刊行:2012年12月
加藤百合 著
東洋書店
「翻訳」とはいかなる行為か。ロシア文学熱が再燃している現在、多くの研究者が自らにこの問題を問いかけている。
ロシア文学の邦訳が始まった明治時代、翻訳に従事したのは現在で言う職業翻訳家ではなく、文学者として名をなした人々であった。近代文学胎生期にあって、彼らの「翻訳」は、文学論を確立し文体を獲得しようとする作家としての「創作行為」と不可分に結びついていた。
本書は高須治助、二葉亭四迷、森鷗外、内田魯庵、尾崎紅葉、昇曙夢を取り上げ、丹念な資料収集と詳細な分析によって明治期の翻訳事情を描き出している。
彼らがロシア文学を自らの言葉で血肉化しようと苦闘する姿には胸を打たれる。現代の我々は、さて、どのように「翻訳」をなし得るだろう。
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