出稼ぎの屋外清掃員がいない街

クロンシュタット区の行政は今夏、屋外清掃の仕事ですべての出稼ぎ労働者と地元民を入れ替える、社会・経済実験の実施を決定した=PhotoXPress撮影

クロンシュタット区の行政は今夏、屋外清掃の仕事ですべての出稼ぎ労働者と地元民を入れ替える、社会・経済実験の実施を決定した=PhotoXPress撮影

サンクトペテルブルク市クロンシュタット区の行政は今夏、屋外清掃の仕事ですべての出稼ぎ労働者と地元民を入れ替える、社会・経済実験の実施を決定した。さて、その改革の結果は?

 一定の職業はロシア人がやりたがらないと、行政も専門家も決めつけているふしがある。その一つが屋外清掃員。クロンシュタットはこれが間違っていることを示した。行政が半年間努力した結果、ロシアの身分証明書保持者のみが屋外を清掃するようになった。

 クロンシュタット区は、フィンランド湾のコトリン島にあるサンクトペテルブルク市の一地区。海軍のインテリ技術者、士官、退役将校などが暮らす、独自のライフスタイルを持つ地区で、1996年までは閉鎖都市だった。犯罪率は常に0%代と、極めて治安が良かった。

 

閉鎖都市が開放されたら 

クロンシュタット屋外清掃員の待遇

1. 小家族用の寮(複数部屋、トイレ、浴室)。家賃は1ヶ月1000ルーブル(約3000円)+光熱費

2. クロンシュタットの住民登録

3. 労働手帳、正式手続き

4. 平均給与は2区画の担当で2万ルーブル(約6万円)から。賞与あり

5. 労働が自動化(5区画を掃除機で清掃することなどが可能)。給与に制限なし

 問題が発生するようになったのは、多数の出稼ぎ労働者が流入し、独自のルールを持ち込むようになった2000年代半ば。行政は海軍司令部と協力し、夜間の軍事パトロールを展開するという前代未聞の取り組みを始めた。出稼ぎ者を拘束する権限はなかったが、ひとりひとりの書類を入念に確認した。

 地元住民によると、経済危機が起こり、初めて労働者過剰に陥った2008年に、状況が変化したという。建設市場が滞り、解雇された労働者は、清掃員などの公共サービスの仕事につくようになった。このような現象は国内各地で見られ、屋外清掃員は中央アジア系ばかりで、ロシア系はほとんどいない状況になった。

 

経済危機で人余り→劣悪な労働条件の清掃員に 

 クロンシュタットで屋外清掃を管理している会社は「ジルコムセルビス」で、清掃会社「ボンダ」にアウトソーシングしていた。「ボンダ」を所有していたのはサンクトペテルブルクの建設関係のビジネスマンで、クロンシュタットに余剰人材を送り込み、そのような人材の生活場所はまったく用意しなかった。

 屋外清掃員は自力でアパートを探さねばならなかったことから、”ゴム・アパート”(一戸のアパートに大量の出稼ぎ者が暮らすアパートをロシアではこう呼ぶ)が 出現し、使われていない建物や連邦国防省の施設などへの不法定住が横行した。また誰かが生活場所をうまく確保すると、その家族や親戚が引っ越してきた。こ のような状態に、地元住民が不満を表明することもあった。

 

不法就労させ中間搾取するのが一般的 

 テレンチイ・メシチェリャコフ区長はこう話す。「クロンシュタットの問題の一つは働く場所がないこと。毎朝数千人が、本土のサンクトペテルブルク市に通勤している。また、クロンシュタットで働く人々には、その収入を別の国などに送金するのではなく、地元の店などで使ってほしい。公共サービスに従事する地元民が税金を支払い、予算が増えることが経済的利益。また倫理的観点からも、当区で地下室に30人も生活するようなことがあってはならない」

 ロシア各地の公共サービス部門に出稼ぎ者がおり、法律にのっとった手続きをしていなかったり、中間搾取されたりする問題は一般的だ。不法移民だって誰だって、詐欺は嫌なもの。良い仕事を見つければ、仕事の道具を返して去って行く。

 

好条件で地元民を雇い、出稼ぎを一掃したが 

 だがクロンシュタットの行政が改革に着手し、出稼ぎビジネスに陰りが見え始めると、インターネットにはさまざなコメントが現れるようになった。クロンシュタットのフォーラムには、「クロンシュタットの汚れがひどくなっている!」や、「うちのウズベク人の屋外清掃員を返して!」などのコメント、また「ロ シア人の清掃員なんて見たことない。資金洗浄にすぎない」などのクレームや、違反目撃情報まで書きこまれた。この騒ぎにマスメディアも反応し、検事局まで 動いた。だが違反目撃情報にしたがって検事局が見に行くと、そのような違反はなかった。インターネットにはデマも多い。

 「マスメディアの報道が良いアピールになった。この実験が広く知られるようになり、屋外清掃員を素早く集めることができた。プスコフ州の女性は、クロンシュタットで屋外清掃員の求人があり、住宅も用意されることをテレビで知って、応募してきた」とメシチェリャコフ区長。

 行政はゴム・アパートもなくした。隣人が署名した文書に従い、実際に生活していた人数に応じて、1ヶ月6~8万ルーブル(約18~24万円)の公共費用をゴム・アパートの所有者に請求。

 メシチェリャコフ区長はこの実験を今後も続けていくという。「応募者の行列ができるまで」屋外清掃員の給与を上げ、公共サービスの行政の負担を減らすことを予定している。清掃管理は、住民が担当の屋外清掃員に点数をつけるインタラクティブ・マップを作成し、住民に委ねる。

 

元記事(露語)