新館には、合唱、オーケストラ、バレエのリハーサル用にそれぞれ別のホールが設けられているほか、室内楽用の小ホールも3つある。大ホールのステージは深さ80mもあり、最新技術を装備。=PhotoXPress撮影
新館には、合唱、オーケストラ、バレエのリハーサル用にそれぞれ別のホールが設けられているほか、室内楽用の小ホールも3つある。大ホールのステージは深さ80mもあり、最新技術を装備。こうした新館の内部は、外観についてのような議論、批判を呼び起こさないかもしれない。外観は、内部が公開される以前から非難轟々で、スキャンダルになった。
「新しいものへのアレルギー」
建築を担当したカナダの建築家ジャック・ダイアモンド氏は、こういう住民の反応は新しいものへのアレルギーにすぎず、いつの時代にもあったことだと言う。
「聖イサアク大聖堂は、今日では市の主な観光名所の一つですが、創建当時どんな批判がなされたか知ってますか?間が抜けていて灰色すぎる、と言うんです。これは大建築にはいつでも付き物のお決まりの反応でした」。こうダイアモンドさんは見学に訪れた記者団に語った。
同氏はまた、設計に際しては、サンクトペテルブルクの伝統を踏まえ、周囲の景観に溶け込むように努力した、と強調した。
「新館を批判する人は、内部を見ていないだけです。ロビーが小さすぎると言った人もいましたが、ほら、ご覧ください」とダイモンド氏はぐるりと指差した。「本当に小さいと思いますか?」。
ロビーは、縞瑪瑙(オニックス)で仕上げがなされており、内部から蜂蜜色に輝いている。シャンデリアはスワロフスキーのダイヤ製だ。階段はガラス製で、実際強烈な印象を与える。
劇場の職員によると、夜間は、高価な石材の反射光が太陽で妨げられないので、さらにゴージャス感が増すという。
「死角なし」の音響
新館大ホールの音響を担当したドイツの音響学者ユルゲン・ラインホルト氏は、ボリショイ劇場の改修にも携わっている。同氏はイズベスチヤ紙に、ホールのどこにいても、あらゆる音響の細部が聴き取れると述べた。
「この劇場では、あらゆる音がすべての座席に均等に届きます。音が天井の各部分に反射して観客席の各列に分散して届くようになっているのです。床の被覆材は、劇場建築に伝統に則り完全に木製で、コンクリートは一切使われていません。私はボリショイでもこういうコンセプトで改修しました。オーケストラピットは極めて可動性が高く、必要とあれば、特殊なプラットホームを使って、個々の楽器群を強調することができます」。こうラインホルト氏は胸を張る。
ただ、この日の音響テストでは、プラットホームは使用されなかった。
オーケストラは、ゲルギエフ氏の指揮で、ベルディのレクイエム、マーラーの交響曲第5番、チャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」、ムソルグスキーのオペラ「ホバンシチナ」の断片などを演奏した。
音響技師の言葉は完全に裏付けられた。確かに、ホールには“死角”がなく、どこでも音が同じように響く。エコーがはっきり聴こえたのは、観客席が全部埋まっていなかったので、音が反射したのかもしれない。
「全体として私はとても満足しています」とゲルギエフ芸術監督は言った。=ロシア通信
オーケストラピットの抜群の可動性
新館の唯一の欠点は、オーケストラの音が大きくなりすぎることで、歌手の歌を圧倒してしまう。しかもこれは、歌手が観客に背を向けたり、舞台に奥にいたりする場合に限らない。もっとも、この問題はオーケストラピットの調整で解決できるかもしれない。
「全体として私はとても満足しています」とゲルギエフ芸術監督は言った。「今日は、オーケストラの配置を変えて実験しませんでしたが、これで驚くほど響きを変えることができます。今日の実験で、新館の音響は十分確かめられました。ステージのこの部分には、巨大な窪みがあり、そのおかげで、素早く舞台装置を変えたりできるだけでなく、音響が豊かになります。空間が大きいほど、音も面白くなりますからね」。
現在、新館では、清掃や機器の調整が行われている。新館のオープンは5月2日だ。マエストロ・ゲルギエフは、セレモニーに、新館の主な批判者である映画監督のアレクサンドル・ソクーロフ氏とエルミタージュ美術館のミハイル・ピオトロフスキー館長を招くつもりだ。
新館のチケット発売はオープンの約1週間前から。
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