醜聞に揺れたボリショイ劇場

エフゲーニイ・フィリーポフ撮影/ロシア通信

エフゲーニイ・フィリーポフ撮影/ロシア通信

ロシア・ボリショイ劇場バレエ団のセルゲイ・フィーリン芸術監督は、今月にも劇場に復帰しようとしている。スキャンダルに悩まされたバレエ団が、この前代未聞の年を軌道修正しようとしている最中だ。

 フィーリン芸術監督は転院先のドイツ・アーヘン市の病院で、計22回の眼科手術と組織移植を受けた。フィーリン氏は1月17日深夜、自宅近くで顔に強酸性の液体をかけられ、モスクワ市第36病院に入院。その後ドイツの病院に転院していた。

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ボリショイの暗闘

 この襲撃事件によって名門ボリショイ劇場の内紛が明るみに出ることとなり、その後団員の立件、解雇、辞職、嘆願などが続いた後、ロシアのバレエのイメージを守るためにと、ロシア連邦文化省が動いて、最後にはアナトリー・イクサノフ総支配人が解任された。

 バレエ団のソリストで、イワン雷帝などの悪役を演じていたパーヴェル・ドミトリチェンコ容疑者は、フィーリン氏襲撃のために実行犯2人を雇ったことを認めており、3人には長い懲役刑が言い渡されている。

 

連ドラ風のドロ沼 

 しかしながらトップ・バレエ・ダンサー、ニコライ・ツィスカリゼ氏率いる300人のダンサーとスタッフは、ドミトリチェンコ容疑者が警察によって自白強要されたと訴える書簡に署名を行っている。

 イギリス人振付師のウェイン・マクレガー氏は、フィーリン監督の不在を理由に、3月にボリショイ劇場で行われる予定だった「春の祭典」の制作を延期。代わりにアバンギャルドな振付師のタチヤナ・ワガノワ氏を、公演わずか1ヶ月前に立てた。

 ツィスカリゼ氏は6月、イクサノフ総支配人との権力争いが伝えられた後に解雇されたが、その数週間後に今度はイクサノフ氏自身が13年間務めた総支配人の職から文化省によって解任され、バレエ界に衝撃を与えた。

 ウラジーミル・メジンスキー文化相は、指導力のありそうなモスクワ音楽アカデミー劇場のウラジーミル・ウリン支配人を、新たなボリショイ劇場の総支配人に任命。その時に行われた記者会見で次のように述べた。「劇場の状況が難しくなっており、優秀なプロでさえもその力と能力が限界に達している」。

 ウリン氏はこう話した。「私は何か改革を起こそうとしているわけではない。皆が一丸となってようやく問題を解決できる」。

 劇場のカテリーナ・ノヴィコワ広報部長はロシアNOWの取材に対し、次のように述べた。「今年のスキャンダルはボリショイ劇場のイメージを大いに傷つけた。幻想的な踊りの世界で、これほど残酷なことが起こるなんて理解しがたいから。しかしながらダンサーは厳しい報道に直面しながらも、力を合わせて互いを支え、かつてないほどの団結を見せている。古典芸術の質は世界有数のまま。すでにオーストラリアでこれを示すことができたし、ロンドンのロイヤル・オペ ラ・ハウスの完売した公演でも同様」。

 

左目は10%ぐらい機能 

 ウリン総支配人がアーヘン市の病院でフィーリン氏の経過を確認した後、フィーリン氏はイギリスに赴いて、ロイヤル・オペラ・ハウスの初日公演にサプライズ登場し、熱狂した観客からカーテンコールを受けた。

 ウリン総支配人はフィーリン氏がボリショイ劇場に復帰することを話しながらも、注意が必要であることを伝えた。「精神的には仕事に復帰できる状態だし、それを嬉しく思う。ただ治療はこのまま続く」。

 フィーリン氏は国営放送局「ロシア1」の取材に対し、ロンドンでの「大歓迎」ぶりについて嬉しそうに話した。「医師はできることをすべてしてくれてい る。右目はまだ見えないけれど、左目は10%ぐらい機能している。左目がこの調子で回復してくれれば、仕事に復帰し、9月中旬に行われるモスクワの新シー ズンの開幕に参加できるかもしれない」。

 来るボリショイ劇場第238シーズンには、ピエール・ラコットの「マルコ・スパダ」、ジョン・ノイマイヤーの「椿姫」、ジャン・クリストフ・マイヨーの「じゃじゃ馬ならし」と、3つの新しいバレエ演目が加わる。

 2013~2014年の海外公演は、シンガポール、フランス、ノルウェー、アメリカ、日本などで行われる。