モスクワにビザンチン式教会建設

モスクワ市ヤセネヴォ地区で、ロシア正教の生神女庇護聖堂が建設されている。厳格なビザンチン典範にもとづいて建設される、ロシア初かつ唯一の教会となる。キリスト教がコンスタンティノープルから古代ルーシに伝わったことを気づかせてくれる場所になるだろう。

クセニア・コレスニコヴァ、ヴィクトル・ダスキーエフ、デニス・ヴォスキヴィツォフ撮影

 

ビザンチン典範 

 ビザンチン典範の一つは、教会の地味な外観と豪華で派手な内装だ。人間の謙虚な見た目と、その豊かな内面世界を象徴していた。

もう一つの特徴としては、モザイク・パネル絵、鳥や動物の絵などの凝った装飾、大理石をふんだんに使い、フレスコ画を一部取り入れることがあげられる。

残念ながら、ルーシではモザイクが高価だったことから、教会の装飾に使用されることは滅多になく、主に壁画が描かれた。このためロシアには現在、本物のビ ザンチン・モザイクは存在していない。

 

モザイク工房

 生神女庇護聖堂の設計段階で、最大限にビザンチン様式に従い、内部のほぼ7割をモザイク・パネル絵で装飾することが決定した。

このために有名なモスクワのモザイク師を招き、聖堂に独自のモザイク工房を創設した。芸術家のエカチェリーナ・マリヤスキナ氏によると、6人のイコン画 家が2008年、聖職者からはなむけの言葉を贈られ、モザイクの試作にとりかかったという。アレクサンドル・カルナウホフ氏の工房の専門家が画家を指導 し、現在も支援を続けている。聖人の姿を担当する者、装飾や文字を担当する者、背景を担当する者・・・

 

金ガラスの使用で、内部から光を放つ 

モザイク・パネル絵の制作には、色のついた天然石すなわち大理石、縞メノウ、石灰華や、色ガラスを使う。色ガラスには100種類以上の色彩があり、自然 金を使ってつくられる金色もある。金ガラスは主に裏地に使用されるため、ビザンチンの教会は内部から光を放っているように見えるのだ。

マリヤスキナ氏の説 明によると、内装をほどこす際にもっとも困難な作業の一つとなるのが、色彩と構成の正しい選択だという。フレスコ画、モザイク・パネル絵、白大理石の装飾 がしっかりと調和しなければならない。これを担当しているのは、招かれた壁画家だ。

 

聖堂の装飾

生神女庇護聖堂は2つにわかれている。下の聖堂は大天使ミハイルの小さな教会(洗礼教会)で、上の聖堂は主な教会になる。

 現在の主な装飾作業は、いたる ところにモザイクが採用された上の聖堂に集中しており、ビザンチン典範にもとづいてパントクラトール(救世主全能者)の姿が描かれた、中央アプス(祭壇の 中央部分)の丸屋根の装飾は、すでに完成した。

 ビザンチンの十字架とその天使に導かれる、中央の一番大きな丸屋根の天井の装飾も完成している。これは人々の救いのシンボルだ。壁や柱を装飾し、祭壇部分を完成させなければならないが、今秋にも最終作業を終わらせる計画だ。

 

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世界の5本指に入る

 モザイク・パネル絵をつくる作業は困難で、高い忍耐力と精密さが要求される。絵の難易度によって、1平方メートルあたり1週間から数週間かかる。生神女庇護聖堂には2500平方メートルのモザイク装飾がほどこされるため、その作業量たるや大変なものだ。

 モザイクはフレスコ画とは異なり、より長い期間維持できる。高い湿度、急激な気温低下、強い日光に耐えるため、ロシアの気候条件にはぴったりだ。ルーシ のどの教会にも壁画が描かれていたが、初期のフレスコ画はたくさん残っているだろうか。どれも部分的にしか残っていない。

 建設と装飾作業が終了すると、生神女庇護聖堂はその美しさ、ビザンチン典範の順守度、モザイク装飾の面積で、世界のビザンチン式教会の上位5位以内に入 るのでは、と専門家は考えている。ビザンチン・モザイクを見て、その偉大さを感じて、初期のロシア正教の魂に触れることのできる、そんな聖堂だ。

 

 *「ノメル」誌掲載記事