術館の生活に引き込むことができるかである。エルミタージュのような大きな美術館とは、多くの人を収容でき、あらゆる人にとっておもしろいものが常にある、非常に民主的な文化機関である」とピオトロフスキー館長。